皇帝がやってきて余計な事を王女に言ったので、王女は切れかかりました
「なんだ。ラフィー、お前アンジェリーナに雷撃されて気絶させられたんだって?」
その日の夜に邸宅にやってきたバルトは何故か俺がアンジェに気絶させられたのを知っていた。
「そろそろお前も年だろう。現役を引退したらどうだ?」
バルトが俺に勧告してくれたが、
「姫様が結婚するまでは現役でいるさ」
俺は首を振った。
「それに、貴様もまだ現役だろうが」
「施政者と騎士は違うだろう。俺はさすがにもう勇者は出来ないぞ」
バルトが呆れて首を振ってくれた。
「俺はまだ現役だ。姫様が結婚するまでは安心して引退などできん」
「しかし、今日はその護衛対象のアンジェリーナにやられて気絶したんだろう。護衛対象にやられる騎士など意味はないだろうが」
バルトが嫌なことを指摘してくれた。
「何を言っているんだ。この前はそこにいる貴様のところの近衞騎士団長もアンジェにやられていたではないか! ということは騎士団長ももう引退なのか?」
「ラファエル様。勘弁して下さいよ。俺も少し油断していただけです。まさか、アンジエリーナ様のあんな強力な雷撃が出てくるとは予想も出来ていなかったので」
必死に騎士団長は言い訳してくれたが、
「やられたのは変わりあるまい」
「「…………」」
バルトも騎士団長も黙ってくれた。
「アンジェの魔術師としての能力はまだまだだが、魔力量はおそらく帝国でも、数本の指に入るぞ」
俺が太鼓判を押すと、
「それほどか」
バルトは呆れて俺を見た。
「これでアンジエリーナ様がエーベルハルト様と婚姻して頂ければ帝国も安泰ですな」
カール・フェリング近衛騎士団長が期待するように頷いてくれた。
「うーん、それだがな、ラフィー。お前はそれで良いのか?」
「元々その約束ではないか!」
俺がバルトがいきなり言いだしたことで少しむっとした。
「いや、それはそうだが、うちの孫のエーベルトは何故か聖女に対して執着しているぞ」
「それは知っている」
俺はむっとしてバルトを見た。
「でも、姫様とエーベルトルト様の婚約は国と国の契約ではないか」
「それは判っているのだが、アンジエリーナもそれで良いのかなと思ってな」
バルトは歯に何か挟まったような言い方をしてくれた。
「良いも糞も、王族の結婚なんてそんなものだろう」
俺が首を振ると、
「それはそうだが、お前としてもアンジェリーナが他に好きな男がいるのならばその男と婚姻させたいのではないかなと思ってな」
「そんな男がいる訳はないだろう。姫様は貴様の所の孫と違ってだな、一切他の男には近付けていない。俺が徹底的にマークしてきたからな」
俺が胸を張って言うと、
「お前は過保護すぎるんだ。そんなのでアンジェリーナは一度も恋なんてしたことがないんだろう。それで良いのか?」
バルトはそう言うと丁度入ってきたアンジェを見て言ってくれた。
「これは皇帝陛下お久しぶりです。でも、こんなにちょくちょくこの館に出て来て大丈夫なのですか」
アンジェは心配して聞いていた。
「良いのさ。たまには友人と飲む時間くらいあっても良いだろう」
「陛下、また宰相殿が怒っていると思いますよ」
騎士団長が指摘した。
「あいつはいつも口うるさすぎるんだ。俺も本来ならラフィーのように学園に通いたかったぞ。それを言い出したら宰相に即座に否定されたがな」
ワインを傾けつつ、バルトは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「アンジエリーナは我が孫エーベルハルトと婚姻するので良いのか? 他に好きな奴がいれば誰でも婚姻させてやるぞ」
往生際悪くバルトは言い出してくれたが、
「ラフィーがとても苦労してまとめてくれた婚約ですもの。それ以外は今は考えられません」
アンジェは当然のように首を振ってくれた。
「でも、エーベルにもエーベルの都合もあると思いますから、どうしてもだめなら私は構いませんけれど」
アンジェは平然と言い返ししてくれた。
「そうか。もしそうなったらアンジェリーナに悪いようには絶対にしないから俺をたよってほしい」
「変な年寄りの後妻とかに入れるつもりじゃないだろうな」
俺がバルトを睨み付けた。
「何をいう。そんな事を俺がする訳ないだろう。その時は絶対にアンジェリーナが納得する相手を紹介してやるから、それだけはここで確約するぞ」
バルトが下らないことを言い出してくれた。
「下らないことを言う前にさっさとエーベルト聖女を別れさせてほしいんだが」
「それがすぐに出来たら苦労はせんわ」
バルトは首を振った。
「あんな聖女のどこが良いのかわからんが……俺から見たら胸がでかいだけの女ではないか。胸以外はアンジェリーナの方が余程かわいらしいのにな」
バルトはアンジェの地雷をこれでもかと踏んでいるんだが、良いのか?
俺が気にしたときだ。
「陛下、何かおっしゃいましたか?」
俺はアンジェの手にファイアーボールが浮かび上っているのを見てぎょっとした。
「姫様。さすがにそれをやると国際問題になりますから」
「そう、そうだぞ。アンジェリーナ。俺の話した胸のことは忘れてくれ。全く無いわけではないからな」
更にバルトはアンジェの心に塩を塗ったような気がしたが、俺はなんとかアンジェの手の上のファイアーボールをなくしていた。




