64.女達にちやほやされていい気になっていた俺は王女の怒りの雷撃をもろに喰らってしまいました
「凄いですね。ラフィー様」
俺の前の方の席のニコが俺の机の上を見て呆れてくれた。
翌日の放課後には早くも俺の机の上に刺繍のハンカチの山が出来ていた。
「ふんっ」
それを見たアンジェの機嫌も急降下したし、もう本当になんとかしてほしかった。
「じゃあこれもお渡ししますね」
そう言ってニコが一枚のハンカチをくれたんだが、そこにはRSの俺のイニシャルと凝った剣の刺繍がでかでかとされていた。
「これは?」
「俺も刺繍しました」
「えっ?」
俺はニコを二度見した。
「ニコって刺繍が出来るの?」
ヒルデも目を見開いてニコと刺繍を見比べていた。
「私のより断然上手いわ」
唖然として呟いていたし……
明後日の方を見ていた俺の隣のアンジェもちらっとニコを見て驚いていた。
「俺もラフィー様の家にお邪魔しましたからお返ししないとと刺しました」
平然とニコが言ってくれたけれど、レベルがプロ並みなのだ。
「これは私も負けてられないわ」
ヒルデが鼻息荒く言い出すんだが、これ以上俺もハンカチはいらないのだが……
「本当にラフイー様は引く手あまたですね」
イレーネが言い出してくれて
「私も明日には絶対に仕上げて参りますわ」
ハンネローレが言いだしてくれたんだけど……本当にこれ以上はいらないから……
放課後になったので、クラス訓練の時間だ。
今日はグランドの横の第三訓練室を借りれたので、そちらに集合だ。
「ラフィー様。頑張って下さい!」
外の見学スペースに何故かクラーラがいて俺に対して応援の声を上げてくれているんだけど
いや、クラーラだけではなくてB組のデリアやC組のエルネスタまでいるんだが……
「よし、まずは昨日に引き続いてランニングだ」
圧倒的に体力不足の人間が多い中で、逃げるにも体力がいる。
俺は少しでも体力を付けさせるために、走ることから始めたのだ。
昨日はグランド10周にしたら大半のクラスメートは途中でダウンしてしまった。
10周で来たのはアンジェとニコとヒルデのみだった。
今日は仕方がないので、半分の五周にした。
訓練場から一斉にスタートする。
一周目はゆっくり走った。
でも、そのペースでも、ハンネローレ達が遅れだした。
一周回ったところで、
「ラフイー様」
「素敵!」
「頑張って!」
女達の声援があった。
俺は前世含めて今までこんな風に女性達から声をかけられたこともなかったので、にやけてしまった。
「にやけるラフイーなんて最低!」
その俺の横をむっとしてた顔でアンジェが抜いて行った。
「姫様。早いですって」
俺が注意するがアンジェは全く聞いてくれない。
仕方なしに俺は追いかけた。
俺もそう簡単に負ける訳にはいかない。
そこからはなし崩し的に皆スピードアップして、追いつけない者はドンドン脱落していった。
最後なんとかアンジェを抜き返したが、付いてきたのはニコとヒルデだけだった。
「はあはあはあはあ」
アンジェも倒れ込んでくれた。
最後になんとかアンジェを抜き返せて俺は護衛騎士の面目を保った。
「凄いですわ。ラフイー様。こちらを」
クラーラがタオルを出してくれたんだが、
「ちょっとクラーラ様。抜け駆けは駄目ですわ。ラフィー様こちらを」
「ちょっとデリア。ラフイー様こちらを」
見ていた女達が我先にとタオルを出してくれるんだが……
ガツン!
「ラフィー!」
「痛て!」
後ろからアンジェが俺の頭にタオルを投げてぶつけてくれた。
思わず頭を押えると、
「アンジェリーナさんは少し怖いですわ」
「ラフィー様に対する扱いが少し酷くありませんこと」
「本当に」
女達がアンジェを睨んでくれるんだが……
「ふんっ」
アンジェも睨み返してくれた。
なんか怖い。
女の戦いだ。
姫様も俺なんかがモテる訳はないんだから、少しくらい見逃してくれも良いのに……
と思わないでもなかったが……
俺は無難に女達は無視して、走っている他の者達を応援することにした。
「イレーネ。もう少しだぞ」
「はい、頑張ります」
「ハンネローレ歩くな」
「そんなこと言ったって……」
最後のハンネローレが俺に向かって倒れ込んできた。
俺は思わず抱き留めてやった。
「まあ、ラフィー様に抱き留められるなんて」
ハンネローレが喜んだ声を出したが、
「ちょっとハンネローレさん。露骨すぎましたよ」
「貴方サボっていたんだからもっと元気でしょう」
見学していた女性軍団からクレームが入った。
その上なんかアンジェの視線が怖いんだが……
取りあえず訓練だ。
「ラフイー様。俺に稽古を付けて下さい」
先に走り終えたニコが志願してきた。
「良いぞ。かかってきなさい」
俺が鷹揚に頷くと
「えい!」
ニコが撃ち込んできた。
模擬剣でそれを受けるとそのまま横に払う。
「ギャッ」
ニコが地面にはいつくばった。
「キャーーーー」
「ラフィー様。素敵」
女達の歓声が聞こえる。
「次行きます」
次はヒルデが撃ち込んできた。
それを受け止める。
二三回撃ち込みを止めて、撃ち込んできたヒルデの剣を横に躱すと、剣でヒルデの胴を軽く撃った。
「凄いですわ、ラフィー様」
「素敵!」
女達の歓声に俺は少し喜んでいた。
なんかそれがアンジェの怒りを買ったみたいだ。
アンジェの顔がますます不機嫌になっていた。
「ラフィー、行くわよ」
アンジェがそう言うと構えてきた。
「えっ、ちょっと姫様。待って!」
俺は模造剣だけではアンジェの雷撃を防げない。
「待たない」
でも、怒り狂ったアンジェが俺目がけて雷撃を放ってくれた。
俺は慌てて地面に伏せて避けようとしたんだが、甘かった。
「ギャーーーー」
雷撃は俺を直撃して俺は意識を無くしていたのだった。




