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62.聖女視点 悪役令嬢を亡き者にする算段がつきました

「くそ、くそ、くそ、くそ!」

 私は完全に切れていた。


 あのにっくき悪役令嬢め、絶対に変だ。

 本来はもっとエーベル様と親しくしている私を虐めてくれるはずが、全然虐めてくれようとしないのだ。

 私がエーベル様と一緒にいてもふーんと言う感じで、全く張り合いが無かった。


 その上、老騎士が煩いことこの上なかった。

 こんな老騎士ゲームにいなかったのに、何故いるの?


 更にはこの老騎士はエーベル様のお祖父様の皇帝陛下と知り合いなんだとか、平気でため口で話しているんだけど……絶対におかしい。


 悪役令嬢が学園に入る前に私とエーベル様のとの真実の愛は完成したのに、悪役令嬢が働かないのだ。

 悪役令嬢が働いてくれないと、エーベル様と悪役令嬢の婚約破棄が出来ない。

 私が前もってやり過ぎたのかもしれない。

 それでゲームのバグの老騎士が出てきたのよ。


 邪魔なことこの上なかった。


 でも、今日はその老騎士がアンジェリーナの周りにいなくて代わりにさえない平民の男達を侍らせて悪役令嬢は喜んでいた。


 老騎士がいなくてラッキーとばかりに私が悪役令嬢に絡んだら、悪役令嬢がやっと今日初めて、私がエーベル様に近づき過ぎると苦言を呈してくれた。


「そのエーベルにいつもしなだれかかっている貴方が言えるの?」

「そうだ。そうだ」

「淫乱聖女は黙っていろよな」

 平民の男達がこの聖女の私に逆らってきたんだけど、処刑しても良いよね。


「どうしたのだ?」

 そこに側近達を従えたエーベルがぴったりと現れてくれた。


「エーベル様! 悪役令嬢のアンジェリーナが平民の男達を侍らせているから注意したら、アンジェリーナが平民の男達に命じて私に襲いかからせようとしてきたんです」

 私はエーベル様に泣きついたのだ。

 よし、これで上手くいった。

 悪役令嬢を叩き落とすチャンスだ。


「なんだと。貴様ら、この国の聖女に襲いかかろうとしたのか?」

 きっとしてエーベルが男達を睨み付けた。


「いえ、そんな」

 モーリッツ達は蒼白になっていた。


「良くそんな嘘がつけるわね。あなたこそ、婚約者の私の前で、私の婚約者に抱きつくのはさすがに止めてほしいんだけど」

「エーベル様。怖かったです」

 私は悪役令嬢のことばなんて無視して更にエーベル様に抱きついたのよ。


「アンジェリーナ! 貴様、ミーナが憎いからと言って男達を使って襲いかかろうとさせるなど言語道断だぞ」

 エーベル様がいきり立ってアンジェを睨んでくれた。

 その言葉はサマーパーティーで断罪の時のエーベル様の台詞だ。

 やったわ。ついに婚約破棄を宣言してくれるのね!

 ここまでとても長かったわ。

 私は感激したのよ。


 でも、平民の男子生徒達はもう、蒼白だった。

 気概が全然無いし、よく見たら皆もやしみたいな感じで、全然迫力が無い。

 こいつらに襲われそうになったというのが少し無理かもしれない。

 私は失敗したと気付いてしまった。


「聖女は嘘をついても良いのですか?」

 なんと、勇気ある平民の男が言い返してくれた。

 少しくらい反抗してくれなくては。

 これはチャンスだ。


「キャー、エーベル様。平民風情に嘘つき呼ばわりされましたわ」

「貴様。ミーナが嘘をついたというのか?」

 エーベル様が殺気だって平民男を見た。


「それは……」

 でも、反論するどころか男は黙ってしまった。

 ちょっと男が軟弱すぎるわ……


「貴様。聖女様に嘘つき呼ばわりしてただで済むと思うなよ」

 エーベル様の側近のヨーナス・ランツフートが剣の柄に手をかけて言うと、もう平民の男達は失禁しそうな顔をしていた。


「はい。そこの聖女様が嘘をつくのを見ました」

 でも、そこに来なくて良いのに老騎士が俺が大声を出してあられた。


「き、貴様」

 ヨーナス様が老騎士を睨み付けたが、図太い老騎士はびくともしなかった。

「剣聖ラファエル」

 苦虫を噛み潰したような顔をエーベル様がしてくれたんだけど……


「そもそも婚約者のいる男に抱きついている聖女様は道徳上宜しくないのでは?」

 この老騎士はあろうことかエーベル様に苦言を呈してくれたんだけど…


「何を言っているのよ。私とエーベル様は真実の愛で結ばれているのよ」

「笑止ですな。真実の愛など関係は無い。この婚約は我がフランク王国と帝国との間に結ばれた契約ですぞ。それを殿下は破られるというのか?」

 私が横から言ったら老騎士は私の言葉を無視してくれ立た。。


「貴様。剣聖とはいえ、高々騎士ではないか? この国の皇太子の第一皇子殿下に逆らうのか?」

 ヨーナス様が言い出してくれたが、


「それを言うならばアンジェリーナ様はフランク王国の第一王女殿下だ。貴様の言葉はランツフート侯爵殿の意向か? なんならご本人に確認させてもらうが……」

「いや、それは……」

 今度はヨーナズか青くなった。


「殿下もこれ以上アンジェリーナ様をないがしろにしてくれるのならば、お祖父様である皇帝陛下に申し上げねばなりません」

「なんだと、貴様一介の騎士の分際で皇帝陛下に意見するのか」

 今度は確か宰相の息子のユリウスが息巻いたが、

「ユリウス、止めよ」

 エーベル様が止めていた。

「剣聖殿。この件については祖父と相談の上、考えよう。それで良いな」

 ついにエーベル様が皇帝と直談判してくれることになった。


 やっとだ。

 これで私とエーベル様の婚約が決まるはずだ。


「エーベル様!」

 私はエーベル様に思いっきり抱き付いた。



 でも、エーベル様が陛下と話し合った結果は芳しくなかった。


「ミーナ、なんとかしてアンジェリーナとの婚約を破棄するから、もう少し我慢してくれ」

 とエーベル様から言われてしまった。


「そんな!」

 私は唖然とした。


「お祖父様は頑なだけど、少し時間をかければ、私とミーナのことを認めてくれるはずだ」

 エーベル様はそう言ってくれるが、本当にそうなるんだろうか?

 私はとても不安になってきた。


「聖女ミーナ様」

 私の傍に私付きのモルニー司教が近寄ってきたのだ。こいつは皮肉屋でよく嫌みを私に言ってくれるので、私は嫌いだった。


「悪役令嬢を追い落とす算段はつきましたか?」

「そんなに簡単にいったら苦労はしないわよ」

 私がむっとして反論すると、


「実は大司教様からお預かりしたのですが、我が教会には昔から伝わる竜を呼ぶ笛があるのです。此度のダンジョン探索の時に悪役令嬢の傍で竜を呼ぶ笛を吹けば上手くいけば悪役令嬢は竜の餌食にすることも可能です」

 司教は面白い提案をしてくれた。


「でも、そんな笛を吹いているのが判れば皆にバレるんじゃないの?」

 私は胡散臭そうに司教を見た。


「竜を呼び寄せる笛が奏でる高音域は、実は人間には聞こえないのです。だから周りにバレる可能性はありません。教会の暗部のものに命じれば問題は無いでしょう」

 司教が都合の良いことを教えてくれた。


「そうなの? もし出来るならばやってほしいけれど」

 私は打つ手打つ手が効かないので、もう打てる手は全て打ちたい心境だった。


「お任せ下さい。これで我が教会に楯突いた聖女の娘も処分できます。大司教様もとてもお喜びになられるでしょう」

 司教はいやらしい笑みを浮かべてくれた。

 昔帝国の教会にとどまるように大司教様が悪役令嬢の母の聖女にお願いしたのに、聖女はそれをあろうことか袖にして、故郷であるフランク王国に帰ってくれたのだとか。

 それ以来この国の教会はフランク王国に良い感情は抱いていなかった。

 当然その娘のアンジェリーナに対してもだ。


 これで生意気な悪役令嬢アンジェリーナが竜に襲われて死ねば、私が晴れてエーベル様の婚約者になれる。

 私は司教と一緒に高笑いしていた。


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