57.悪役令嬢視点 ダンジョン探索の班長に立候補しました
私は出来たらラフィーにはずっと私と一緒にいてほしかった。
だって今まで苦しい時も悲しい時もラフィーは一緒だった。
この帝国の皇太子の第一皇子の婚約者にしてくれたのもラフィーの力だった。
私はマイヤーが王宮の私の離宮を去る際にはっきり言われたのだ。
「ラファエル様はあなた様のお父様と継母であられる王妃様のあなた様に対する仕打ちをとても気にしていらっしゃいました。自分が生きているうちは良いが、なくなった後が心配だと。
だからこのフランク王国よりも強い帝国の第一皇子殿下とアンジエリーナ様の婚約を何としても成し遂げたいと尽力されたのです。
あなた様と第一皇子殿下の婚約がなったのは全てラファエル様のお陰です。
ラファエル様は『帝国からの恩賞は何もいらないから、代わりにアンヌ様の娘のアンジェリーナ様と皇帝陛下のお孫様との婚約を認めてほしい』と皇帝陛下にお願いされたのです。
だから、第一皇子殿下と婚姻されたらラファエル様の事を気にかけて上げて下さい」
と。
そんなこと言われなくても判っている。
私がここに生きてちゃんとした王女としていられるのは全てラフィーのお陰だ。
私はラフィーにはとてつもなく厚い恩義がある。一生かかっても返せないほどの恩義が……
そんなラフィーがこれ以上私の為に自己犠牲をするのは良くないと思う。
ここは私がラフィー離れしなければいけないのだ。
私は身を引こうと思った。
陛下やクラーラが言うように、ラフィーをこれ以上私がしばってはいけないと!
でも、頭では判っていても体は判らなかった。
そんな時にハンネローレに胸を押しつけられたラフィーのことが許せなくて頬を思いっきり引っ叩いてしまった。
でも、そんな事をしてはいけなかったのだ。
ラフィーは今まで私の為に自分のしたいこともせずに女性とも結婚せずに私の傍にいてくれたのだ。
少しくらい女の人に胸を押しつけられたくらい、「良かったわね」と流せば良かったのだ。
でも、それが出来なかった。
つい自分のない胸とハンネローレの豊かな胸を比べてぷっつん切れてしまった。
本当に私はラフィーの主として最低だ。
まあ、もっとも私がラフィーの主としてなんて話すのが烏滸がましいのかもしれない。
ラフィーは私の事を姫様姫様と立ててくれるが、本来ラフィーは剣聖ラファエル様なのだ。
皇帝陛下とため口をきけるくらいの人物だ。
私が主というよりは私の保護者というか後見人だった。
そのラフィーの人生をこれ以上私の為に犠牲にしてはいけない。
私ははっきりと身を引こうと思った。
ラフィーが他の女の子と仲良くしても見て見ぬ振りをしようと。
もう胸を押しつけられて喜んでも、私が胸が無いのにと怒るのではなくて良かったねと言ってあげようと心に決めたのだ。
食事時間、私はその練習でできる限りラフィーの方を見ないようにして過ごした。
ラフィーはハンネローレらに囲まれて楽しそうだった。
一方の私はオスカー達のつまらない話に付き合わされてうんざりしていた。
何で楽しくないんだろう?
ラフィーと一緒にいる時は、黙ってラフイーにもたれているだけでも楽しいのに……
いつもいるラフィーが私の横にいないのが物足りない原因だったけれど、今後はこれに慣れないと……
私は無理矢理慣れようと頑張っていた。
その日のお昼休みの後は臨時ホームルームだった。
ダンジョン探索の班分けだ。
私は今回はラフィーと別の班に入ろうと思った。
「では、班分けをしようと思います」
議長のオスカーが皆を見回してくれた。
「まずは班長から。推薦自薦立候補等はありますか?」
「はい」
「ハンネローレさん」
「はい。班長にはラフイー様を推薦します」
真っ先にハンネローレがラフィーを推薦した。
「オスカーさんが良いと思います」
オスカーの取り巻きの一人が推薦した。
「他はどうですか?」
「出来たら騎士志望の人は班長をしてほしいんだけど」
マイヤーが騎士志望のニコとヒルデを見た。
「ええええ! じゃあ仕方がないですね。俺がやります」
ニコが手を上げてくれた。
「ヒルデもやりなよ」
そのまま隣のヒルデにふった。
「そんな、私はラフィー様と一緒の班が良いのに」
「仕方が無いだろう。他に騎士志望の者もいないし」
「ヒルデさん、先生はやってもらえるととても嬉しいんだけど」
マイヤー先生がヒルデの顔を伺った。
「ええええ! でも」
「班長は経験豊富な人がやってくれるのが良いと思うのよ。その上、ヒルデさんは人望も厚いし」
「先生がそこまでおっしゃるなら」
不肖不肖ヒルデは頷いた。
「よし、これでライバルが減ったわ」
ハンネローレが言いだした。
私はその言葉に少しむっとしたんだけど……
でも、これはラフィー離れするのに良い機会だ。
「ちょっとハンネローレ、あんたは私の班に来なさいよ」
「絶対にいやよ。やっぱりここは安全なラフィー様の傍が良いわ」
「ちょっと、先生。私、やはり止めたいです」
「まあまあ、ヒルデさん。この借りは何かで返しますから」
「本当ですか?」
ヒルデはとても不満顔だった。
「あと一人誰かいませんか?」
マイヤー先生が訪ねた時だ。
「先生、私、班長やります」
私が手を上げて立候補したのよ。




