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56.悪役令嬢視点 私の騎士に自分の道を進ませようと思いました

 

「な、なんか許せない!」

 私はラフィーが女の子に囲まれるのを見てムカムカしていた。


「どうしたんですか、アンジェリーナ様? お嫌いな物でもありました?」

 オスカーが話しかけてきてくれたが、私は今まで色々オスカーが話してくれたつまらない言葉なんて聞いていなかったのを思い出した。

「ううん、何でも無いわ」

 私はオスカーににこやかに笑ってみた。

「なら良いんですけど」

 それを見てオスカーが嬉しそうに笑う。


 他の男は私が笑いかけたら嬉しそうにするのに、でも、ラフィーはこちらを少しも見てくれないんだけど……

 他の奴と食事したら少しはラフィーがこちらを向くかと思ったんだけど、全然だ。


 ラフィーの奴、また、女の子に囲まれて喜んでいる。

 私はますますムカムカした。


 いやいや、良くない。私は身を引こうと思ったんだ。


 元々ラフィーは物心ついた時から私の傍にいた。

 お父さんみたいな感じだった。最初は……


 それにプラスして、ラフィーはとても格好良かった。

 剣を抜いたらその辺りのならず者は敵ならず、口で言ってくる者には口で言い返してくれたし、最悪ラフィーが怒って威圧したら大抵の者は尻尾を巻いて逃げ出した。

 それが私の敵の王妃や妹でもだ。

 ラフィーは悪意のある者から私をずっと守ってくれたのだ。


 私にとってラフィーは絵本によくある白馬に乗った王子様だった。

 実の父よりも余程格好良かった。

 年いっていると言っても私にとっては剣を取ったら世界一強いラフィーは私の自慢の騎士だった。


 そんなラフィーは私をずっと守ってくれると私は信じていたのだ。


 でも、私はラフィーの昔からの友達の皇帝陛下とラフィーの会話を聞いてしまったのだ。


「しかし、自分の娘の面倒をお前に見させるなどどういう事だ? お前は結婚しようとすればいくらでも出来たのに! お前はあのアンジエリーナの面倒を見ているうちにこんな年になったではないか!」


 私はその言葉に驚いた。私のためにラフィーは人生を棒にしたと聞こえたのだ。

 私のために!


「そこまでさせておいて、この扱いは俺は許せんぞ」

 陛下は父の扱に怒っていた。

 それは私もそう思う。

 でも、次のラフィーの言葉は私にとって衝撃的だった。


「バルト、俺は死に間際のアンヌに頼まれたのだ。『ラフィーお願いだからアンジェリーナを頼む』と」


 ラフィーは私のために私を護ってくれているんじゃなかったんだ……


 お母様のために私を守ってくれていたなんて!


 その言葉も私にはショックだった。


 確かにラフィーは王妃達に言い返す時に前王妃様のために自分はここでアンジェリーナ様を守っていると言っていた。でもそれは勝手に方便だと思っていたのだ。

 ラフィーは私を好きだから私を守ってくれていると勝手に勘違いしていたのだ。


「まあ、そう言うな。これでアンジェが貴様の孫と一緒になってくれれば余生は俺の好きにして過ごすさ」 


 ラフィーの言葉は私にとってショックだった。

 ラフィーが一生涯私についてきてくれると私は思っていたのだ。


 でも、ラフィーにはラフィーの人生がある。


 確かに今までは王宮にしかいなかったからよく判らなかったが、ラフィーはこの帝国ではとても人気だった。本当に英雄って感じだ。

 母国ではラフィーは私の護衛騎士だッたが、この地では英雄だった。

 エーベルト結婚してもずっとラフィーがついてきてくれると思っていたけれど、それは難しいのかもしれない。



 皆がラフィーの家に遊びに来た時に皇帝陛下も来た。

 皇帝は本当にラフィーが好きらしい。


「ラフィー、そろそろ自分の人生を楽しめ」

 と皇帝がラフィーにまた言っているのを聞いた。


「バルト、俺ももう年だぞ」

「何を言っているんだ! 今まで散々アンヌのためにその娘を守ってきたんだ」

 皇帝陛下は私が聞いていないと思っていたんだろう。また言ってくれた。

 何かそう言われるとむっとした。


「いい加減に自分の人生を謳歌しても良いだろうが。それに、お前に娘を嫁がせたい貴族など山のようにいるぞ」 

「こんな老人に嫁がされる娘の方が迷惑だろう」

「何を言っている。グスタフの孫娘など本気だぞ。グスタフにしても、お前を婿に迎えることが出来れば万々歳だと言っている」

「あのじいさんは昔からだ。昔はその娘だったぞ。誰でも良いのか?」

 ラフィーの呆れた言葉が聞こえたけれど、本当に帝国ではラフィーは引く手あまたらしい。


「アンジェリーナさん。あなたもエーベルハルト様の婚約者なんですから、いい加減にラフィー様を解放して上げて」

 最初にクラーラに言われた時はよく判らなかったが、その言葉の意味がやっとわかってきた。

 ラフィーは自分が年だから自分に嫁いでくる相手なんていないと言うが、剣技は未だに帝国一だ。

 剣聖と言って良いだろう。

 その血を欲する貴族家や、騎士家は多いのだ。何故かその人気故にラフィーを商家の婿にと言う商会もあるくらいだ。


 でも、私は昔からラフィーと一緒にいた。

 ラフィーにずっと護られていた。

 そのラフィーがいなくなるのは嫌だ。


 でも、皇帝陛下もクラーラもいい加減にラフィーを解放して上げろって言っていた。


 確かに私の為にラフィーの人生を棒に振ってしまった。

 ラフィーを今からでも解放して上げるべきだ。


 でも、私は他の女の子とラフィーが楽しそうに話しているのを見るととても心が痛む。

 出来たらラフィーを自分のものにしておきたかった。


 こうやってラフィーと離れてみたが、ラフィーのことがとても気になってしまう。

 でも、それでは駄目なのよ。

 頑張れ、アンジェ!

 私は必死にラフィーの方を見ないようにすることにしたのだ。




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