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55.人生初、女性に群がられましたが、アプローチされているとは全く理解していませんでした。

 パシーン!


 アンジェに張り倒された時、俺の頬は悲鳴を上げた。


 まさかアンジェに頬を張られるときがくんるなんて……

 赤ちゃんの時から世話してきたのに!

 これが父親が娘から向けられる仕打ちなのか!


 俺はとてもショックを受けた。


 しかし、俺達が邸宅に帰っても、

「それはラファエル様がお悪うございますね」

 セバスチャンは瞬時に俺のせいにしてくれたし、他の使用人も俺が屋敷の主なのに、誰一人俺の味方になってはくれなかった。


「アンジェ、悪かったから」

 俺が謝るも

「ふんっ!」

 と全く相手にされなかった。


 その日の晩餐もアンジェは俺とは口も利いてくれなかったのだ。

 本当にもう最悪だった。

 それもこれも、だらだら学級委員会を進行してくれた生徒会長のエーベルとあのボケ聖女のミーナのせいだ。

 貴様らが前もってもっときちんと打ち合わせして、きちんと進行してくれたらあんなぐだぐだの延び延びの進行にならずに、アンジェと同じくらいの時間で終わって一緒に仲良く帰れたのだ。


 それをいい加減に進行してくれるからこうなったのだ。

 俺はミーナにまた一つ恨みが増えた。


 翌朝もアンジェは俺に口も利いてくれなかった。

 俺は朝から参ってしまった。


 馬車に乗ってもアンジェは俺に口を利いてくれなかった。

 本当に俺にとって最悪だった。


 馬車が学園に着いた時だ。

「ラファエル様!」

「剣聖ラファエル様!」

「お願いします。私にもサインを!」

 俺に対して凄まじい人が群がって来たのだ。


「いや、ちょっと、まって、姫様!」

 俺が声をかける前にアンジェはさっさと行ってくれた。


「ラファエル様、サインを是非とも下さい」

「いや、君たち、今は時間がないからまた放課後に」

「そんな」

「剣聖様」

「放課後なら良いから」

 俺はそう言うとなんとか押しかけてくる人々をかき分けて教室に向かおうーとしたのだ。


 でも、昨日俺からサインをもらったとクラス委員長達が言いふらしたために俺は後から後からサインをもらいたいと言い募る生徒達に迫られてなんとかそれを躱して、教室にたどり着いた時には本鈴が鳴っていた。


「ラファエルさん、何を遅れているのですか?」

 そこには怒髪天のマイヤーがいた。

「いえ、マイヤー先生、人をかき分けるのに、時間がかかってしまって申し訳ありません」

 俺はマイヤーの視線を受けてマイヤーに謝った。


「アンジェリーナさんはちゃんと時間に間に合っているのに、ラファエルさんは本当にたるんでいますね。そこで立っていなさい!」

 俺はマイヤーに怒られて立たされる羽目になってしまったのだ。

 そんな……


「では、教科書の8ページからラファエルさん。読んでください」

「春の優しく生命を与えるまなざしによって、小川や渓流は氷から解き放たれ、谷間には希望の喜びが花開き、弱り果てた冬は険しい山々へと退却した……」

 俺は立たされた挙げ句に詩を朗読されてた。おそらくゲーテだったと思う……。俺がゲーテを読むことになるなんて……もう本当に大変だった。



 昼休みになった。

 途中の時間はアンジェと話そうとしたが、アンジェはけんもほろろの対応だった。


 俺は昼こそアンジェと話そうと思ったのだが、


「アンジェリーナさん。お昼を僕らといかがですか?」

 なんとオスカーがアンジェを誘いに来たのだ。

「ええ、良いわ。オスカーさん」

 驚いた事にアンジェはニコリと笑ってその誘いに応じたのだ。


 そんな、アンジェがオスカー達と食事するなんて……

 エーベル以外の男とまさか食事を共にされるとは思ってもいなかった。


「ラフィー様」

「食事に参りましょう」

 しかし、俺はアンジェを追いかける間もなく、ハンネローレやヒルデ、イレーネらにあっという間に捕まってしまったのだ。


「いや、しかし、俺は姫様に……」

「ラフィー様。気になさらずともアンジェリーナさんがオスカーなんかに惹かれる訳はありません」

「そうですよ。アンジェは絶対に帰ってきますから」

「気にせずに食堂に行きましょう」

 ハンネローレら女三人とニコに囲まれて俺は食堂に連れて行かれたのだ。


 食堂は相変わらず並んでいた。

 前を見るとオスカーがアンジェと楽しそうに話していた。

 アンジェはどちらかというと適当に相づちをうっているみたいだったが……


「ああら、ラフィー様。昨日は有難うございました」

 俺の前にデリアが現れた。

「一緒に食事いかがですか?」

「ちょっとデリア、私達がいるのが目に入らないの?」

 ハンネローレが噛み付いたが、

「だって男爵令嬢の私の方がどこの馬の骨とも判らない貴方たちよりも剣聖様にはふさわしいわ」

「何言っているのよ。高々男爵令嬢風情が威張っているんじゃないわよ!」

 横からクラーラが出て来た。

「地位はそうかもしれないけれど、お金ならば我が家の方がありますわ。ラフィー様、これからは権力よりもお金ですわ」

 ハンネローレが色目を使って俺にしなだれかかってくれた。

 俺は思わず、目が点に夏てしまった。


「ああら、ゴモーレ商会の方はお下品ね。我が家の騎士団は帝国でも有数ですわ。剣聖様には是非ともその騎士団を率いて頂ければと思うのですが」

「何言っているのよ。ラフィー様はそのような権力や金とは無縁ですわ。私となら一緒にダンジョンに潜れますわ」

 クラーラやヒルデが自分を誘ってくれるのだが、ひょっとしてこれは卒業後の俺をスカウトしているのか?

 俺は女にもてた試しが無かったからアプローチされているとは全然気付かなかったのだ。


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