50.屋敷に来たいというクラスメートを呼んだら何故か皇帝まで来てくれました
アンジェが何故か元気がない。
俺はとても気になっていた。
他の奴らに虐められているんだろうか?
いやいや、それはないはずだ。
何しろ俺がほとんど張り付いているのだ。
そんなそぶりはなかった。
それに他のクラスメートとは普通になじめているみたいだし……
「ちょっと、アンジェリーナさん。この髪飾りはどうかしら」
最近商人の娘のハンネローレがやたらアンジェに接触してきた。
それも、ちょっとした装飾品をアンジェに勧めるのだ。
今回はピンクのバラの髪飾りだ。見た感じアンジェの金の髪によく似合いそうだ? と思う……
まあ、帝都でも屈指のゴモーレ商会の娘だから、持ってくるものも結構良い物だと思う。
ついでに価格が高いはずだ。
「まあ、素敵ね!」
クラーラの侍女のイレーネが感心していたからそのはずだ。
俺は前世でも今世でも装飾品はもう一つよく判らない。
「うーん、でも、装飾品はカミラに任せているから」
アンジェは装飾品についてはもう一つだ。
まあ、一緒にいるのがそんなのに全然興味がない俺だったからというのがあるのか?
ありそうだ……
「まあ、侍女の方が全て決めているのね。でも、アンジェリーナさんももう少し自分の見せ方を考えた方が良いわよ。好きな男性の方に振り向いてもらうのに、きれいな方が良いでしょう?」
「そ、そうなの?」
何故かアンジェが俺を見て聞いてきた。
「ラファエル様もそう思われますよね」
「まあ、それはそうだろう。男は女がきれいな方がいいと思うぞ」
俺は慌ててハンネローレに頷いていた。
おそらく、エーベルはその辺りの知識も豊富なはずだ。エーベルの心を掴むには、俺もその辺りの知識を身につけてアンジェを着飾らせる方向でもっていった方が良いかもしれない。
「そうか、ラフィーも着飾った女の方が良いのか」
アンジェが小声でブツブツ言っているのが俺はよく聞こえなかった。
「それでしたら、一度お宅にお邪魔させて頂いてその侍女の方とも色々と相談させて頂けないかしら」
ハンネローレは期待に満ちた目でアンジェを見た。
「うーん、でも、私は今はラフィーの家の居候だし」
アンジェが断ろうとした。
「いや、別にハンネローレが来たいのならば来ても良いぞ」
俺は訪ねて来たそうなハンネローレにそう言うと、
「ちょっと待った! ラフィー様の家に行くのならば私も行きたい!」
「俺もラフィー様の家に行ってみたいです!」
「私も!」
ヒルデ達がこぞって言いだしたので、来たい奴らを呼ぶことにしたのだ。
「で、なんで貴様がいる?」
俺は白い目で銀髪に白髪の交じった男を睨み付けていた。
その男は俺が一階のテラスに出した椅子にどっしりと腰を下ろして剣聖印のワイングラスを傾けていたのだ。
「まあ、そう堅いことを言うな。俺も貴様のクラスメートだ」
「どこの世界に学園に入学する皇帝がいるのだ?」
「それを言うなら、どこの世界にその年で学園に入学する剣聖がいる?」
「……」
バルトの声に俺は睨み付けるしか出来なかった。
「おはようございます、陛下」
一階に降りてきたアンジェもバルトを見て唖然としていた。
「おお、これはアンジェリーナ姫。今日はまた可愛らしい格好をしているのだな」
目を見開いてバルトがアンジェを褒めた。
アンジェは紺のブラウスに白のバラの飾りのレースを散りばめた服を着ていた。先日のピンクのバラの髪飾りを頭に付けていて、とても可愛らしい格好をしていた。
「はい。ラフィーに可愛い所を見せようと頑張りました」
「俺なんかに見せても仕方が無かろう。エーベルハルト様に可愛い所を見てもらえば良いのでは無いか?」
俺がそう言うと、
「ええええ! ラフィーは私が可愛くするのは嫌?」
なんか悲しそうにアンジェが顔を曇らす。
「痛い!」
俺は思いっつきリ一緒に降りてきたカミラに足を踏まれていた。
「いや、決してそんな事は無いぞ」
俺は涙ながらにアンジェを褒めた。
カミラはマイヤー仕込みなのか容赦がない。
一応この館の主は俺のはずなのに……
「へ、陛下!」
一緒にアンジェを着飾らせて二階から降りてきたハンネローレ達は固まっていた。
「ほら見てみろ。貴様が勝手に来るからクラスメート達が戸惑っているではないか」
「何を言う。貴様がそもそも学園にいるのが間違っているのだ」
俺の言葉にバルトが反論してくれたが、
「俺は貴様と違って学園の中に溶け込んでいるぞ」
俺がバルトに自慢して言うと、
「そんな訳ないだろう! 貴様はこの世界を悪の魔王から救った英雄、剣聖ラファエルなのだぞ! 学園で浮いているに違いないだろう!」
「貴様はそう言うが、その話って20年前の話だぞ。今の学生達は生まれる前の話だ。決して皆知らないだろう」
俺はそう言うとイレーネ達を見た。
「そんな事はありませんわ。私は父から散々その話は聞いておりましたから」
何故か一緒に来たハンニバル辺境伯令嬢クラーラが後ろから顔を出した。
「それは特殊な環境で、ボルドー伯爵令嬢など全く知っていなかったでは無いか」
俺がそう言うと
「それも特殊だろう。あの領地は貴様の活躍で救われたのだ。『自分の教育不足でした』とリヒャルトは今再度領地に帰って息子家族の教育をやり直しているみたいだぞ」
バルトはそう言ってくれるが、大半の奴は知らないはずだ。
「お前らも知っているよな」
「当然ですわ」
「私は父の寝物語に何十回も聞きました」
「俺は剣聖様の話を祖父から聞いて騎士になろうと思ったのです」
イレーネ達がバルトに賛成した。
こいつらは元々喜んで俺の周りに寄ってきた特殊な奴らだという事を忘れていた。
「ほら見てみろ!」
バルトが自慢そうに言ってくれるが、俺の周りに喜んでいる段取りで特殊だろう!
「いや、そいつらは特別で……」
俺が首を振ると
「そんな事は無いですぞ。ラファエル様。是非とも今度はまともにお相手いただきたい」
皇帝の後ろに控えていた騎士団長が言いだした。
「我が近衛騎士に訓練をつけて頂けたらとても嬉しいのですが」
後ろに控えている近衛達もそう言い出したのだが……いや、だからこいつらが異常なだけだ!
でも、俺の言葉は誰も聞いてくれなかった。
考えたらここにいる奴らは近衞騎士も含めて、何故か俺の事を敬っている集団だった。
そんな中、一人アンジェは心配そうな顔をしていたんだが、何でだろう?
俺は心に引っかかった。




