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46.とある前伯爵の独り言 剣聖が来ていると知って領地から飛び出しました

「ギャオーーーー」

「ギャオーーーー」

 魔物の雄叫びは腹に来る。

 特にそれが組織だったものだと恐怖まで呼び起こす。


 20年前の魔王が率いた軍団と対するのは大変だった。

 魔物の軍の中に指示する魔物がいて、そいつらは人間と変らない動きをしてくれたのだ。

 囮を使ったり、戦術を駆使した戦いをしてくれたり、我らは大苦戦した。

 また、魔物達は冷酷だった。

 降伏勧告したのに、降伏した街の者を皆殺しにするなど日常茶飯事だった。

 俺達人間は至るところで魔王軍に負けて殺された。


 そんな中で、我が帝国の皇太子殿下を中心とした魔王討伐パーティーが結成された。

 最強の力を持つ勇者バルトロメウス様と最強魔術師であり隣国フランク王国の第二王子ダニエル殿下と当時最強の癒やしの魔術を扱う聖女アンヌ様、それと剣士ラファエル様だ。

 剣士ラファエル様が何故そのパーティーに選ばれたかはよく判らなかったが、強い剣士なのだろうと俺達は思っていた。


 しかし、魔王討伐パーティーは最初は遅遅たる歩みだった。

 魔王軍と戦っても良く負けていた。それから数年そんなことが続いたが、徐々に勝利することが増えてきた。そんな時だ。我が領地が魔物の大軍に襲われたのは。


 突然現れた魔王軍の大軍の前に我が領は壊滅的な状況だった。

 領民全てを城壁の中に集めて、籠城してみたものの勝てるとは到底思えなかった。

 籠城は1ヶ月にも及び、頼みの援軍も途中で魔王軍の別働隊に邪魔されてこの城まで来なかった。


 俺は死を覚悟した。

 王都にいる息子夫婦に遺書を書いていたときだ。


「「「ウォーーーーー!」」」

 魔王軍の大歓声が聞こえた。

「大変ですお館様。敵が総攻撃を仕掛けてきました」

 側近が報告してきた。

「直ちに全軍で迎え撃て。絶対に魔物は1匹たりとも場内に入れるな」

「判りました」

 直ちに伝令が飛び出していった。


 しかし、俺にはもっても数時間が限度だろうと諦めていた。


 そんな時だ。



 ドカーン!

 突然魔王軍の後方で大きな爆発が起こった。


 城門を乗り越えてこようとしていた魔物が大きく動揺した。


「ギャーギャー」

「ギャーギャー」

 俺は魔物達が慌てふためいているのが目に見えた。


 城壁からははるか先に四人の人影が見えた。


 その一人が剣を横殴りに振り払うのが見えたのだ。


 ズカーン

「「「ギャーーーー!」」」

 凄まじい音と共に城壁とその者の間にいた魔物達が一瞬で両断されたのだ。


 ドカーン!

 凄まじい音と衝撃が城壁にも走った。


 城壁には一直線に走った大きな傷跡が残っていた。


「そ、ソニックブレード!」

 俺が剣聖ラファエル様のソニックブレードを初めて見た時の衝撃は未だに忘れられない。


 生き残った魔物達は慌てて逃げだそうとしたが、魔王討伐パーティーの面々が残りを処分するのはあっという間だった。




 それから二十年が経ち、我がボルドー伯爵家も復興した。


 今はとても平和だ。


 その年に取れたワインは希少だったが、俺は陛下に言われてそれに剣聖様の姿絵をつけて剣聖ラファエル銘にして売り出した。あっと言う間に完売した記憶があった。


 その時、一部残した銘柄ワインを俺は昼間から試飲していた。

 そう、あくまでも試飲だ。決して昼間から仕事をさぼって飲んでいるわけではないのだ。


 のどかな田園の中でのんびりするなど、昔なら考えられもしなかった。

 空はとても青かった。

 この平和をもたらしてくれた剣聖ラファエル様は今は王国でこの空を見ているのだろうか?

 俺が珍しく、詩的なことを考えていた時だ。


「おーい、リヒャルト!」

 遠くから聞き慣れたドラ声を耳にした。

「これはこれはハンニバル将軍」

 俺は驚いて立ち上がった。

 魔王戦の時も一緒に戦った名将ハンニバル辺境伯だ。

 彼は引退した俺と違って未だに辺境伯をしていた。


「どうされたのです。将軍。このようなところに」

 将軍を席に勧めて試飲のワインを差し出しながら俺は尋ねていた。

 

「実はな、剣聖ラファエル様が帝都の学園にいらっしゃるのだ」

「何ですと、剣の教師として赴任していただけたのですか?」

 そのようなことは聞いていない。

 孫が今は学園に行っているはずなのに、何故俺に報告せん?

 俺は少し切れだした。


「いや、それが生徒としてだ」

「せ、生徒としてですか」

 俺は驚いてハンニバル将軍を見た。大剣聖様が生徒として? 何か信じられなかった。


「何でも、王女殿下付きで留学されたらしい」

「左様でございますか」

 俺にはよく理解できなかったが、護衛騎士として滞在しているのだろうと思った。


「それで陛下がおっしゃるにはその方の領地にまだ剣聖ラファエル銘柄のワインが残っていないかとの話でな」

「ございますぞ。それを陛下にお届けすればよろしので」

「いや、その方も忙しいであろう。俺が買って持って帰ろうと思ったのだが」 

「何をおっしゃいます。剣聖ラファエル様がいらっしゃったのなら直ちに挨拶代わりに俺がお届けします」

 俺は慌てて立ち上がった。


「おおい、ヨハン。直ちに出立準備だ」

 俺は立ち上がると執事に命じて剣聖銘柄のワインと倉庫にある選りすぐりのワインを集めて王都に向かって旅立ったのだった。


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