45.娘を傷つけたと怒鳴り込んできた伯爵夫妻に延々虐められました
「痛いわ!」
パトリツィアの悲鳴に
「どうしたの?」
扉を開けてミーナがやってきた。
こいつは絶対にすぐ傍で待機していたみたいだ。
「まあ、ミーナ様。私、この女の護衛に傷つけられましたの!」
パトリツィアは大きな声で叫んでくれた。
「なんて事なの? まあ、パトリツィアの手が腫れているわ。騎士のくせに、令嬢に手を上げるなんて」
ミーナは俺を見下してくれた。
「本当に最低ね!」
「信じられないわ」
娘達は俺を悪者のように見てくれた。
俺としては本当に少し当たっただけなのに、信じられなかった。
これが男どもだったら一瞬で吹っ飛ばせばそれで済むが、女どもではそうはいかない。
俺はどうしたら良いか判らなかった。
「何が手が腫れて大変よ。ラフィー様の手が軽く当たっただけで手が腫れる訳ないでしょう。そうかあなたはダンスパーティーで男に触れられただけで手が真っ赤になるほどひ弱なの?」
たまりかねてヒルデが庇ってくれた。
「まあ、私達は貴方みたいに体を鍛えていないから、男の方に乱暴にされたら手も腫れますわ」
「そうよ。フランク王国ならいざ知らず、ここ帝国では男の騎士が令嬢に手を出すなんてあり得ませんわ」
「さすがフランク王国は野蛮ね」
「男の騎士が女性に手を出しても、問題ないなんてよく言えたわね」
女達が俺を非難してくれた。
「何をしているのです!」
そこへマイヤーまでがやってきた。
「まあ、マイヤー先生。貴方が推薦した生徒のラファエルさんがパトリツィア・ボルドー伯爵令嬢に手を出したのよ。この責任をどう取って頂けるの?」
「手を出したって軽く当たっただけよ」
カンタローネの声にたまらずアンジェが言い出してくれたが、
「いたたたたた!」
大げさにパトリツィアはこれ見よがしに叫んでくれた。
「軽く当たろうがなかろうが、騎士が令嬢に手を出すなんて信じられませんわ」
「ラファエルさん。あなた、パトリツィアさんに手を出したのですか」
きっとしてマイヤーは私を睨んでくれた。
「いや、手を出したというのはなくて……」
俺は言い訳しようとした。
「何を言うの! 確かに手は当たったわよ」
パトリツィアははっきり言い切ってくれた。
「どうなのですか? ラファエルさん」
マイヤーの顔はとても怖かった。
「少しは当たったかと……」
「そらご覧なさい。本当に乱暴な騎士だこと」
俺の声にそれ見たことかとカンタローネは叫び出してくれた。
「取りあえず当事者のパトリツィアさんとラファエルさんは職員室に」
マイヤーの言葉で俺はそのままマイヤーに職員室に連れ去られたのだ。
「その前にカンタローネ先生。私保健室で手当てしてほしいです」
「判りました。私と一緒に参りましょう」
パトリツィアは俺を見て笑うとカンタローネに連れられて保健室に行った。
俺はむすっとしたマイヤーに連れられて職員室に向かった。
「ラファエルさん。何をしているのです! ああなるのは理解できなかったのですか?」
白い目でマイヤーは俺を見てくれた。
「いやー、面目ない」
俺はそう言うしか言えなかった。
「完全に嵌められてしまったな」
俺は少し青くなっていた。
最初は本当にほとんど当たってもいないのに、あんな大騒ぎをしてくれて、俺にはとても迷惑だと俺は思っていた。
でも、保健室から出て来たパトリツィアは包帯でぐるぐるに巻いて腕をつってきたのだ。
それを見て俺は目が点になった。
保険の先生言うには骨折の疑いありとのことだった。
俺には絶対にあり得ないと叫びたかった。
その後連絡を受けたボルドー伯爵夫妻が飛んで来たのだ。
「まあ、学園長。私はこの帝国の学園を信頼して娘を預けたのです。なのに、骨折したかもしれないなんてどういう事ですの?」
赤い髪の毛をした太った夫人が髪を逆立てて学園長に食ってかかっていた。
「申し訳ない」
俺は仕方なしに頭を下げていた。
「謝って済む問題ではありませんわ。暴力を振るうこんな男が学園にいるなんてどういうことなんですか、学園長?」
「いやあ、ラファエルさんはフランク王国の王女の護衛騎士で」
学園長が言い訳を始めると、
「フランク王国の王女殿下の護衛騎士を生徒として受け入れるなどとんでもないことですわ。おわかりですの学園長」
「まあ、夫人、お怒りの点はごもっともですが、このラファエルさんは入学試験で入学者の平均以上の点数を叩き出してくれましたからな。学遠足に則って入学を認めるしかなかったのです」
学園長が理由をのべてくれた。
「何ですって!」
怒りに震えた夫人が俺を睨み付けた。
「しかし、いくら点数が良かったからと言って娘に暴力を振るわれたら溜まりませんぞ」
伯爵が今度は怒り出した。
「いや、しかし、私はちょっと触れただけで」
「触れたただけでどうやって娘は骨折するのですか?」
「いや、あれで骨折する訳は」
「騎士の体と伯爵令嬢の体を一緒にしてもらっては困りますな」
「本当ですわ。貴方のちょっとが娘の骨折に繋がったのですからどう責任を取ってくれるのです。娘は伯爵令嬢なのですよ。無位無冠のあなたとは住む世界が済むのです」
伯爵と夫人は怒り狂って俺を責め立てた。
「まあ、ボルドー伯爵夫妻。詫びはラファエル・サンティーニ子爵にさせますから」
マイヤーがそう言い出してくれた。
「サンティーニ子爵家など聞いたことがありませんわ。新興の貴族ですの」
「前、皇帝陛下がお作りになられた新しい子爵家ですわ」
マイヤーが皇帝の所を強調して説明してくれた。
「前皇帝陛下ですか」
皇帝の名前が出て来たので、夫妻の俺への追及が少しましになった。
「まあ、良いですわ。本来ならば我が家の娘に手を出した件で訴えても良いのですが、まあ、正式に謝罪頂いた上で考えますわ」
夫人がブスリとして宣言してくれた。
俺は夫妻に延々文句を言われた後に、学園長とマイヤーにお小言をもらって本当に最悪だった。




