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42.皇宮に言った後に王女が何故かとても静かになりました

 そこに侍女達がお茶ならぬワインを持ってきた。


「おいおい、今日はお茶会じゃないのか?」

 俺は驚いてバルトを見ると、

「何を言う、貴様と会ったら飲み交わそうと思っていたのだ」

「では剣聖殿、私はここで」

皇太子がそう言うと笑って席を離れた。


「良いのか、皇帝が昼間から飲んで?」

「たまには良かろう」

 バルトは俺の意見も聞かずにワインのコルクを開けてくれた。

 そして、グラスになみなみと注ぐと俺に渡してきた。


 自分のグラスにもその美しい白ワインを注ぐ。


「友との再会に乾杯!」

「乾杯!」

カツン

と俺達はグラスを合わせた。


「上手いな!」

一口口に含んで俺は驚いた。


「そらそうだろう。帝国のフランケンの18年物だ」

「貴様の孫のワインではないのか?」

 俺は驚いてバルトを見た。

 バルトの孫、エーベルの生まれた年のワインだ。

 おそらくそれように作ったワインだろう。そんなワインを飲んでいいのかと俺は聞いていた。


「何を言うか。このワインは魔王を倒した年に作らせたワインだぞ」

 バルトは訂正してくれた。


「確かにそう言えばそうだな」

 そう言えばもう18年経ったのだ。魔王を倒してから……


「あの旅は色々あったな」

「本当に。もう終わりだと思ったことも一回や二回じゃなかったな」

 俺が思い出して言うと、

「そうだな。まあもっとも一番は最後の魔王と対決したときだが……お前は良く魔王の前で魔王と戦えたよ」

「あれは無我夢中だったんだ」

 バルトの声に俺は首を振った。

「アンヌを守る為にだろう」

「まあ、そうかな」

 バルトの問いに昔は否定していたが、もうこの年になれば否定するのもあれだろう。俺は適当に頷いた。

 あの糞魔王はいやらしい笑みを浮かべてアンヌを娼婦のように弄んでやると俺の前でいいやがった。その言葉に完全に切れてしまった俺は何故か魔王の威圧から逃れて宝剣を抜けたのだ。

 おそらく魔王は勇者バルトと最強魔術師ダニエルを見ていて俺をあまり警戒していなかったのだ。


 だから抜けたんだと思う。


 後はただ、無我夢中に剣を振り回しただけだった。

 気付いたら魔王を真っ二つに斬り裂いていた。


 今から思ってもよくできたと思う。

 本当に奇跡だった。


 俺は感慨にふけってワインのボトルをふとみると、そのボトルには姿絵が描かれていた。


「おい、この絵は……」

 俺は唖然としてボトルを掴んだ。

「そう、貴様だ」

「はい?」

 俺は瓶のラベルとバルトの顔を見比べた。


「魔王を倒した年に仕込んだフランケンワインに貴様の名を冠して剣聖ラファエルワインとして大々的に売り出しのだ」

「そんなのは聞いていないぞ」

 俺は驚いて文句を言うと、

「その収益の一部は貴様のサンティーニ家の収入になっておる。何も問題はあるまい」

 平然とバルトは言ってくれたが、そんなの聞いていなかった。


 まあ俺の家が本当にあるとは思ってもいなかったから……その家に住んでいる俺は何も言えないと言えば言えないが……


「しかし、普通は当人の俺に断ってからやる物だろう」

「断ろうにも一向にこちらに来なかったのは貴様であろうが!」

 いけしゃあしゃあとバルトは言いだしてくれたが、それは違うだろう!


「それに家があって良かっただろうが」

「……」

 それを言われると何も言えなかった。


「しかし、ダニエルのお前に対する扱いは本当にむかつくな」

 苦虫を噛み潰すような顔をバルトはした。


「貴様が魔王を倒してくれたお陰で今のこの世界の平和があるのだぞ。俺もそうだったが、ダニエルも魔王の前に手も足も出なかったのだ!

 その貴様に対する貴様の国の扱いがあれか?

 貴様に対して感謝こそすれ、なんだあの部下の態度は? 大使を見ればダニエルのお前に対する扱いが判るという物だ」

 バルトは憤ってくれた。


「まあ、昔のことだ。20年も経てば皆忘れる」

 俺は首を振った。


「しかし、自分の娘の面倒をお前に見させるなどどういう事だ? お前は結婚しようとすればいくらでも出来たのに! お前はあのアンジエリーナの面倒を見ているうちにこんな年になったではないか! そこまでさせておいて、この扱いは俺は許せんぞ」

 バルトは憤ってくれた。


「バルト、俺は死に間際のアンヌに頼まれたのだ。『ラフィーお願いだからアンジェリーナを頼む』と」

「自分が振った男にか!」

 バルトの言葉は俺の胸にも響いた。

「あまりにも自分に都合の良すぎることではないか!」

「まあ、そう言うな。これでアンジェが貴様の孫と一緒になってくれれば余生は俺の好きにして過ごすさ」 

 そうバルトに言うと俺は顔を上げた。

 そして、庭とこの部屋との入り口に呆然として立ち尽くしているアンジェを見つけた。


「どうした姫様。エーベルハルト殿と何かあったのか?」

「いえ、別に……」

 俺の質問にアンジェは首を振った。


「エーベルトハルトはどうしたのだ?」

 驚いてバルトが聞くと、

「庭を案内して頂いるところに側近の方がいらっしゃって急用が出来たと部屋に帰られました」

「何をしているんだ、あいつは婚約者殿を置いていくとは」

 バルトがブツブツ文句を言っていた。


 結局その後バルトも仕事で呼ばれて、俺は顔合わせも無事に済んだと皇宮を後にした。


 でも、あの後アンジェはとても静かになっていた。

 何を聞いても大したことはないとしかアンジェは答えてくれなかったが、エーベルト何かあったんだろうか?

 俺はとても気になっていた。


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