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41.生意気な大使を皇帝が追い出してくれました

 席が一つしかないことにアンジェが戸惑ったが、俺は首を振った。

 普通はむかつく大使が立てば良いと思うが、ここは他国の皇宮だ。

 大使に席が与えられているのならば俺が立てば良いだけの話だ。

 宰相の話では俺も歓迎してくれとのことだったが、意志は統一はされていないらしい。席が一つなら俺はアンジェの後ろに立てば良いだろう。俺はアンジェに席に着くように手で合図した。


 その時だ。

 皇帝バルトロメウス・バイエルンが自ら扉を開けて足早に入ってきた。


「これは皇帝陛下におかれましてはご機嫌麗しう、フランク王国大使のベルクールでございます」

 立ち上って大使が必死に挨拶しだしたのを全く無視してバルトは一直線に俺に向かって歩いてきた。


「ラフィー! 久しぶりだな!」

 俺に抱きついてきた。


 周りにいた侍従達がぎょっとしたのが見えた。


「何をいう。先日学園で会ったところではないか?」

「公式には初めてだ。この20年弱。帝国に遊びに来いと俺が何度も誘っても良い返事を一度も寄越したことがない貴様が来てくれて嬉しいぞ」

 バルトは笑って俺の背中を叩いてくれた。


「こちらが息子だ」

「剣聖殿、お久しぶりです。ブルクハルト・バイエルンです」

 皇太子が手を差し出してきた。


 えっ?

 俺は少し慌てたが、出された手を無視する訳にはいかない。

 普通はここは跪く所ではないのか?


「ラファエル・サンティーニです。お久しぶりです。皇太子殿下」

 俺は仕方なしに皇太子殿下の手を握りつつ頭を下げた。


「こちらが息子のエーベルハルトです。もっとも学園ではお会いになられているかな」

「はい」

 俺は頷いた。

 エーベルはここは自分の父の手前神妙にしていた。


「皇帝陛下」

俺がアンジェを紹介しようと声をかけると

「ラフィー、俺はバルトだ」

バルトが訂正してきた。


「しかし、陛下」

「俺は友には陛下呼びはされたくない」

「しかし、これは公式な場なのだろう?」

 俺が首を振ると

「何を言う。昔は皇宮の中でも俺は貴様からバルトと呼ばれていたぞ。今も貴様からはバルト以外で呼ばれても返事はせんからな」

 バルトは頑なだった。


「じゃあ、バルト、俺がお仕えするフランク王国のアンジェリーナ王女殿下だ」

 俺が再度アンジェリーナを皇帝一家に紹介する。


「初めまして、皇帝陛下始め皆様方。アンジエリーナ・フランクでございます」

 アンジエリーナが一同にカーテシーをした。

「ほう、母君のアンネによく似ているな」

 バルトは懐かしそうに言ってくれた。

「はい。よく言われます」

 アンジェリーナは笑って頷いた。


「よく来てくれた。まあ、席にかけてくれ」

 バルトが俺達に指示した。

 でも、席は二つしかないんだが……


「あのう、陛下。フランク王国大使ベルクールでございます」

 無視させていた大使が慌てて挨拶していた。


「うん? フランク王国の大使など誰か呼んだのか?」

 不思議そうにバルトが聞いていた。


「我が国の王女殿下をお招きされたとのことでお招きいたしました」

 侍従の一人が答えていた。


「そうか、では後ろにでも、立っていれば良かろう」

 平然とバルトは言い切ってくれた。

「しかし、フランク王国の大使殿を立たせるのはどうかと」

 侍従は慌てだしたが、

「俺はラフィーに会いたかったのだ。そのラフィーが連れてきたアンジェリーナは我が孫の婚約者だ。後はお付きの者だろう。後ろに立つのがあれなら別室に控えさせておけば良かろう」

 そう言うとねバルトは大使に手を振っていた。

 大使は真っ赤になって俺を睨んでいたが、慌てて出て行った。


「生意気な大使だな。ブルクハルト、二度とあの男は呼ばなくて良いぞ」

 バルトは言い切った。

「いや、我が国のことで迷惑をかけた」

 俺がバルトに謝るが、

「ふんっ、出来の悪い大使だ。俺も新年のパーティーの時に一度だけ話したことがあるが、あんな男をこの帝国に送ってくるとはダニエルも目が曇ったか?」

 俺はバルトに対して何も言えなかった。


「まあ、良い。エーベルハルト、アンジェリーナときちんと話すのは初めてだろう。二人して庭でも散歩してくればどうだ」 

 バルトがいきなりエーベルに提案していた。

「えっ、お祖父様。いきなりですか?」

「俺はラフィーと少し話したいこともある。この皇宮の庭園は他国に自慢できる物だ。少しは婚約者と意思疎通を図っても良かろう。どう思うブルクハルト」

「そうですな。そういう時間を取るのも婚約者としては当然の事ですな」

「判りました。では参ろう、アンジエリーナ嬢」

 エーベルが立ち上った。

 アンジェも立ち上って俺にすがるような目を向けてくる。

「では俺も」

「ラフィー。保護者がついていってどうする」

 ついていこうとした俺にバルトが呆れてくれた。


言われたらその通りだ。

俺はアンジェに対して大きく頷いた。

アンジェは一瞬恨めしそうに俺を見たが、

「エーベルハルト様。よろしくお願いします」

そう言うとエーベルについて出て行った。


いつもアンジェと一緒にいた俺は娘を嫁に出す父親はこんな感じなのかと少し寂しくなったのは秘密だ。





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