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40.王国の大使が皇宮で王女を馬鹿にしてくれましたが、ぐっと我慢しました

「うふふふふ」

アンジェは馬車の中ではとても機嫌が良かった。


「ラフィーにお姫様抱っこしてもらうの久しぶりだったわ」

 と、とても喜んでくれた。


 まあ、俺としてもアンジョが嬉しかったらそれで良いんだが、でも、バルトに怒られたエーベルがアンジェと俺を睨んでいたのが少し気になった。


 俺が今回アンジェについて学園に入学した主目的は婚約破棄断罪ルートをなんとしても阻止するためだ。

 でも、アンジェに対する態度がなっていないとソニックブレードを使ったのはやり過ぎだったかもしれない。

 エーベルくらいの年頃だと意固地になるとその後中々難しい。


 特に帝国の皇太子の第一皇子ならばお山の大将で今まで花や蝶だと大切に育てられたのだろう。いきなりガツンとやられてショックを受けたのかもしれない。

 これは良くない傾向だ。


 婚約破棄を回避するにはもっと二人が仲良くなるようにしないといけないのではないか?

 と思わないでもなかった。


 でも、皇子から反発を受けている俺がしゃしゃり出るのは良くなかろう。


 バルトの力を借りるのが一番だが、どうやって連絡しようか?


 相手は一応この国の皇帝陛下だ。

 俺が会いたいと頼んでも中々会えないだろう。

 こんなのだったらバルトが連れ去られる前に頼んでおけば良かったと俺は後悔した。



 しかし、俺が屋敷に帰るとなんと皇宮から明後日のお茶会の招待状が届いていた。

 さすが持つものは友だ。

 二日後とあまり時間はないが明日明後日は休みだ。

 なんとかなるだろう。


「ええええ! 皇宮のお茶会なんて、いきなり無理よ!」

 アンジェはいきなりのお茶会の招待に驚いていた。


「何をおっしゃっていらっしゃるのです、アンジェリーナ様。アンジェリーナはフランク王国の王女殿下です。招待された方は皇帝陛下になっておりますがおそらく婚約者のエーベルハルト様のお誘いのお茶会です。婚約者からのお茶会のお誘いは普通ではありませんか? 今まで呼ばれなかったのがおかしいのです」

 カミラがアンジェを叱っていた。


「そうですよ。姫様。高々皇宮のお茶会なんです。殿下とお茶を楽しまれてくれば問題はないでしょう」

 俺もカミラの横から口を出した


「でも……あんまり行きたくないのよね」

 乗り気でないアンジェを皆で強引に説き伏せるのは結構大変だった。

 最後は皇宮のお茶会が終わったら何でも一つ言うことを聞くと約束させられていた。


「これで二つだからね。絶対に私の頼み事聞いてもらうんだから」 

 アンジェはご機嫌だったが、何をさせられるんだろうか?

 俺は一抹の不安に駆られたんだが……



 そして、二日後、俺達は着飾らせたアンジェを乗せて皇宮に向かった。


「姫様、もの凄く可愛いです」

 着飾ったアンジェはとてもきれいでかわいらしかった。


 青いレースの星の刺繍を散りばめた凝ったドレスはこの屋敷に来た時にカミラがむ取り寄せた衣装の一つだ。

 こんなに早く使う時が来るとは思っていなかった。

 金髪のアンジェに青いドレスはよく似合っていた。


 俺が絶賛すると、

「そう、ラフィーがそこまで言ってくれるなら良いわ」

 ニコリとアンジェは笑ってくれた。

 俺は騎士の正装をさせられてアンジェを馬車までエスコートした。


「ラフィーもとても格好良いわよ。その服装」 

「お褒めいただき光栄です」

 俺は軽くアンジェに頭を下げた。



 アンジェはフランク王国の王女なのだから、本来ならば最低でも10騎くらいの騎士の護衛がいるのが普通なのだが、帝国に来たところでまだ騎士は雇っていなかった。

 まあ、俺とアンジェがいれば問題は無いと思うのだが、今後は少しずつ考えていかねばなるまい。



「さすが帝国の皇宮は大きいわね」

 丘の坂道を登る馬車の中からアンジェが感想を述べた。

 白く高い城壁で囲まれた皇宮は丘の上にそびえ立っていた。


 そうだ。帝国の皇宮は帝国の栄華を表している。

 フランク王国の王宮も大きかったが、皇宮はその倍くらいの広さがあった。


「フランク王国のアンジェリーナ様です」

 御者が門番に言うと、門衛が御者に指示してくれた。


 馬車が正門から中に入るとすぐに広大な馬車止まりがあった。

 中にいる騎士達が誘導してくれる。

 馬車はそのまま馬車止まりを通過して奥に案内される。


 他国からの国賓並みの扱いだ。


 そして、皇宮の主殿の前に馬車は横付けされた。


「宰相のマインブルクが来ている」

 俺はその出迎えてくれた相手を凝視した。

 アンジェも大きく目を見開いていた。

 まあ、隣の大国のフランク王国の王女が訪問してきたのだから、当然と言えばそうなのだが、帝国は大国で普通はこんなところに宰相自ら迎えに来るのは国王が訪問した時くらいのはずだ。

 そもそもフランク王国を出発するときはほとんど見送りもいなかった。

 大半は送り狼になってくれたし……

 騎士が馬車の扉を開けてくれたので、まず、俺が降りて続いてアンジェの手を取って下ろす。

「我が帝国にようこそおいで下されました。剣聖ラファエル・サンティーニ様、アンジェリーナ・フランク様。歓迎いたしますぞ」

「宰相マインブルク様。今回はお招きいただいてありがとうございます」

「マインブルク。俺は今回は王女殿下の付き添いだ。俺の歓迎は別に良いぞ」

 俺が宰相に言うと、

「何をおっしゃるのです。我が帝国は魔王を討伐された剣聖様を再びお迎えすることが出来てこれほど嬉しいことはございません」

「それは年いった者だけがそう思ってくれているんだろう。学園では還暦のじじいとして邪魔者扱いだからな」

「若い一部の不届き者が考え違いをしているみたいで申し訳ありません」

 宰相は苦笑いして謝ってくれたが、年月経てば昔は忘れ去られるのも世の理だ。

「さ、陛下がお待ちですのでこちらへどうぞ」

 俺達は宰相に案内で皇宮の奥の部屋に案内された。

「では後ほど」

 入り口で宰相とは別れる。


「こちらへ」

 俺達を見て少し戸惑った侍従が中に案内してくれた。


 広い豪華な応接室の中には帝国側の席が3っつ、そして、こちら側には一つの席のみが空いていた。

 その一つの椅子を侍従が引く。


 もう一つの席にはフランク王国の貴族が一人座っていた。

 あの顔はどこかで見た顔だが、おそらくフランク王国からこの帝国に派遣されている大使なんだろう。

 その男が俺を見てにやりと笑ってくれた。


「これは自称剣聖のラファエル殿ではありませんか?」

 座ったままで男は馬鹿にしてくれた。

 あのどうしようもない宿舎を手配してくれた大使か?

 俺は思うところもあったが、ここは帝国だ。


「貴方は誰なの?」

 俺に代わってきつい声でアンジェが尋ねていた。


「私の事も知らないのですか? さすが帝国で悪役令嬢と噂されているアンジエリーナ様ですな」

 人を食ったような笑みを浮かべてくれた。

 俺はむかっとした。

 ただここは帝国の皇宮だ。そんなところで内輪もめをする訳にはいかなかった。

 俺はぐっと我慢することにした。




自国の大使に馬鹿にされましたが、ここは我慢する二人

いつまで我慢出来るか……

次話をお楽しみに

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