38.聖女の独り言 悪役令嬢に絶対に仕返しをしてやると心に決めました
生意気な悪役令嬢アンジェリーナの護衛をぎゃふんと言わしてやろうと私は決めた。
でも、どうしよう?
どのみち初老の護衛騎士だ。
還暦の現役の騎士なんて聞いたことがない。
もうよぼよぼで剣も碌に握れないはずだ。
騎士というのも名前だけで、実は伴っていないはず。
誰か剣術の得意な奴に決闘か何かさせてやっつけるのが良いかも。
私はそう思いついた。
誰にやらそうか?
確か殿下の側近の侯爵家のランツフート様は剣術は得意だと言っていた。
それに頼んでみよう。
少しおだてたら喜んでやってくれるだろう。
私はそう思ったのよ。
でも、その前にEクラスの男爵令息が決闘してくれることになった。
なんて良い後輩なの。
悪役令嬢の護衛騎士なんて一瞬で倒してくれるだろう。
私はエーベル様とその現場を見学することにしたのよ。
悪役令嬢にこれ見よがしにエーベル様の腕に胸を押しつけて、私とエーベル様の真実の愛を見せつけてやったわ。
でも、悪役令嬢はこちらの事なんて全く気にしていないみたいだった。
必死に護衛騎士を応援しているんだけど……
おかしいんじゃないの?
普通は自分の婚約者が他の女とイチャイチャしていたら怒るだろう?
嫉妬に燃え広がった怒りを私に向けてくるはずなのに、全く無視って何よ!
何かエーベル様も少し不機嫌そうだ。
いやいやいやいや、単にプライド高いから無視している振りをしているだけかもしれない。
私は悪役令嬢にない豊満な胸をここぞとばかりにエーベル様の腕に擦り付けてやったのよ。
エーベル様は絶対に鼻の下を伸ばしていたんだと思う。
私達がよそ見をしていたときだ。
「危ない!」
誰かの声が聞こえた。
「「えっ?」」
私とエーベル様が顔を上げたときだ。
頭上に黒い者が覆い被さってきたのまでは覚えている。
ダシーン!
凄まじい衝撃を受けて何か生暖かい物を感じたのまでは覚えていた。
次の瞬間私は意識を失ってしまったのだ。
私が気付いた時は医務室にいた。
制服がなくて下着姿だった。
何でも、フッセン男爵令息が失禁したので、汚物が私とエーベル様の頭上から降りかかったのだとか……
汚物って何よ!
私には信じられなかった。
絶対に仕返ししてやる。
私は親しい伯爵令嬢を指嗾したのだ
その令嬢の前で泣き真似した。
「もうこんな悲惨な目にあってお嫁に行けない」と
「まあ、聖女ミーナ様にそんなことするなんて許せませんわ」
憤った令嬢達は悪役令嬢アンジェリーナの席を池に沈めてくれたのよ。
翌日私は悪役令嬢が来るのを今か今かと待ち構えていた。
でも、悪役令嬢に教えてあげようとしたのに、悪役令嬢達は私を無視して通り過ぎてくれたんだけど……ちょっと待てよ!
何ヒロインの私を無視してくれているのよ!
まあ、良いわ。
机と椅子がなくて狼狽する悪役令嬢を見てやろうと私はその教室に急いだのよ。
案の定悪役令嬢は椅子がないので慌てていた。
私はそれ見たことか言ったついでに
「ふんっ、私ではありませんわ。悪役令嬢に虐められて悲観に悲しむ私の事を憂いた善意の方々が何かされたようですけれど……」
失敗したことに指嗾したと話してしまったのだ。
「マイヤー先生ー! ミーナさんが私の机と椅子を隠してくれたそうです!」
悪役令嬢がフランク王国から着いてきた教師に言いつけてくれた。
「アンジェリーナさんの机と椅子を隠したというのはどういう事ですか?」
「いえ、それは濡れ衣です」
私は誤魔化そうとしたのに、教師は私を見逃してくれなかった。
「私は聖女ミーナなのよ」
跪きなさいよ!
そう叫んだのに、この女はびくともしなかった。
「判りました。ミーナさん。私と一緒に職員室へ」
「いや、そんな、先生。これは悪役令嬢のアンジェリーナが企てた陰謀です」
ミーナは逃げだそうと必死に叫び出した。
「ミーナさん。後輩とは言え、フランク王国からの留学生のアンジェリーナさんに対してあまりにもし失礼です。愚痴愚痴言っていないでさっさときなさい」
私はそのまま連行されたのだ。
もっとも職員室では教会につてを持つ教師や第一皇子派の教師も多くて、
「マイヤー君。君ね。聖女様はそんな事はしていないと言われているではないか」
「そうですわ。本当に皇帝陛下の意向をすぐに出したら良いという者ではありませんわ」
「聖女様よりもその悪役令嬢いや、留学生をまず疑うべきではありません事?」
皆に援護されて私は無罪放免解放されたのよ。
でも、私は心に誓ったのよ。
悪役令嬢アンジェリーナめ!
この恨みは絶対に晴らしてやると。
エーベル様が騎士団長を呼んでいるというので、私もオリエンテーションの題目に聖魔術のコーナーを入れたのよ。
フンッ、いい気になっている悪役令嬢アンジェリーナを絶対にギャフンと言わしてあげるんだから。




