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37.しつこい部活の勧誘から王女をお姫様抱っこして逃げ出しました

 結局バルトの奴はその日の午前中一杯いなくても良いのにいてくれた。


 最後は先生達に泣き込まれた学園長が宰相を呼んで王宮に強制送還されていたが……


「ラフィー、必ず皇宮に来いよ!」

 と連行される前に叫んでいたが、俺は絶対にそんなところに行きたくなかった。


「さすがラフィー様は伝説の剣聖様ですね。皇帝陛下がお忍びでお会いにいらっしゃるくらいなんですから」

 イレーネが呆れていたが、

「まあ、あいつとは五年くらい一緒にパーティーを組んでいたからな」

 俺が頷くと、

「さすが剣聖ラフィー様ですね」

「私ますます尊敬しました」

 ニコとヒルデがキラキラした目で俺を見てくれるんだが……


「そうよ。ラフィーはそれだけ凄いんだから」

 横で自分のことのように自慢してくれるアンジェがいるんだが……


「何を言っているんです。姫様。姫様こそ、その伝説の魔王退治のパーティーの聖女様と魔術師から生まれたお子様ではないですか」

「ふんッ、その魔術師は最低の男だけどね」

 アンジェは父の国王の事をぼろくそに言っていたが……


「でも、第一皇子殿下は陛下に怒られていたわね。どうなるのかしら、真実の愛は?」

 イレーネがアンジェを見て言いだした。


 あの後、エーベルは婚約者のいる身で他の女に抱き付かれるとは何事だとバルトに怒られていた。

 エーベルは不満そうにしていたが……


「えっ、私は別にどうでも良いけれど」

「いやいや、殿下は姫様のお相手ではありませんか」

 俺としてはエーベルはアンジェのお相手なのだ。上手くいってくれたほうが良い。

 この帝国の王妃になればアンジェの身も安泰だろう。

 なんとしても皇子と聖女の仲を引き裂かねば!

 そうすれば、アンジェがサマーパーティーで断罪されることもなければ、婚約破棄されることもないのだ。



 退屈な6限目の授業がやっと終わった。

「はあ、やっと終わったわ。じゃあ、ラフィー帰りましょうよ」

「そうだな」

 俺達が立ち上った時だ。


「ラフィー様!」

 大柄な騎士志望と思われる上級生の男が教室に入ってきた。


「是非とも我が剣術部に入部いただきたい」

 男子生徒は俺に頭を下げてきた。

「ちょっと待ったー!」

 そこに別の男が入ってきた。

「ラフィー様は是非とも我が騎士部に!」

「いや、ラフィー様は是非とも我が合戦部に!」

 何でも学園には剣に特化した剣術部と騎馬の扱いも兼ねた騎士部、それに集団でミリタリーゲームをする合戦部の3っつの部があるらしかった。

 それらが俺の勧誘を始めてくれた。


「絶対に剣聖と言われるラフィー様は我が剣術部がふさわしい!」

「何を言う。それなら歴史ある我が騎士部に!」

「剣聖様の力はそのようなちまちましたことに使うのではなくて、大局を見る目も養われる我が合戦部に」

「合戦部などまだ出来て10年ほどの新興の部だろうが!」

「何を言う。人数は騎士部より多いぞ!」

「潰れかけの騎士部など剣術部の方が良いに決まっている」

「剣術など剣聖様の得るものがなかろう。その点合戦部は本当に戦術を練って戦うのだ。剣聖様にも新たな視点でプラスになるに違いない」

 皆必死で言い争いをしてくれた。


「どうするの、ラフィー?」

 アンジェがあきれて俺を見てくれたが、

「俺は姫様の護衛だからな。姫様が興味のないのならば断る」

 俺は言い切った。


「じゃあ帰りましょう」

「そんな」

「「「剣聖様!」」」

 俺を止めようとした生徒達に


「すまん、邪魔だ」

 俺は男達を軽く退けていた。


「じゃあな!」


「「「剣聖様!」」」

 俺は男達をかき分けるとアンジェと一緒に教室を出た。


「アンジェリーナ様!」

 しかし、今度はアンジェが捕まったのだ。


「是非とも我が魔術部に」

「いえ、アンジェリーナ様は是非とも我が魔術研究部に」

「いえいえ、皇室研究部に」

「我が手芸部に」

 俺よりもアンジェの方が勧誘は凄まじかった。


 魔術関係も実践を重んじる魔術部と魔術を研究する魔術研究部があるらしい。皇室研究部なる訳のわからない部まであるのかと俺は感心した。

 でも感心していられるのは他人事だからだ。

「剣聖様、是非とも剣術部に」

「いや、騎士部に」

「貴様ら剣聖様は我が合戦部に決まっておる」

 俺も騎士関連の部活に囲まれてしまった。

「ごめん、私はどの部にも入るつもりはないから」

「そんなこと言わずに、アンジェリーナ様、我が魔術部に」

「何を言うの? 魔術研究部に決まっているでしょ」

「淑女のたしなみの手芸部に」

「いやいや皇室に入られるのだから皇室研究部に」

 俺達は完全に勧誘の奴らに囲まれてしまった。

「ラフィー、助けて!」

 こうなれば仕方がない。

 俺はさっとアンジェを後ろから抱き上げてお姫様抱っこすると、アンジェが俺の首に手を回してくれた。

「行きますよ」

「きゃっ!」

 アンジェを抱き上げたまま、俺は軽く廊下の窓から外に飛び出した。

 アンジェがギュッと俺にに抱きつく。


「ちょっと、アンジェリーナ様!」

「剣聖様!」

 俺達を呼ぶ勧誘の部員達を後にして、そのまま俺は馬車に向かって駆け出した。




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