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35.聖女の独り言 胸の大きさで悪役令嬢に圧勝しました

 私は15才の終わりに麻疹にかかり高熱を発して三日間寝込んだの。


 そして、その時に前世の記憶を取り戻した。


 前世、私は山田美奈として普通にOLしていた。


 そこにいたキモオタじじいの餅田は単純で、少し褒めたらすぐに何でも奢ってくれた。

 職場のお菓子やデザートなんて普通で、並ばないと買えない有名菓子店のケーキとかもたまに買ってきてくれた。私からしたらおやつ係だった。財布の厳しくなった給料日前なんて皆の飲み会のお財布として重宝させてもらった。


「そんな訳無いじゃん。あんなキモオタじじいなんて眼中にないわ。飲み会の金づるになるからヨイショしているだけよ。60なのに、40に見えるって言ってあげたら喜んでいたけど、そんな訳無いのにね」

 飲み会の席で餅田が席を外した隙に笑って話したその言葉を餅田が聞いているとは思わなかった。

 それもそれを聞いてショックで心臓麻痺を起して亡くなるなんて思ってもいなかったのだ。


 それは私にとってもショックだった。何しろ目の前で死なれたんだから……


「ねえねえ、聞いた? 美奈が餅田さんに酷い事言って心臓麻痺起させたの」

「聞いた聞いた。あれだけお菓子とかたくさん奢ってもらっておきながら面と向かってキモオタじじいなんて興味ないって言うなんて」

「餅田さん、本当にいい人だったのに、美奈って人間じゃないよね」

「本当に!」


 餅田が死んでくれたお陰で、私は周りから白い目で見られた。


「美奈、お前があんなこと言うなんて思わなかったよ」

 その時に一緒に笑っていた寺谷まで言われる始末だ。

 お前も一緒に笑っていただろうが!

 私は叫びたかった。


 なんで、なんで私がそこまで言われないといけないのよ。

 本当に信じられない。ちょっと優しい言葉をかけておごってもらっていただけじゃない。私は何も悪くないわ。まあ、聞かれていると思わずにあんなこと言った私も少し悪いかもしれないけれど……

 はっとしたときは遅かった。横断歩道を赤信号で渡っていた私は気付いたらトラックが突っ込んでくるところだった。後の記憶はなかった。

 おそらくその後亡くなったんだ思う。

 絶対に残った奴らは天罰が下ったんだとか噂したんだろうな……


 本当に前世は最悪だった。



 気付いたら今世はミーナ・プリンツとして平民の女の子になっていた。


 平民か……普通は王女様とか公爵令嬢とか高位貴族の令嬢に生まれ変わりたかったなとふと思った。

 我が家はとても貧しかった。

 前世の行いが悪かったからか……私は少しがっかりした。


 でも、鏡の自分の顔を見てはっとしたのだ。

 そこにはピンク色の髪のとてつもない美少女がいた。


 そして、それはよく見た顔だった。

 誰だっけ?


「ミーナ・プリンツ……ああああ!『バイエルンに咲くピンクの妖精』のヒロインのミーナだ!」

 私は神様に感謝したくなった。酷い目にあったら良いこともあるのよ。


 『バイエルンに咲くピンクの妖精』は私が何度もやりこんだ乙女ゲームだった。


 ヒロインのミーナは15の時に高熱を発して聖魔術を発現させるのよ。でも、変なことに利用されるんじゃないかと心配した両親にその事を周りに言わないようにと釘を刺されるが、17歳の終わりに近くで大火事が起こって負傷者が沢山出たときに心の優しいミーナは癒やし魔術で皆を治すの。

 それが噂になってすぐに教会に聖女として迎えられて、18の年に学園の3年生として迎えられて、そこで王子様のエーベル様と出会うのよ。そして、2人は恋に落ちるの。エーベル様の婚約者で悪役令嬢のアンジェリーナに虐められるけれどそれに耐えて2人は結ばれるのよ。


 学園に入れるまで残り2年と少し。

 でも、このごみごみした下町で3年間も耐えられない。

 この下町の匂いも嫌だ。

 何しろありとあらゆる所に人間の汚物があるのだ。

 皆普通に外で排便するし、お風呂なんて入らない。

 たまに水で拭う程度だ。


 私は皆の体臭に耐えられなかった。


 こんな下町なんて一分一秒もいたくなかった。


 私はこの世界からおさらばするためにどうしたら良いか考えた。

 そして、教会のやっている介護院に行くと、そこで病に伏せっている人達に聖魔術で癒やしをかけてあげたのよ。

 すぐに司祭が飛んで来て、私はあっという間に帝国の教会の総本山大聖堂に聖女様として召還されたのよ。ここまで育ててくれた父や母と別れるのは少し寂しかったけれど、あの匂いとおさらばできると思うと本当にほっとしたわ。


 前世では最後は辛かったけれど、神様は私に辛い目にあったお詫びにご褒美をくれたのだ。

 まさか本当にゲームの世界にヒロインとして転生できるなんて思ってもいなかった。 



 そうしてゲームでは学園に通い出すのは3年生の始めだったのを、一年生の始めから通うことにしたのだ。

 私はエーベル様と同じ1年A組だった。

 見目麗しいエーベル様の事が私は昔から大好きだった。

 当然今世でも好きになった。

 本来は学園の入学式での前のぶつかりイベントでエイベル様に出会って恋するのだけど、そんなイベントなくてもゲーム補正なのかすぐにエイベル様とは仲良くなった。

 そう、あっという間だった。


 そして、私はエーベル様に悪役令嬢アンジェリーナに虐められて破落戸どもに襲わせられた予知夢を見たとエーベル様に訴えたのよ。


 最初は半信半疑だったエーベル様もその取り巻き達も、徐々に私の話を徐々に信じてくれるようになった。入学の前には完全に悪役令嬢アンジェリーナの噂は学園中で持ちきりになった。


 これで取りあえずの目的は達成できた。

 この後はアンジエリーナが如何に頑張ろうが、エーベル様の気持ちがアンジェリーナに行くことはないだろう。

 私に対して当然エーベル様に近すぎると注意してくればしめたものだ。

 私がそれを悪役令嬢に虐められたと言いつければ良いだけなのだから。


 これで一学期末のサマーパーティーで婚約破棄断罪イベントは決定だ。

 私はほくそ笑んだのよ。



 でも、いくら待っても悪役令嬢アンジェリーナは学園にやって来なかった。

 ひょっとして、悪役令嬢キャンペーンが効き過ぎたのかしら?

 やらなくても良いのにエーベル様は悪役令嬢を国境で足止めしようとしていたし……


 学園に来て私を虐めてくれないと婚約破棄断罪には入れないじゃない!


 婚約破棄の断罪が行われないと、私とエーベル様の婚約にケチが付きかねない。


 実際に学園内外に悪役令嬢アンジェリーナの悪役令嬢ぶりを示さないと……

 そして、それに対しての私の健気さをアピールできないのはまずいわ。


 私はとても危惧したのだけど、なんと入学式の前日に悪役令嬢がやっと学園にやって来たのよ。

 まあ、なんとか学園に無事に入学してくれて私はほっとしたわ。


 でも、その悪役令嬢が還暦のじじいを護衛騎士として連れてきているなんて思ってもいなかった。


 還暦のじじいってきもおたじじいの餅田みたいじゃない!


 私は前世の思い出したくない記憶を思い出して嫌な思いになった。


 そのじじいは学園生として入学してきたんだけど、一体全体どうやって乙女ゲームの学園に還暦のじじいが入学するのよ?


 そんなの見たこともないし聞いたこともない。

 絶対に変だ。


 ゲーム上でラファエルなんて生徒はいなかったしいろんな画面にも一度も出てこなかった。

 一体全体どういう事なの?


 私は呆れて物も言えなかったわ。



 そして、学園の入学式で私は開いた口が塞がらなかったの。


 なんと、悪役令嬢アンジェリーナがその初老のじじい騎士に抱きついていたのよ。


 信じられない!


 それも婚約者のエーベル様の前でよ。


 もうゲームをやる前から私は勝ったと思ったわ。


「まあ、さすが悪役令嬢アンジェリーナ。いきなり初老の男を引っかけて抱き付いていますの?」

 私は軽蔑して言ってやったのだ。


「何を言っているのよ。あなたこそ婚約者のいる男に、でかい胸を押しつけて歩くなんて、本当に噂通りの破廉恥令嬢よね」

 この悪役令嬢は自分のことは棚に上げて、私の事を、この慈悲深い聖女様として有名な私の事を破廉恥令嬢って言ってくれたのよ!


 信じられないわ。


 それに信じられないことにアンジェリーナは私とエーベル様を見ても、平然として初老の男にくっついて離れなかったんだけど、普通は婚約者を気にして離れるわよね?


 なのに、何故かエーベル様が怒った顔でアンジェリーナを睨んでいるんだけど……


 しまったわ。

 これってアンジェリーナがエーベル様に嫉妬心を起こさせるためにわざとやっているの?


 エーベル様がアンジェリーナに怒りだしたんだけど……


 ちょっとエーベル様。貴方が見ていいの私だけよ!


 私は豊満な胸をエーベル様にこれ見よがしに押しつけたのよ。


 それを見たアンジェリーナの悔しそうな顔ったらなかったわ。

 ざまーみろよ。


 エーベル様も鼻の下を伸ばしているし……


 アンジェリーナ、あんたのない胸では絶対に私に勝てないのよ!

 私は鼻息荒く見下してやったわ。















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