32.怒りのあまりソニックブレードで皇子もろともむかつく奴らを一掃しました
「キャーーーー!」
「アンジェ!」
俺は必死にアンジェの前に出ようとしたが、間に合わなかった。
最悪だ。
エーベルが放ったというか反射したアンジェの雷撃がアンジェを直撃したのだ。
アンジェが雷撃で光る。
悲鳴を上げているアンジェに駆け寄ったときはもう、光は消えていた。
アンジェはスローモーションのようにゆっくりと倒れてきた。
俺は慌ててそのアンジェを抱き留めた。
「アンジェ! 大丈夫か!」
「良かった、ラフィーが無事で……」
そう話すとアンジェはニコリとして目を瞑ってくれた。
俺の目の前で!
俺は真っ青になった。
「アンジェ!」
俺は叫んでいた。
アンジェが自分の前からいなくなったらと思うとぞっとした。
俺の前任者のラファエルはアンヌが死んでからその娘のアンジェリーナを育てるのを生きがいにしていた。いや、育てるのに命をかけていた。そんなアンジェがいなくなったら、生きていけなかっただろう。
ゲームではラファエルなんて全く出てこなかった。カスパルに木っ端みじんにやられてショックで心臓発作を起してなくなったのかもしれない。少なくとも学園に来てはいなかった。
そうか、アンジェが婚約破棄されたと知ったショックでなくなったのかもしれない。もし元気でいたのなら討伐に来たエーベルとミーナを絶対に叩き潰していた。
魔王アンジェリーナが世界を支配したのは確実なのだ。
だってそのラファエルの体を引き継いだ俺でも判るのだ。
ラファエルは今でも相当強力な戦士だと。
まだこの体に慣れていない俺でもそう思うほどに強かった。
もし完全にラファエルの力が使えるようになれば凄まじい力になるはずだった。
そして、今回はちゃんと学園に来てアンジェの傍にいるのだ。
そして、どれだけアンジェを俺自身が大切に思っていたか今、理解した。
当然、前任者が生まれたときからアンジェを大切に大切に育ててきたその意志を俺は継いでいた。
そして、俺もまたこの一ヶ月でアンジェを大切に思うようになっていたのだ。
アンジェは眠れないと言っては俺の布団に潜り込んできたし、野宿したときは俺にくっついて寝てくれた。
豊かな金の髪を持つ大きな青い瞳の美少女だった。
今まで女にもてたことなどない俺にも、優しく接してくれる美少女なのだ。
俺をとても大切にしてくれる存在だ。
そう、俺にとってまさに女神だった。
鎧を纏っているがアンジェの雷撃を受けたら結構体にも負担がかかっているはずだ。
アンジェのきれいな肌が、焼け焦げているだろう!
こんな優しい女神のアンジェを傷つた輩はどんなことをしてでも叩き潰してやる。
例えその婚約者であっても許すわけにはいかなかった。
「アンジェを傷つけた奴は叩き潰してやる」
俺はエーベルを睨み付けた。
エーベルは何故か呆然としていたが、俺の怒りの視線を浴びるとはっとして正気に戻ったようだ。
「ふんっ年寄りの護衛が何か出来るのか?」
つまらなそうにエーベルが言い放ってくれた。
こいつは馬鹿だ。
ここは土下座して許しを請うところだ。
怒り狂ったラファエルが本気を出せばどうなるか思い知らしてやる。
もう許さない!
俺は完全にぷっつん切れた。
そして、ぷっつん切れれば切れるほどに神経が研ぎ澄まされてきた。
敵は20名。俺は瞬時に位置を把握した。
「ラフィー様。本気は駄目ですよ」
後ろからニコが余計な事を言い出してくれたが、
「そうだな、多少は手加減してやろう」
「多少ですか?」
とても心配そうにニコが見てくれたが、全治三ヶ月くらい問題ないだろう。
「おいおい、じいさん。何をするつもりだ?」
「顔色が悪いぞ!」
「そのまま心臓発作で倒れるんじゃないか?」
皇子の側近が俺をあざ笑ってくれた。
愚か者共目。泣いて許しを請えば多少は手加減をしてやったが、する必要はなさそうだ。
「愚かな貴様らに究極の剣技がどのようなものであるか見せてやろう」
俺は剣を抜き放った。
「はははは、それは楽しみだな。しかし、女を抱いて何が出来る」
「本当だぜ。そんな顔して倒れても知らないぞ」
「ふんっ、倒れるのは貴様等だ」
「ラフィー様!」
ニコが止めようとしたが、俺は止めるつもりなんて毛頭なかった。
片手てでアンジェを抱いたまま、剣を持った右手を軽く振ってやったのだ。
そう、軽くだ。
その瞬間、剣が俺の目の前から消えた。
そう見えたはずだ。
瞬時に一閃させた剣から凄まじい衝撃波が飛び出したのだ。
「そんなので何が……ギャーーーーーー!」
男が絶叫した。
俺はソニックブレードを発現させたのだ。
音速を超えるスピードで剣を一振りした。
一瞬だった。
20人の愚か者は瞬時に吹っ飛んで温室にかけられた障壁に激突、その障壁を突き抜けて、ガラスに突っ込んでいた。
ドカーン!
ガシャン!
ガンガラカッシャン!
凄まじい音がして 多くのガラスが弾け飛んでいた。
俺の目の前にあった草や木も全て吹き飛ばされて消滅していた。
目の前には少し焼けただれた荒野が広がっているだけだった。




