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23.朝から王女に食べさせて学園に遅刻しそうになったら、王女の席が無くなっていました

 翌朝は久しぶりに早朝に目が覚めた。

 まあ一昨日までは旅していたから起きても準備で朝から忙しかったし、昨日は入学式だったから、朝から制服あわせとか色々あって、起きたと思ったらもう準備の時間だった。


 今日はその点、昨日と違ってまだ余裕があった。


 俺はせっかくなので中庭に出て素振りを始めた。


 ビュンビュン!


 俺自身何回か剣を交えていたので、やっと剣が体になじんできていた。

 素振りすることで剣の感覚が戻ってきた。


 もっとも前の宿主のラファエルの感覚だったが……


 何しろラファエルは剣聖だ。


 そのラファエルの剣術が俺の物になったのは、俺にとってはとても嬉しかった。



 素振りをしながら敵の動きを色々想定して剣を振る。


 それにしても、こちらに転生してから一ヶ月あまり、よくここまでやってこれた。


 まあ、昨日は俺が全く悪くないのに反省文を書かされたが……


 それに、そもそも入学式で、編入してきたミーナとエーベルが出会うはずが、既に今現在親しくなっているし完全に恋人同士という感じだった。

 俺のアンジェがエーベルの婚約者であるにも関わらずだ。


 挙げ句の果てには聖女のミーナはアンジェの事を悪役令嬢と呼び出す始末だ。

 その噂が既に在校生には流れているらしい。

 それを考えると俺は頭が痛くなってきた。

 やはり聖女は転生者と見た方が良いだろう。


 このまま行くと確実にアンジェは婚約破棄されて、下手したら修道院送りになって、最悪は魔王になりエーベルらに討伐されてしまう。


 それだけは何としても防がないといけなかった。

 もう少ししたらバルトにアンジェとエーベルの仲立ちをお願いしに行こうか?

 俺が考えていた時だ。


 その俺目がけて殺気を感じた。次の瞬間、飛んで来た物を木刀で跳ね飛ばした。

 それは大きめの石だった。


「誰だ!」

 俺が叫ぼうとしたときだ。


「酷い! 私を起こさずに朝練するなんて!」

 怒ろうとした俺はこちらに走ってくる寝巻き姿のままのアンジェを見て唖然とした。


「姫様! なんて格好しているんですか!」

 俺が怒ると、慌てて後ろからカミラが駆けてくる。

「アンジェリーナ様。そのような格好で邸内を走ってはいけません!」

 カミラに怒られていた。


「だって、ラフィーが私に黙って朝練しているんだもの!」

 アンジェが怒って俺を睨んでくるんだが……


「姫様、お待ちしていますからすぐに着替えてきて下さい」

「ラフィー! 本当だからね。私が来るまでは素振り禁止よ」

「判りましたから」

「絶対だからね」

 渋々カミラ達に連行されて行くアンジェの格好をチラリと見てその姿に俺は赤くなった。

 なんかますますアンジェは女らしくなっているんだが……このアンジェを見て悪役令嬢と言える奴らはどうかしているんじやないだろうか?


 そのあと現れたアンジェはとても不機嫌そうだった。

 怒ったアンジェも可愛い!


 まあ、俺がアンジェを起こさなかったからだと怒っているんだが、別に起こせとも言われていないのに、起こさなかったと怒られるのは理不尽だ。


 まあ、往々にしてこういうことがアンジェにはあるのだが……


 簡単な朝練をした後で、朝食になった。


「ラフィー、ご飯!」

 そして、こういう時ほどアンジェは我が儘になるというか、幼稚化するというのは、何故なんだろう?


 朝食の席で俺に向かって口を開けてくれるのだ。


 仕方なしに俺はヨーグルトをすくってアンジェの口の中に入れてやった。


「美味しい!」

 アンジェの気分が少し直る。

 その笑顔が可愛くて俺は仕方なしに、またスプーンにすくう。


 でも、何故カミラは見ているだけでアンジェを注意しないんだろう?

 普通は侍女が注意するはずだ。

 でも、カミラは少し頭を押えただけだった。


 まだ、カミラはアンジェに慣れていないからか?

 いや、マイヤーのいる頃からカミラはアンジェ付きの侍女だった……


「もっとラフィー!」

 少し機嫌の直ったアンジェの期待に応えるべく、

「はいはい」

 俺は仕方なしにもっと大盛りにしてアンジェの口の中に小まめにスプーンを運んだのだ。



 そんなこんなしていたら、学園に行くのが遅くなってしまった。


 ギリギリで学園に着いたので、慌てて馬車を降りる。


「姫様。急がないと」

「本当に誰かが遅いから」

「……」

 いや、絶対にアンジェが自分で食べないからだと思う。

 そう言いたかったが、俺は懸命にも口をつぐんでいた。


 そのまま、急いで教室に向かう。



「遅いわよ。悪役令嬢アンジェリーナ! 昨日はよくも……」

 でも、その途中の渡り廊下で仁王立ちしていたピンク頭のミーナがいた。


「ゴメン、今日は時間が無くて」

「無視だ、無視!」

 俺達は何か叫びたそうなミーナを無視した。


「ちょっと、あなた達、人の話を聞きなさいよ……」

 叫んでいるミーナを全く無視して通り過ぎようとする。


「ちょっと何を無視してくれているのよ。話を聞かないと後悔するわよ!」

 何かミーナが叫んでくれているが、今止まって遅刻してマイヤーに怒られる方が大変だろうと俺達は無視して駆け抜けた。



 一年E組の教室は微妙に遠い。


 やはり点数の低いクラスは不遇な場所が宛がわれるようだ。

 一年Eクラスの教室は大半のクラスの入っている新館の中では無くて、その奥の旧館の倉庫の隣に一つだけぽつんとあった。


 本当に何故こんな遠くに作ったんだと呆れていたが、遅刻しそうなときは本当に大変だ。

 食堂も体育の脱衣室もここからは遠い。唯一近いのは倉庫だけだった。


 俺達はなんとかギリギリで教室にたどり着いた。


「良かった。まだ大丈夫よ!」

 アンジェがニコッと笑って俺を見た。


 マイーヤはまだ来ていない。

 俺はほっとした。


 そして、席に着こうとしたときだ。


「あれ? 私の席が無いわ」

「えっ?」

 俺が慌ててアンジェの方を見ると確かに席が一つない。アンジェの座席だけがなかった。


「遅いですわ!」

 アンジェの前の席のイレーネがこちらに来て注意してきた。

「イレーネ。アンジェの席は?」

「それが私が来たときは既になくて、ニコラウスやヒルデが探してくれているんですけど、見つからなくて」

 イレーネが首を振ってくれた。


 その時だ。がらりと廊下の窓が開けられた。

 そして、そこには喜色を浮かべたミーナがいた。


「ふんっ、見てご覧なさい! 私の言うことを聞かないからこうなるのよ!」

 自慢げにミーナが言い切ってくれた。


「えっ、ということは貴方が私の椅子をどこかにやったの?」

 むっとしてアンジェがミーナを睨み付けていた。


「ふんっ、私ではありませんわ。悪役令嬢に虐められて悲観に悲しむ私の事を憂いた善意の方々が何かされたようですけれど……」

 嬉しそうにミーナが教えてくれた。


「で、その善意の人々はどこにいるの?」

「そんなの私が教える訳はないでしょう」

 毅然とした態度でミーナが首を振った。


「マイヤー先生ー! ミーナさんが私の机と椅子を隠してくれたそうです!」

 アンジェがいきなり叫び出してミーナはぎょっとした。

 そのミーナの後ろにマイヤーが立っていたのだ。


「ミーナさん。授業が始まっているのに、何故貴方はここにいるのです?」

「いえ、それは……」

 慌てて逃げだそうとしたが、マイヤーの前では逃げようもなかった。


「というか、アンジェリーナさんの机と椅子を隠したというのはどういう事ですか?」

「いえ、それは濡れ衣です」

 ミーナは誤魔化そうとしたが、アンジェとマイヤーに挟まれて、分が悪そうだ。


「今、善意人達が私の机と椅子を隠したのを知っているとミーナさんははっきりおっしゃいました」

 アンジェが畳みかける。


「いえ、そんな事は……」

「誰がやったのよって聞いたら、私が教えるはずはないでしょうとはっきりおっしゃいました。ミーナさんは絶対に知っていると思います」

 必死に誤魔化そうとするミーナをアンジェは逃さなかった。


「私は聖女ミーナなのよ」

 そう叫んで周りに助けを求めるがここは新入生の一年E組なのだ。悪役令嬢伝説が浸透していない。


 昨日俺達に逆らったオスカーが俺にボコボコにされたのを知っているのか誰もミーナを助けようとしなかった。


「それがどうしたのよ? 聖女なら悪いことをしても許されるの?」

アンジェがミーナを睨み付けた。


「判りました。ミーナさん。私と一緒に職員室へ」

「いや、そんな、先生。これは悪役令嬢のアンジェリーナが企てた陰謀です」

 ミーナは逃げだそうと必死に叫び出した。


「ミーナさん。後輩とは言え、フランク王国からの留学生のアンジェリーナさんに対してあまりにもし失礼です。愚痴愚痴言っていないでさっさときなさい」

 その後ミーナはそのままマイヤーに職員室に連行されて行ったのだ。




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― 新着の感想 ―
悪役令嬢のアンジェリーナが企てた陰謀です。 って、自分の机を自分が隠す陰謀ってなんだろう(; ̄Д ̄)?
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