音楽家たち
俺の習い事は多岐にわたっている。
母からの茶道の教えは、水屋仕事など含めてほぼ毎日ある。
月・水二回のそろばん教室。水曜日はもう一つピアノがあったが今はお休み中だ。
習字は日曜日の朝からで、夕方からはハルカ先生の授業が遅くまである。
木曜日の放課後からは有閑お婆に囲まれた絵画教室に通っている。
金曜日の放課後にはバスに乗って英会話教室にも通っていた。
この教室で出会った暇さえあればダンスの振り付けのおさらいをしている小学二年生の少女、陸奥安奈ちゃんに俺は驚くことになる。
(さすが広島)
と思わせるこの子はいずれ多くの人が知る事になるだろう。
ピアノのレッスンは独学であっても厳しく課題を持って続けていた。
松永澄子先生のレッスンはコンクール向けのもので俺好みではないし、なんといってもランキング外だ。
ランキング?言わずとしれた魅惑度ランキングだ。
現在の一位は、ダントツで宮郷愛莉ママの静香さんだ。それを脅かす存在の登場に俺は期待しているが、なかなか出てこない。
そんな愛莉ママとひょんなことで再会する事になる。
愛莉のオーディションの為にピアノ伴奏を引き受けた俺は、彼女の家に数回通ったが、そんな機会が失われたので(もう会えないかも)なんて思っていたので再会をとても喜んだ。
ゴールデンウィークを利用して音楽事務所ケラウズランブラの社長の鳴門真司は約束通り、大手レコード会社ヴィクセン所属の未来の大物プロデューサー後町健司を連れて午前の内に飛行機で広島にやってきた。
他に二人のミュージシャンとどこかで見た記憶があるフード深々で姿を隠した少女も一緒だ。
(こいつ、誰だったけ・・・?)
俺は前世の記憶を探ったが思い出せない。
(どうせ将来名を馳せる誰かだろう)
そんなところで納得した。
今回は広島の市街地、幟町にレコーディング機材のあるスタジオが事前に手配されていた。
あのアフターズスクルールのダンスレッスン場とは階が違う専用スタジオだ。
ここは多くの練習生たちの中でも優れた歌唱力をもった子がデモ作品を作る場所だけでなく本格的なレコーディングもできる機材が揃っていた。
いわば練習生たちがなかなか立ち入る事ができない神聖なる場所であり、ここへ出入りするのがプロとしてやっていける可能性だったのだ。
現にここからはこの先、多くのスターたちが誕生する。
そんな神聖な場所とも知らず昼前に俺は一人の少女と共に四人の大人に囲まれて気軽にスタジオ入りした。
(こいつら何者だ)
練習生たちの他所者を見る厳しい目に晒されてだ。
特に同年代のフード少女と俺への視線は痛かった。
怯えた表情が隠せないハルカ先生は、スタジオの外で俺を見つめている。
俺は後町健司に会えたのと鳴門社長との再会に胸躍っていた。
二人のリズム隊も凄腕らしく、俺の姿を見て最初こそ驚きはしたが、ピアノを前にした俺のキータッチを耳にしてすぐに態度を大人バージョンに切り替えて音で試してきた。
俺の作曲能力は、長年の経験をベースにした純粋なオリジナル能力とチートフォンから未来のヒット曲をベースにした二種からなる。
俺のテクニックは、素人ながらキャリア25年以上をベースにここ一年は本気でピアノに取り組んだもの。
そしてチートフォンには未来のヒット曲が無尽蔵にあり、廃り流行りの先を見越して流行を先取りできるのだ。
俺の出すエレピ音にドラムとベースが絡んでくる。そして鳴門真司のギターも重なりすぐにセッションが始まった。
♪~
大きなガラス窓で仕切られたスタジオ外には俺たちの出す音に引き寄せられるように多くのオーディエンスが集まってきた。このスクールの練習生たちで、圧倒的に女性が多いのが特徴的だ。
その中に宮郷愛莉もいたし保護者として愛莉ママもいたのだ。
そんな事を知らないまま俺は、大人たちに交じり負けないように必死に演奏をするが、それ以上に楽しんでいた。
なんといっても奏でだす音は俺のチート作品ばかりの未来に売れた曲のアレンジばかりで、当然三人のミュージシャンに後町健司は俺の音に夢中になり、さらにアレンジを加えて曲を完成させていく。
二時間ぶっ続けのセッションで早くも二曲が完成する。
ボーカルもどこかで見たことがあるフード少女が圧倒的な歌唱力を披露して場を支配した。
(俺の曲がこんな化け方をするのか・・・)
俺はたとえチートとはいえ自身の能力から生まれた作品の変貌ぶりと物静かながら低音にも強くハイトーンの歌声を響かせる少女に、
(こいつマジですげぇ!!天才か)
感動した。
「翔介君凄いね!」
休憩時間となり汗だくのままスタジオの外に出た俺に冷えた飲み物を持ってきてくれたのは、宮郷愛莉とそのママ静香さんだった。
「あれ、どうしたの、こんなところで」
「凄いね、翔介君。美坂ミオのバックミュージシャンなんて」
(ああ、彼女が美坂ミオか・・・どうりでどこかで・・・)
大ブレーク前の美坂ミオが俺の曲を唄っていたのだが、そんな事は俺の興味の範疇ではない。いかにこの曲たちが印税を稼ぎ出してくれるかが俺の最大の関心事項だ。
宮郷愛莉は、「凄いね」を連発。よほど感動している様子で、それを裏付けるように俺は練習着で汗ばんだ年上の姉さんたちに囲まれた。
ここで有頂天になれないのは悲しい性。
姉さんたちと言っても所詮は中学生かそこらのガキでしかない。美坂ミオにしても同じで全く萌えない中にあって愛莉ママの存在は一際輝いて見えた。
「こんにちわ、愛莉さんのお母さん」
(あ~そのくびれたウエストの上にのかったふくよかな胸にスリスリしたぜ)
なんて思っても、小五の俺じゃスィラブマスターであっても相手にされないのは百も承知だ。
(ここは謙虚な小学生を演じて、愛莉の友として承認度を上げとこう)
スィラブをクリアするための最重要アイテムの一つに【急がば回れ】がある。
好みの女性と出会って、相手にカレシがいたとしても焦らずに別れるのを待つ事の重要さを超高ポイントで教えてくれるアイテムだ。
俺は【急がば回れ】をオリジナルアイテム(成長するまで待ってて)に置き換えて高ポイントを得るつもりだ。
(あと四~五年もすれば、この静香さんを攻略できる。そのためにもスィラブの新作をやっておきたかった)
不倫モードがあるというスィラブの新作に思いを募らせる俺だった。
《おい、俺ヨ、何が四~五年だ。15~16歳で人妻攻略かよ。バカじゃね~の》
俺の内なる声はそうのたまうが、俺は本気でそう思う事もあり、この先、娘の愛莉とは縁を育んでいくつもりだ。
「こんにちは、加羅君。凄いのね、あれは何をしているの」
愛莉ママの問いに、俺は後々を考えずに格好をつけて隠さずありのままを伝えてしまった。
「何をと言われたら、セッションですけど、わざわざ僕の都合に合わせてさっき東京から来たばかりのヴィクセンレコードと音楽事務所の人たちですよ。それに美坂ミオさん、この先、大スターになる子です」
「やっぱりあれは、美坂ミオよね。評判通りの歌唱力ね。テレビで見るより上手いわ。それで加羅君はキーボード奏者としてこのユニットに参加しているの」
(ユニットときやがったか・・・さすがだな)
「違いますよ。僕は作曲家としての参加で、僕の曲をアレンジして仕上げているところです。本格的なレコーディングは東京でするんですけど、僕は参加しませんよ。なんせまだ小学生ですからね」
「えっ、あれは加羅君の曲なの・・・」
「作詞、作曲が僕で、美坂ミオさんのアルバムに収録される予定です」
ここで俺は、差しいれてもらった飲み物を一気に飲み干すとトイレに走った。オシッコ我慢の限界もそうだが、愛莉ママを間近に見るとピッキンとうずくとこがうずいてきたからだ。
ジョワジョワジョワジョワ
(ふっー危ない危ない。ここは焦らず、今日のところは、仕事に集中しよう)
俺は名残惜しくはあったが愛莉ママとその娘の熱い視線を会釈一つでかわし、スタジオに戻った。
結局、この日は夕方までセッションは続き、俺が用意した曲の半分近くを消化してしまう。
「翔、きみは本当に凄い才能を持っているし、まだまだ引き出しはたくさんありそうだ。明日も宜しく頼むよ」
未来の大物、後町健司から握手を求められた。
そして今日のセッションで完成させた曲を含む先に送った曲についてのギャラの支払い明細と、今後の取り決めが書かれた仮契約書を渡された。
「翔は、本当にいい曲を書くのね。私、どの曲も気にいったわ。もっとうまく唄ってみせるね」
美坂ミオは最初こそ、俺を眼中に入れていなかったようだが、スタジオを出る頃には三つ年下の俺と手を繋いでくれていた。
どうやらセッション中に大人たちの無理難題をことごとく簡単に跳ね返した俺の力量を認めてくれたようだ。
俺も、
「さすがは、未来のスーパースターは違うねぇ~」
なんてその透けるような白い肌を擁する美貌と共に賞賛してみせた。そして、大物プロデューサーに向かっては、
「さすがは後町健司ですね。僕のつたない作品を見事な曲として完成させてしまうなんて、やっぱりあなたは後町健司なんですね」
俺は、無礼にも自然に出てきたそんな言い方をしてしまった。
「そうか、翔は真司が言いうように本当に僕のファンだったんだね。ありがとう、そう言ってもらえると翔とは仕事がやりやすくなるよ」
後町健司に続き、ミオも優しく、
「翔、明日も楽しみにしてるね」
頬にキスまでしてくれた。
彼らは流川へ繰り出すらしいが、俺はハルカ先生に伴われて帰路についた。
あっ、そうだハルカ先生、こう見えても運動神経は悪くない。車の免許は一発合格だ。
まだ若葉マークだが、運転は下手ではない。俺のコーチもあって、クラッチもうまく繋げるし、大きな交差点での右折もスムーズにできるようになったし、車線変更のタイミングもばっちりだ。
「翔介君は、車の運転もうまいのね」
別に運転してみせたわけではないが、生前ライフでは父さん譲りのmazdaRx7のオーナーでドリフト族だ。後部座席からのアドバイスが的確なためにそう思ったらしい。
このmazdaファミリアはミッション車で、舟入の爺ちゃんの手配で会社の営業車崩れだが、俺の運転手もハルカ先生の業務に加わったというわけだ。
もちろん通学にも使ってよしで、この前までママチャリで通学していたのに比べるとずいぶん楽になったはずだ。
時間の節約にもなるし、大学近くと自宅近くにガレージを借りるのも、ガソリン代も全て経費計上できるルールにしてある。
将来のへき地ドクターの為に、俺は、代理人手数料代を支払い、俺の取り分は事務経費と機能充実のためのランニングコストとして使った。
その金は、まだ正式契約書は交わしていないが、仮払いされた金銭で賄ったのだ。
早速のお買い上げの総額132万円は11曲分の作詞と作曲手数料で、美坂ミオの新譜発売に伴う印税は七対三で、アレンジャーたちにも分け前がはいるしくみになっている。もちろん作曲者の俺の取り分が七だ。
そして注文を受けたドラマ主題歌は、明日聞かせる事になっているが、採用されれば30万円の売り上げとなる。印税率は同じだ。
どれもこれも相場の半額以下だが、売れっ子になればその値段はみるみるうちに上がっていくのは言うまでもない。
◆
スィラブをプレーする中で最大の御法度は【隠し事】だ。
他の女とのデートを隠すケースは、思いかげなく本命の女から声がかかった場合に発生する。
成り行きで他所の女と仲良しになってしまったのを隠すケースは合コンの後に発生する。
昔馴染みとのデートを隠すケースは同窓会あとに発生する。
バイト先の出会いなど様々なシチュエーションで発生するデートは、成功すればポイントは高くなり、経験値もあがるが、自分のカノジョに【隠し事】をしてまで強行すると【嘘】が発生して【幻滅】に至りゲームオーバーになってしまうことから、【女の勘】を用心して【隠し事】はしないに限る。
デート数でポイントをあげる手段は手っ取り早く効率的だが、ENDへのショートカットでもあるわけだ。
スィラブには【隠し事】とは別に注目すべきアイテム【秘める】がある。
俺は、リクにはこの【秘める】を使用する事にしていた。
【隠し事】が露呈するのは【女の勘】に引っかかるからだ。
要は疚しい心の有り様から、いくら隠れて行動しても目の動きとかどもるなどの本当に些細な態度が重なって不協和音として出てしまうという事だ。
だが、俺はセッションの事、ハルカ先生代理人の事、全部リクには【秘める】事にしたのだ。
こちらの切り札を全部晒す必要はないという事で、“疚しさ”がない事から【秘める】は【女の勘】サーチに引っかからないのだ。
切り札を隠すとは、将来リクがモデルとして大成した時に、こちらも実はリクに負けないぐらい”大物でした感”を出すためのもので、その自信溢れたしぐさや物言いは、凄い戦力になるのだが、これが空自信であればすぐにばれるのは昔、経験済みだ。
スィラブでもそこんとこを重視していて、高いスキルを秘める男には特別ポイントを発生させていた。
だから作詞・作曲をする際の名前に本名は使わない。
俺は、母さんの旧姓を使って“園田翔”と名乗ってデビューすることにし、鳴門さんやその関係者には“翔”と俺の事を呼ばせるようにしたのだ。
将来の試金石と考えてくれればいい。
俺はモデルリクとの再会で【淡い想い出】を発動させ、恋愛戦序盤において善戦してみせる。
問題は、その後だ。
パリモード界で活躍するリクよりも高いスキルをベースにメジャーになっておきたいという企みが【秘める】の起用理由だった。
【幻滅】の最大の予防策だと思ってくれればいい。
まぁ、そんな面倒話はともかく学校で目立ちたくなかったというのが一番の理由だ。
俺が音楽事務所ケラウズランブラ所属の作曲家だと知っているのは、ハルカ先生だけという事になる。
◆
帰宅すると母さんは、今日の成果を確認するために俺を茶室に呼び込んで唐物の稽古をしてくれた。
(あ~あ、まだ何かを疑ってるな・・・)
ここで俺は当然リクに【秘める】を行うためにハルカ先生以外にはウソをつかなくてはならない。
「ハルカ先生の大学での勉強ははかどったよ」
もちろん先生とは口裏を合わせている。
「医学生として忙しいハルカ先生はゴールデンウィーク中も大学で課題に取り組む必要性から、合間を見てしか僕の勉強を見られない」
という半分ウソでない設定にして、俺が大学に行って授業をしてもらった事にしたのだ。
明日も今日と同じだが、ハルカ先生は俺がスタジオにいる間は、こちらはウソなく大学にいるそうだ。
「リクの稽古は、はかどってる?」
リクは母さんから補助椅子を使って茶道を習っている。正座ができないのだ。
「リクちゃんは、気ばたらきもできるようになったし、マナーもだいぶ上級になってきわね。話し方もまだまだだけどずいぶん上品になってきたわよ」
「それはよかった、僕も負けられないな」
稽古が終わると、もう晩飯時だったがノッコが見当たらない。
「またリクがノッコを誘拐したな、助けにいかないと」
「だって、リクちゃんの家にピアノが届いたんですもの、もうここで練習する必要はないのよ、だからノッコがあちらのお宅に出向いたわけよ」
「まるでノッコが勝手に一人で行ったみたいな言い方をするんだね」
俺は笑いながら、ノッコを取り返しにリク宅に向かうと、玄関で俺をジタバタ待っていたノッコがいた。
U^ェ^U かえろかえろかえろかえろかえろかえろかえろかえろかえろかえろかえろかえろかえろかえろかえろ
リクもピアノを弾くのをやめて飛び出してきた。
(何が上級だって・・・)
「おかえりなさい翔介。ピアノが届いたの」
嬉しそうに笑顔を俺に向けてくるその姿は、サイドにスリットをあしらった黒デニムのミニスカート。脚長効果抜群で思わず見惚れてしまう。トップスとも好相性で、
「今日も素敵だね」
まずは褒めるスィラブマスターの鉄則を抑えて用件を切り出す。
「リク、散歩に行かない?」
どうやらリクはピアノを見てもらいたかったようだが、俺はノッコのソワソワの方が気になっていた。
案の定、外に出ると、
ジョワ~~~
おしっこタイム。よほど我慢していた量だ。
「ごめんなノッコ。俺が今日はかまってやれなくて・・・明日は僕と一緒に行こうか」
U^ェ^U それがいいそれがいいそれがいいそれがいいそれがいいそれがいい
「ダメだよ。ノッコは明日も私とお留守番だよ」
「だったらピアノの稽古もいいけど、ノッコとも遊んでやってよ --- なぁノッコ、おまえは今日リクに遊んでもらってないよな」
U^ェ^U あそんでもらってないぞあそんでもらってないぞあそんでもらってないぞあそんでもらってないぞ
「そんなことないよ。ノッコを迎えに行ったときね、翔介の家の前に三五君がいたの。昔の私みたいにピンポン押さずにただ待ってるだけだったの」
「ミゴッチが来てたというのか?」
「そうだよ。それで翔介はいないことを教えてあげると、残念そうにしたから、私と一緒にノッコのお散歩にいったんだよ」
「あいつ体、大丈夫だったか」
「私も、それが心配だったから、三五君の家までのお散歩にしたんだよ」
「そうか偉いなリクは、やっぱり俺のリクだ」
俺の口からの出まかせ台詞にも嬉しそうに微笑むリクだった。
(可愛いやつ)
思わずギューするのは、もう姪っ子たちの完全なる代役だ。
「で、それが午前中の話だよな。もしかしてそれ以来のノッコの散歩なのか・・・」
「そうだよ。ピアノの稽古に夢中になっちゃった」
悪びれた様子もなく舌を出すリクはノッコの放置を正直に認めた。
「僕の課題は終わった?」
「うん、終わったよ。あとから聴いてくれる」
「よし、ノッコの散歩が終わって晩御飯を食べたらリクの家に行くよ」
「うん、わかった」
▲ 心内会議 ▼
(なあ、オレよ、三五は何をしに来たんだ)
《そんなのわかりきってるじゃないか、ミゴッチは、俺と遊びたかったんだよ。ただそれだけのことさ》
(そうか、よほどBBQが楽しかったんだろうな。そうだ、明日、三五のやつスタジオに連れていかないか)
《なるほど、死に行くやつには隠し事は必要ないということか。いいんじゃねぇ》
(オイ、まだ死ぬとは決まってないぞ)
《だったな》
(そうだぞ、さっそく三五ママに電話だ)
《なんだ俺の目的はそこかよ》
(それもそうだが、運命変えの一環さ)
《まぁいい、慎重にな、ミゴッチの口止めを徹底しないとハルカ先生とのウソがばれてしまうからな》
(了解だ)
▽
こうして俺は三五を翌朝迎えに行くと、三五ママに会えたのを喜んだし、三五ママも友達の誘いが我が子にかかるのを喜んでくれた。
◆
「健司あれは本物だな。いい奴を紹介してくれた。感謝だ」
流川の料理屋、八雲の二階個室でしゃぶしゃぶを突っ突くのは四人の男たちに一人の少女だった。
東京からゴールデンウィークに翔介に会うためにやってきた面々だ。
「ああ、俺もさぁ最初に送られてきたデモを聞いた時には驚いたが10歳と聞いてもっと驚いたよ。でも本当に10歳だったな」
鳴門真司の感謝の弁にそう応えるのは後町健司、ヴィクセンレコードの社員プロデューサーだ。
「もう11歳だ。それにしてもあのアレンジ力・・・凄かったな」
「ああ、ミオのボーカルラインにまで強引に介入してきてたぞ」
「そうなのよ、あの子、私の唄う旋律が気にいらなかったみたいで指定してきたよ。メロディーラインをシンセでこう唄えと言わんばかりに弾いてくるじゃない。ついつい釣られちゃった」
そう笑みをこぼし感想を漏らすのは美坂ミオ。まだ14歳のデビューしたての本格的なシンガーだが、位置づけはその可愛らしいルックスからアイドル的なもので、不満を持っていた。
「ミオのラインよりだいぶ優れた主旋律だった。そうだろう」
「悔しいけど、あの子の指定したラインの方がきれいだし、かっこよかったよ」
「リズム感も凄いよな。帆橋の刻むリズムに合わせてくることも容易くだ」
「そうなんだ。僕がアクセントを加え小節の流れに変化をつけて寛いだリズムを刻むとそれにも独特の方法で付いてくるんだ」
スタジオミュージシャンとして高名なドラマー帆橋幸嗣は、翔介に今日はとことんやられたのだ。
「面白かったな、翔の刻むリフを帆橋が拾ってリズムに取り入れたとこ」
「ああ、翔は僕を試すんだ。付いてこれるかって、あれは天才だよ。僕が四拍子を単純に宮地のベースに合わせて叩いていると、こっちに合わせろと言わんばかりに挑みかかってくるんだ」
「だからこそ、翔の曲は締まって力強いものになるんだ。曲のフレーズが変わっても帆橋はリードが取れずに翔に付いていくばかりだったよな、俺もだったけど」
抑えた笑い声を発するのは、宮地恭平、アイドルと駆け落ちしたことがある名ベーシストだ。
「あっ、そこわかってくれた。翔、僕を睨むんだよな、しっかり付いてこいって」
「ああ、あれはおまえらのいい化学反応を誘発したな」
後町健司はプロデューサーの立場からそんな感想を漏らす。
「特に、ナイトレス・シティのような複雑な楽曲のときには翔効果抜群だった」
鳴門真司も具体的な曲を例にだしてそんな感想をビール片手に語りだす。
「あの曲、ビートを四分の四拍子で単純に刻むはずだったのに・・・」
「ナイトレス・シティ、あれは、いい曲だ。あれも翔のリズムを取り入れてから化けたな」
「あれは翔が難しくしたんだ。一小節に四拍入りで、」
「四分音符を一拍カウントさせたやつだな」
「そうだよ。最初は四分の四拍子のありふれたリズムで刻んでいたんだけど、翔は安定した四分の四拍子の上にピアノで強烈な四分の三拍子を刻んでくるんだ」
「つまりなんだ、一小節に三拍子しか入ってこないということか?」
「そうだよ。結果的に僕のリズムと翔のピアノの小節は強拍の重なる頻度が12拍に一度だけになるんだ」
「あれかっこよかったな。異なる拍子を掛け合わせることでナイトレス・シティはある種の緊張感を生み出した」
「それがあのピアノの高揚感を醸し出し緊張した音と噛み合ったんだ」
「でもな、あんな拍子がらみの細工をしかけるには、俺たち全員がリズム感に卓越していなければならない。そういう意味じゃさすが健司だ。いい人選だった、今日のメンバー」
「悲しいことに、そのリズム感を翔が負ったんだよな」
「この絡みが明日はもっと必要になるぞ。またたび曲のデモを俺は聞いたが、凄い曲だ。拍子やフレージングにおいて曲芸レベルのものを翔は要求してくるぞ」
「ああ、最後に少しやったがピアノと俺のベースのリフはハーフビートをそれぞれが繰り返すんだ」
「そうだったな俺たちは結果的に九分の八拍子で演奏し、帆橋には四分の四を刻ませた」
「あれはよほど注意深く聴かないと一般リスナーは気が付かないぞ」
「あれ、わざとだよな。翔のピアノはドラム・ビートと重ならないまま絡んできたの・・・」
「もちろんだ。翔のピアノと俺のベースがドラムとのシンクロを逃したようなリズムが最高におしゃれだった」
「なんだか機械仕掛けみたいだったけど、このメンバーだからこそチープな演奏にならなかったんだ。まさに化学反応だよな」
「まさに。この素晴らしきメンバーと翔に乾杯だ」
今日だけで何回目かの乾杯をする面々だった。
広島は凄い所ですね。パッと思い出すだけでも・・・
奥田民生さん・吉川晃司さん・西城秀樹さん・島谷ひとみさん・JUJUさん・世良公則さん・DJ KOHNOさん・堂珍嘉邦さん・浜田省吾さん・ポルノグラフィティ・森友嵐士さん・矢沢永吉さん・吉田拓郎さんなど輩出してますね。ミューズの最初の所属ミュージシャンは原田真二さん広島です。
アクターズスクール広島の卒業生も凄い!
Perfume 現在ミューズ所属
西脇彩華 (元9nine)
中元すず香(BABYMETAL)
杉本愛莉鈴(元さくら学院)
鞘師里保(元モーニング娘。)
段原瑠々(Juice=Juice)
中元日芽香(元乃木坂46)
現役活躍中!
中元すず香(BABYMETAL)さんの二十歳LIVEはわざわざ広島にまで行きました。二人METALでしたが、鞘師里保さんがその後加入したのは広島の縁なんですね。嬉しかった・・・




