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嬉しくっても涙は出るんだね……。

 往来で流石にこれ以上の話もできないと言うことでわたしたちは帝の別邸に案内されて。


 畳の敷き詰めてあるお部屋に通された。

 寝殿造ではなくて周囲が入り口以外壁に囲まれている感じ。

 小窓は格子がハマっていて、侵入は容易じゃない。

 うーん。

 入ってきたときはふつうのお屋敷だったけど、此処は土蔵のような造りかな。かなり広いから狭い蔵みたいな雰囲気はないか。


 人払いして扉を閉めると明かりは小窓だけなので昼間でも薄暗い。九郎さんが灯りを置いていってくれたので、まるで夜の密会のよう。


 畳の上に敷物が敷き詰められている一角にわたしたちは座っていた。


 正面に帝。わたしの左右にねえさまと少納言。


 人払いされた中に少納言がいなかったので、ちょっと心強い。帝はそれもわかっていたのだろうか?




「改めてお願いします。瑠璃姫、わたしの(きさき)になっては頂けませんか?」


 真剣なその瞳。帝は本気なのだ。


 嬉しい。でも、ダメ。


 心が痛い。このまま何も言わずに拒否をすることはもうわたしには出来なかった。


「申し訳ありません。わたしは結婚することそのものが出来ない身体なのです……」


 苦しいけれど言わなければ、そう思い話しかける。

 わたしはあのとき助けて頂いた者なのですよ、と。そう言おうとしたとき。


「大丈夫ですよ。わたしは男でも女でもないのだから」


 全てを解ってる、そんな顔で、先に帝がそう言った。


「わたしは元々男児とも女児ともつかない状態で生まれたらしい……」


「そして、とりあえず女児に近いだろうと姫宮として育てられたのだが、長ずるにつれ男性としての特徴が現れてきてね……」


「しかし、どうやらわたしはほかの男性とは違い子は成せぬようなのだ。見かけもかなり違う。もともと普通の婚姻は望めぬ身体なのだよ……」


 ああ、半陰陽……か。


 前世で聞いたことがある。


 うう。そんなの、わたしよりも帝の方が辛かっただろうに……。


 わたしは思わず帝の頰に両手を伸ばして、そして……。



 ☆


「お辛かったでしょう……」


 頰に触れる彼女の手。その顔は弥勒菩薩のように慈愛に満ちて。

 ああ、全てが許される気がする。


 自分が生きてきて良かったのだろうか、ずっとそう思っていた。

 それが。


 彼女になら救われる、そんな利己的な考えもあった。

 結局は自分の為。だけれど。


 それでも。


 わたしは彼女と共に歩みたい。

 彼女が恋しい気持ちをこれ以上抑えたくない、そう決心して伊勢まで追いかけてきたのだ。

 そして。


「愛しています。瑠璃姫。どうかわたしと添い遂げてください……」


 目の前の彼女は涙を流しながら、頷いてくれた。


 それは、喜びの涙で間違っていないと思えた。

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