出生ガチャで当たりを引く
目が覚めると俺は、8歳の少年『グラム』に転生していた。
優しい色合いの地味な茶髪に、けっこう細目の目と大きな体が印象的である。
顔立ちは、まだ8歳なのでなんとも言えないが、とりあえず不細工にはならなさそうだ。
ちなみに少し太めなわがままボディである。
記憶が戻るのはこのくらいが多いらしく、両親もそこまで動揺はしなかったようだ。
突然息子が敬語で話し出したらビビるし気持ち悪いと思うが、これも常識の違いとして納得しよう。
さて、自分が産まれたのは中流の商家『グレイ商会』の3男坊らしく、まさに理想的な出身である。
責任も重くなく、さりとて金はあり、継承戦に首を突っ込まなければ、安全に成人して家を出られそうだ。
これで貴族の生まれだったら継承権が絡み、自分の意思に関係なく祭り上げられる可能性もあった。
貴族の御輿に乗っているうちはいいが、そこから振り落とされたら死ぬのである。暗殺とかで。
2人いる兄たちは、転生者の生まれではないが、18と16でどうみても前世の俺より優秀で、彼らに任せればこの家も安泰そうに思える。
これからの身の振り方を考えなければならない。
今はまだ、余裕がある家の子供として読み書きを習い、簡単な仕事の手伝いなどで一日が終わるが、このまま15の成人を迎えればおデブの商人の完成である。
10歳にやるスキルを授かる祝福の儀式までには、少しずつ体を作っておきたい。スタートダッシュで差をつけろって奴だ。
さしあたってやらなければならない事は、両親の説得、それに走り込みと情報収集である。鍛練大事。
転生したからといって、自分の頭が良くなったわけではなく、天才でもない俺は地道な努力を続けなければ、大成できないだろう。
「お父さん、今少し宜しいですか?」
僕がそんな風に問うと、「どうした? グラム」と仕事の合間の休憩中にもかかわらず優しく返事をする今生での父、アーベルトが答えた。
曾祖父の代から商会を継いだ4代目の商会長で、かなり優秀な商人である。
主に食料品を扱っていた先代の方針を踏襲しつつ、武具や日用品などの商品売買に着手し、確実に商会を大きくしているやり手である。
「実は将来のことについてなんですが……」
「その前にその他人行儀な口調はやめておくれ、いくら前世があろうともお前は私の息子だ」
「あぁ、うん、わかった、です」
「まだ固いが、まぁそのうち慣れるだろう」
なんとなく距離を取ってしまうが目の前の人は間違いなく自分の親であるし、父母共に深い愛情を感じる。
そのせいもあって気を抜くと、
「僕、将来は冒険者になりたいんだ!」
このように若干の幼児退行めいた言動になってしまう。
とても恥ずかしい。
「ああ、やっぱりうちのグラムは男の子だな!」
「や、やめてよ」
そう言って皮の厚い手で頭を撫でられる、満更でもないのでやめてほしい。
前世の父はあまりスキンシップを好まなかったので、気恥ずかしいのだ。
「しかし冒険者か、危険だぞ? そこは理解しているのか?」
「うん、でも生まれ変わったからには、好きに生きてみたいんだ」
「そうか、まぁ分からんでもないな。私も若い頃は憧れたものだ」
「でしょ! 冒険って憧れるよね!」
やはり、魔物は恐ろしいものとして認識されているが、それを倒す冒険者たちは子ども達にとって、憧れの存在のようだ。
いつか大成するならこんな冒険者がいいと、2人で盛り上がっていると、後ろから声がかかった。
旅立ちまでは駆け足で行きます。




