ありふれた初期設定(人生)
「それじゃあ、君に許された範囲で僕に与えられた権限でもって君の来世を祝福しよう」
持って回った言い回しだが、こちらの門出を祝ってくれているようだ。
彼の言葉には優しさと満足感が感じられ、一仕事終えたような充実感に満ちていた。
転生先は記憶を受け継いで産まれる子どもが多く産まれる世界で、幼少期に動き出しても問題ないようだ。
特に忌子として忌避されることもない。
転生者には理想的な世界だ。だからこそ、転生者が多いのだろう。
それにしてもスキルが存在する世界か。
転生先として選んだ『世界樹の洞』という世界は、はダンジョンとスキル制度で成り立っている。
この不思議な世界は、慈愛の神のマジギレと諦めによって生まれたらしい。
何度導いても大戦が勃発する世界に『そんなに殺し合いたいなら敵を作って差し上げましょう』と、ダンジョンをたっぷり用意してやったようだ。
確かに戦争を止めるには、より強大な敵と利益が必要である。悲しいことだが。
特に人間のような、学ぶが忘れる生き物には。
そして慈愛の神らしく同時に希望も与えたようで、それがスキル制度である。コレによって弱者を補強し死者を減らす目的だとか。
その力は多岐にわたり、戦闘系の物から生活の質を向上させる物や、生産に農耕、家事に医療に関わるものまでかなり幅広い。
生き残る術というよりは、全体的なスキルによる底上げのように感じられる。
なんとも慈悲深い神様もいたものだ。自分ならあまりのアホっぷりにとっくに見捨てているであろう。俺も含めて学べよ人類。
その優しさにつけこんで、好き勝手やっていたら神の怒りを買い、世界がハードモードに突入したようである。
自業自得。
ともかく、その慈悲深い神様のお陰で俺の昔からの夢が叶うのである。
祈りが届こうが届くまいがたっぷり祈って感謝しよう。
俺は所謂幻獣や、魔物が大好きである。
毛皮も羽毛も鱗も、鉱物に謎の魔法生物までがストライクだ。
生前は近所の猫様に撫でさせていただくか、遠方の実家で飼犬をモフリたおすのを生き甲斐としていたが、出来ればでっかい恐竜に乗ってみたいというのが、心のどこがに叶わぬ夢として燻っていた。
来世では、生前にはついに触れなかった生き物達とふれ合いたい、仲良くなりたい、そして共に冒険がしたい!
いざそれが手の届く範囲にあると思うと、欲望が止まらない。
具体的には、ドラゴンの背中に乗って飛んでみたい。
デカイ動物に包まれて寝てみたい。
イルカ的な魔物に乗って海を駆けてみたい。
自分だけの魔物軍団を作りたい!
それらが、唯一にして最大の目標である。クロムは朗らかに笑いながらきっと叶うと言ってくれた。期待しよう。
「さて、ではそろそろ送り出していいかな? 君の来世に幸あれ」
そう言うとクロムはあっさりと俺の方に手を向け、それを合図に急激な眠気が襲う。
なんとも急だが、別に問題はないし次の予定でもあるのだろう。
「世話になった、ありがとう」なんて呟きが届くかも確認せぬまま、俺は来世への眠りに着いたのである。
何処か遠くでまた「やぁ、いらっしゃい。とりあえず落ち着きなよ」なんて軽い挨拶が聞こえた気がした。次の死者が来たのかもしれない。
もはやなにも出来ないが、せめてクロムの少しでも早い安寧を願っておこう。本当にありがとう。
いってきます。




