13「神々の斧鉞」その2
忌々しいといった表情を見せる消し神。
そんな状況もお構い無しに、しずしずとエメスが俺の前に歩いて来る。
「それでハ、オーナーを新たなマスターとしテ、登録させていただきたいと思いまス。」
「お、そうか。また奪われないためにもその方が良いか。」
そう話した途端、マーシャがシュン!と、音速で割って入る。
「…いやどす。」
「マーシャ!?」
「…マスターをマスターと呼べるのは、マーシャだけ。」
あー、そこは譲れないんだな。
俺がエメスを見ると察したのか、エメスはちょっと考えて、
「―それでハ、『ご主人様』では如何でしょうカ?」
グッ!とサムズアップで答えるマーシャ。
『茶番は終わりだ!』
消し神はロリ神様に波動を撃ち出す!!
だが、ロリ神様の前にプリス達が立ちはだかる!!
『ぬぅっ!?』
慌てて指を上に向ける消し神。
波動はプリス達の手前で軌道を変えて、天空に消えて行った。
「―やはり!神自らの手では、私達、この世界の住人は殺せない様ですね!!」
『…!!』
「ロリがみさまには、ゆびいっぽんふれさせないっすよ!!」
「畏くもですが、ロリ神様は私達の仲間なのです!!」
「効いてる?効いてる?」(笑)
「…ねぇねぇ、今どんな気持ち?」
おいおいマーシャちゃん。無表情でその台詞は、はしゃぎながら煽るよりある意味ダメージでかいぞ。(汗)
『我を、神を愚弄するか!!』
「己の肩書きをハッタリに使う様になるとは、情け無いのう。」
『黙れ!!』
消し神が手を振る。
そこに出現したのは大きな機械。
『♥魔導巨人の核…!!』
魔導巨人の頭部にあった、消滅の光を発した核!!
俺の元いた世界の『魔法の無い、マナの存在しない』空間を生み出す装置だ。
その中では、この世界の物質はマナを固定させておくコトが出来ない。
マナ濃度の余りの違いに耐え切れず、全てが水に溶ける塩のように霧散して消えて行く。
「魔導都市に朽ちていたのを直したのか…!?」
ロリ神様は頷く。
『♥あれは、貴方の元いた世界の物質で出来ています。ですから『核』自身は自らの発した光で消えなかったのです。』
―薄々そうじゃないかと思ったんだが、やっぱりそうだったか!!
ロリ神様は消し神を咎める様に言う。
『♥何というものを使おうというのです!』
『違反行為では無い。この世界の住人が作りし、この世界に存在する兵器。』
『♥詭弁です!』
初めて俺達の前で声を荒げるロリ神様。
そこにマーシャが一言。
「…大丈夫。アレはマスターには効かない。」
「うむ。主にとってはマナの無い空間こそ、故郷であるからのう。」
「オイラたちのボスは、そんなモノじゃたおせないっすよ!」
続いて口撃に次々と加わるメンバー達。
だが、消し神は余裕だ。何故なら、
『愚か過ぎる。この世界を全て消せば、結局その男も生きてはおれぬ。』
うん。そうだ。これは100%正しい。
―だが、そうはならない。何故なら、
「消し神!アンタのやりそうなコトはお見通しってコトよ!」
「皆さん!作戦通りに!」
プリスの掛け声で、7人の幼女が間髪入れずにフォーメーションを組む。
まずはパトルが最強装備シリーズを全開放し、組み上げたのは大盾だ!
そしてプリスが究極神聖魔法の準備に入る!ロリ神様が付いてる今、以前の様に魔力をいきなり0にされるコトは無い。
『何をするかと思いきや、無駄な事を…。お前が今、身に付けている宝石や地金では、究極神聖魔法の代償には程遠い。』
うん。そうだ。これも100%正しい。
―だが、今度もそうはならない。何故なら、
「無駄では無いのです!!」
アスミスがジャケットを広げた。
ジャケットの内側にはミスリル、オリハルコン、アダマンタイト、金、銀、プラチナと、各種地金がズラッと。
加えて、手袋やブーツ、ハンマーの中からも地金がドサドサッと落ちる。
「ドワーフの動きが遅いのは、こうしていつでもどこでも鍛冶が出来る様にしているのも理由の1つなのです!
―ふぅー。軽くなったのです。」
肩をグルグル回し、首をコキコキ曲げるアスミス。
超有名格闘マンガの、重いアーマー脱いだ緑色の戦士みたいだぞ。
「エメスモ、供出致しまス。」
エメスは両腕からオリハルコン製のソードを出して外した。
究極神聖魔法が発動し、プリスの衣服が装備品ごと代償の光となって消えて行く!
同時にアスミスが出してくれた地金、エメスの剣、
更にはパトル、デヴィルラ、マーシャ、ワイズィの衣服も白く輝く光と化して行く!
これでロリ神様を加えて、幼女全員が全裸となった!!
『僧侶以外の者が神聖魔法に加わる…だと!?―有り得ぬ!!』
「覚えておけ!! 俺は一人じゃ無い!!―俺達は…1つだ!!」
『愚かな!全てを消す神の一撃が、眷属の精霊ごときに防げるはずは無い!!』
あぁ、そうだ。その言葉も100%正しい。
―だが、『俺達』はそうはならない。何故なら、
『♥私も『俺達』に含まれているのですから。』
最強装備シリーズの大盾に究極神聖魔法とロリ神様の波動が加わり、文字通り『最強究極の盾』となる!!
「皆の者!!行くぞ!!」
デヴィルラが盾を構えたパトルの肩に手を置く!
紫色に輝きパトルは浮き上がる。次の瞬間、大盾ごと超音速で消し神に突撃する!!
デヴィルラの浮遊魔法だ!!勿論、俺達は最初から、消し神が西側に位置する様にしていた!!
『全て無に帰せ!!』
魔導巨人の核が閃光を放ち、周囲をマナの無い空間へと変えて行く!!
空間は歪み、大地は削れ、光球に触れた先から散り散りに霧散する!!
その中を一陣の矢の様に突き進むパトル!!
大盾に張られた究極神聖魔法+ロリ神様の波動のシールドも、耐え切れずにみるみる削られて行く!!
「オイラのしごとは『かべやく』っす!!『かべやく』は、どんなこーげきもうけきって、
なかまをまもって、なかまをしんじて、なかまにいのちをあずける!!
ボスは、オイラにそうおしえてくれたっすよーーー!!」
パトルは大盾の懐から、一本の剣を取り出す!!
『―魔剣!?馬鹿な!?』
消し神は俺の手に握られている『魔剣』を見て驚く。
「2本目を見て、3本目が無いと思う方がオカシイのです!!」
『また…すり替えたと言う…のか!!』
その通り!!俺が気付かぬ様に、俺の持った魔剣をイミテーションと交換し、パトルの大盾に忍ばせる。
恐らくこの交換劇を演じたのは、以前スリに盗られた俺の財布を電光石火の早業でスリ返したコトのあるマーシャだろう。
コレも、みんなが作戦を完全に相互理解して、先の先のそのまた先を読んだ結果だ!!
「おぉりゃぁあああーーーーっす!!!」
投擲される魔剣!!
魔剣はマナの無い空間でも消えるコトは無い!!
そのまま魔導巨人の核に突き刺さる!!
グワッシャァーーーーン!!
粉々になる核!!
間髪を入れずに盾の陰からマーシャとエメスが飛び出す!!
「エメス!!第一条解除だ!!思いっ切りやれ!!」
「畏まりましタ、ご主人様!!」
「…マーシャを全裸にしたのが運の尽き。」
マーシャにはあらゆる装備が効かない呪いが掛かっている。
だが、それは逆に言えば脱げば脱ぐ程強くなることを意味する!
全裸となり、金色のオーラを吹き出すマーシャこそ最強フォームなのだ!!
そしてエメスに与えた『第一条:俺の許可が無い限り、人間と同程度の力に抑えるコト。』の解除!
今のエメスこそ、正真正銘リミッターを外した最大出力だ!!
ズガガァアアーーーーン!!!
2人のパンチとキックが装置を粉微塵にする!!
消し神が両手を開き叫ぶ!!
『復元すれば済むこと!!』
「それも想定内よ!!」
ワイズィの両手に炎魔法と氷魔法が同時に発動する!!
合わせた手でそれは融合され、眩い光球となる!!
「ダーリンの世界の知識で決着を付けてあげるわ!!究極消滅呪文!!」
俺の元いた世界の漫画であった呪文。プラスとマイナスのエネルギーを融合して対消滅を起こす魔法だ!!
ワイズィは俺から聞いた話を元に魔導理論を建てて、遂にこうして実現させてしまったのだ!!
その輝きはバラバラになった魔導巨人の核の部品を復元させるコト無く、全てこの世から消滅させた!!
『まさか…こんな事が…、』
「全てを消す。―アンタがやろうとしたコトでしょ。他人にされるとは思わなかったの?お目出度いわね。」
7人と1柱の幼女達。その協力は正に無敵。正に最強。正に…まったく幼女は最高だぜ!!
『♥これが『可能性』の力。時にそれは神さえ凌ぐのです。』
『み…認めぬ!!その男はこの世界に存在する意味は無い!!』
まだ言うか。しつこいな、消し神は。
―その時!プリス達からきらめく光が溢れ出した。
『―何事だ?何故この世界の子らが発する光から、その男の波動を感じるのだ…?』
その光はプリス、パトル、デヴィルラ、マーシャ、アスミス、ワイズィの下腹部へ収束する。
―え?何だ何だ!?
突然のコトに動転している俺達。ロリ神様が消し神に向かって言う。
『♥この者達には、既にその男性との『誓い』が宿っているのです。』
『誓い…宿る?ま、まさか…赤子が宿っていると言うのか!!』
戦闘の最中、大平原を包む一瞬の沈黙。―そして、
「「「「「「「えぇええええええーーーーーーっっ!!??」」」」」」」
蜂の巣をつついたかの様な大混乱。
「えっ!?えぇっ!?わ、私にケインさんとの赤ちゃんが…!?」
「できちゃったっすか!?できちゃったっすかー!?はぇええええーー!?」
「こ、こここ、これは僥倖じゃ!父上もさぞかし喜ぶであろう!!」
「…マーシャ達がママになるんだよ!」
「わ、私はいつの間にかターニングポイントを回っていたのです!?」
「うふ♥ダーリンと子供のためにも、良いママにならなきゃ!!」
「皆様、おめでとうございまス。」
いやいやいやいや、身に覚えが無ぇえええええええーーーーっっ!!!!
―はっ!ここは異世界だ!!もしかして、ただ一緒に寝ただけでデキちゃうとか!?
んな馬鹿な!!俺は無実だ!!
顔をピンクのブラシで一杯にして潤んだ瞳で俺を見る6人を横目に、慌ててロリ神様を見ると、
『♥流石はロリ・カイザーです。これで貴方は彼女達の夫として、
生まれてくる子らの父親として、この世界にいるべき存在となりました。』
お褒めの言葉をいただきましたぁああーーーー!!!
え!?ロリ神様がこう言うって事は、マジなの!?
俺、一度に6人の幼女と夫婦になって、しかもパパになっちゃうワケ!?
見ると、アタフタしてるのは消し神も同じだった。
『ば、馬鹿な!!こんな幼子に赤子がなどと…!しかも一度に6人もだと…!?
こ、これがロリ・カイザーの真の力だというのか…!!信じられぬ!!』
うん。俺も信じられないです。
しかし、確かに6人のお腹からは優しい光がキラキラと輝いている。
『♥勝敗は決しました。ですが、この混乱を招いた罪は裁かれなくてはなりません。』
『―!!』
ロリ神様の厳しい声を聞いて、ギョッとする消し神。
そのままロリ神様は厳しい表情で俺の横に来ると、
『♥今回、最大の被害者は貴方です。貴方こそ審判に相応しいでしょう。』
そう言って、ロリ神様は手を伸ばす。
すると、ボロボロになった大盾状態の最強装備シリーズがふわりと浮き、各パーツに分離する。
それはロリ神様の手に渡り、組み替えられ合体。光る虹色の『杖』となった。
俺達はその様子に唖然とする。ロリ神様は語る。
『♥この装備は、元々私が1人のドワーフに啓示を与え、魔導巨人を討つために作らせたもの。』
―えええええ!!そうだったのか!!
「わ、私のご先祖様がロリ神様の啓示で、あの最強装備シリーズを…!!
そして今、私がここにこうしてその装備を集めた英雄、ケイン殿と共にいる…。これぞ運命なのです!!」
本当に運命を感じるな。最強装備シリーズが作られたのって数百年前だろ。
俺がこの世界に転移されるコトまで、まるで決められていたかの様な気分だ。
『♥さぁ、これを。』
ロリ神様は『杖』となった最強装備シリーズを俺に手渡した。
―えぇ!?俺ですか!?
『わ、我をどうする気だ!!』
『♥撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけ…ですよね?』
『―!!』
消し神の表情が凍り付く。
ロリ神様は俺に優しく語り掛ける。
『♥貴方は神である私を救いました。ならば、私は貴方に神の加護を1つ授けましょう。望みをお言いなさい。』
―俺が今、望むコト。それは、
「―俺の想いを、みんなの想いを、あの消し神にぶつけたい!それが出来る力が欲しいです!」
『♥―分かりました。―さぁ、お行きなさい。』
俺の身体が神のオーラを纏って虹色に輝き出す。それと同時に、俺の心にみんなの熱い気持ちが流れ込んで来る。
―そうか。分かった!みんなの想い、確かに受けとめたぜ!!
最強装備シリーズの『杖』を構え、消し神を睨む俺。
『や、やめろ…!』
「行くぜぇえええーーーーっ!!」
俺は虹色の光の矢となって消し神に突進する!!
これが最後の一撃だ!!
「うぉおおおおおおーーーーっっ!!!」
『やめろぉおおおーーー!!消えたくないぃいいーーー!!』
ズバァアアーーーーン!!!!




