13「神々の斧鉞」その3
杖を横薙ぎにして切り抜ける!!
消し神は虚空を見上げ、放心する。―静寂。
『―消えて…おらぬ…?』
消し神は自分の身体を触りながら、尚も困惑する。
『何故だ…?何故、我は消えていない…?』
「―それが『みんなの想い』だからだ。」
俺は振り返り、消し神に言う。
『想い…?』
「そうだ。『この戦いに勝って欲しい』というプリス達の願い。
―そして、『アンタを消さないで欲しい』という、ロリ神様の願いだ。」
『何…!?』
消し神はロリ神様の方を見る。ロリ神様は微笑んで答える。
『♥貴方も、この世界の1柱である事に変わりは無いでしょう。』
ロリ神様は『俺』という異世界からの『バグ』も、世界を構成するモノだと認めてくれた。
そんなロリ神様だからこそ、消し神もまた、この世界を構成する大切な1柱だと認めているのだ。
「以前、魔導都市で魔導巨人を倒した時、ロリ神様にこう言われたんだよ。
『同じ過ちを犯す者が現れぬよう、全ての種族が手を取り合い正しき道を歩んでいく事を望みます。』ってね。」
消し神は無言で俺の話を聞く。
「だから俺はそうした。人間も、獣人族も、魔族も、エルフも、ドワーフも、ゴーレムも、半魔も、
―そして『神様』も。みんなで一緒に手を取り合って進むコトが『俺達』の想いだ。」
ロリ神様は微笑んで頷く。
「俺達はアンタに勝ちたいと思った。―でも、消したいとは思っていない。
俺達の想いが、選択が、生き方が正しいって、その目で見て納得してもらいたいからな!!」
『……。』
プリス達が俺の元に駆け寄って来る。
「これからも私達を、世界を見守って下さい。」
「ぜったい、いいみらいにしてみせるっす!!」
「我々が誤った道を進みそうな時は、いつでも叱ってくれれば良い。」
「…マスターを信じろ。」
「みんなで頑張れば、不可能は無いのです。」
「ご主人様の築く世界ヲ、見届けて欲しいのでス。」
「賢者の末裔のアタシが付いてるから、ダーリンは大丈夫よ。」
みんなの言葉を聞く消し神。そして大きく息を付くと、
『斧鉞されるべきは我だったか…。人の子らに負けるとはな…。だが、悪くない気分だ。』
俺達から離れる様に歩き始める消し神。
『この世界を、頼む。』
そう言って帰って行った。最後の言葉は俺達に言ったのか。それともロリ神様に言ったのか…。
辺りを見れば、あれだけ激しい斗いだったのが嘘の様に、地割れも埋まり、川に水が戻り、
なぎ倒され燃やされた森の木々も元通りになっていた。
『♥―終わりましたね。…では、』
ロリ神様がそう言うと、プリス達の下腹部の光が小さくなって行き、ポロリと地面に落ちた。
「え!?…こ、これって…!?」
驚いた彼女達が、慌てて落ちたモノを拾い上げると、更に驚く。
「―ケインさんからもらった100円玉です!!」
それは、決戦前に俺がみんなにあげた、元いた世界の硬貨だったのだ。
「な…コレが我々の腹に貼り付き、光っておったのか…!?」
「あ、赤ちゃんじゃ無かった…のです!?」
「えー、どーゆーコトっすかー!ろりがみさまー!?」
「…なっ!何をするだァーッ! 許さんッ!」
ま、待て待て、みんな。落ち着け。
―ロリ神様、どうぞご解説をお願いします。
『♥私は、貴方達の『誓い』が宿っている、と言っただけです。
その硬貨は、斗いを前にして分けられた『お守り』だったのでしょう?』
―まぁ、そう言われればそうなりますが。
え?じゃあ、俺達も消し神も、ロリ神様の言葉をミスリードしただけってコトですか!?(汗)
俺もプリス達も、全員が膝からヘナヘナとその場に崩れ落ちる。
「―これは一本取られたわね…。下腹部に『誓い』とか言われたら、誰だってそう思っちゃうわ。
ダーリンの世界の硬貨だから消えなかったし、ダーリンと同じ波動を消し神が感じ取るのも当然で、
すっかり信じ込んで疑いもしなかったワケね。かくいうアタシ達もぬか喜びしちゃったけど。」
つまりロリ神様は、消し神に対しての俺の立場を有利にしようと、小細工というか、イタズラというか、
全員を騙す『トリック』を仕掛けた…、いや、仕掛けてくれたのか…。
「―そんな…ガッカリです…。」
意気消沈のプリスたん。他のみんなも肩を落として茫然自失だ。
うーん、俺としても残念な様な、助かった様な…。
―と、俺が持っていた『杖』、最強装備シリーズがボロボロと朽ちて行く。
大盾となって消滅の光を防ぎ、杖となって神様の波動を受けていたからな。
それらに耐え切れずに、とうとう粉々になってしまったのだろう。
「あぁ、消えてしまいました…。」
「随分と無理をさせたからのう…。」
「うん。みんなで一生懸命集めたのにな…。」
「ほんとうにさいきょーのそうびだったっす。りっぱなさいごっすよ…。」
しんみりする俺達のトコロに、アスミスが来て言う。
「ケイン殿、パトル殿。是非、私に新しい最強装備シリーズを作らせて欲しいのです。」
「ほえ!?」
「ご先祖様を超えるモノを作るのが、私の人生の目標なのです。必ず更なる高みへ登ってみせるのです!」
熱い眼差しのアスミス。天才マイスターの腕の見せどころか。
「―そうだな。うん、アスミスならきっと出来る。ヨロシク頼むよ。」
「ヨロシクっす!」
「はいなのです!!」
『♥さぁ、中央都市に戻りましょう。』
「え?ロリ神様も来られるんですか?」
『♥今回の事態の説明をしなくてはなりません。その責は身体を奪われていたとは言え、私にあるでしょう。』
うーん、確かに俺達以外の人は『神々の斗いだった』なんて、夢にも思わないだろうしな。
「で、でもこの格好で戻るのです!?」
「あー、オイラたち、すっぽんぽんっすよねー。」
「プリスの究極神聖魔法で全部溶かしてしまったからのう。」
「これは注目度ガ、パネェと予想されまス。」
「あぅ…すみません。」
「別に気にして無いわよ。―でも街に戻るとなるとねー…。」
「…裸だったら何が悪い。」
いや、色々と悪いから。(汗)特に、街の連中からの俺への視線が。
でも本当にどーするかなぁ。
俺はと言えば、着けていた鎧やマントも、あの魔導巨人の核から出た消滅の光で消えちゃって、
辛うじて下に着ていた、俺の元いた世界での服だけが無事なんだよな。
ベスト、トレーナー、ズボン、パンツ、靴下…駄目だ、人数分には足りない。
それに、それやったら俺が全裸になってしまう。そんなの誰得だよ。
「…はい、マスター。」
「おぉ!マーシャ!!何か良いアイデア出たか!期待してるぞ!!」
―中央都市の大通り。
俺の後に7人と1柱の幼女達が続く。
そこにいる民衆全員が、畏怖と、困惑と、驚愕と、そしてどこか納得の表情で俺達を見つめる。
「こ、これはちょっと…いえ、かなり恥ずかしいですね…。」
「みんな、おそろいでいいじゃないっすか!」
「余としては、普段と然程変わらんかのう。」
「…裸じゃ無いから恥ずかしくないもん。」
「しゅ、羞恥プレイとは予想外のターニングポイントなのです…!」
「これガ、ご主人様ノ『性癖』なのですネ。記憶しておきまス。」
「みんなもっと胸を張りなさいよ!一応これって凱旋なのよ?」
『♥私には必要あったのでしょうか…。』
白の極小水着で歩く幼女達。
マーシャのアイデアで、俺が下着代わりに着ていた白いストレッチインナーを切り刻み、
結んで繋げて出来たのが、8着のマイクロビキニだったのだ。
ストレッチ生地だから良く伸びて、ぴったりフィットだ。
ロリ神様はいつも全裸だったけど、ここで神様だけ着せないのも何か悪い気がしてね。
―でも、余計にエロさが増した様に感じるのは気のせいだろうか。
『♥―あっ、』
ロリ神様が躓いてよろける。俺は咄嗟に肩を抱き、転びそうになるのを止める。
「大丈夫ですか?」
『♥えぇ。この身体で長い時間歩くのは初めてなので…。』
「そうだったんですか。じゃあ、おんぶします?それとも抱っこの方が…?」
俺をじっと見つめるロリ神様。あ、いけね。つい幼女姿だからって、神様をおんぶとか抱っことか、何言ってんだ俺は。(汗)
「♥いえ、歩きます。『私達』みんなで築いて行くこの世界を…、自分の足で踏みしめたいのです。」
流石、言うコトがカッコイイなぁ。
でもやはり、見るからに足取りが危なっかしい。俺はロリ神様の手を取って、横になって歩くコトにした。
ほんのりと頬をピンクのブラシで染めるロリ神様。
「うむむ。皆の者、あれを見たか?」
「とうとうこの日が来てしまいましたかね…。」
「…神様、嬉しそう。」
街の通りは俺達の凱旋の噂を聞き付けて、どんどん人が増えて行く。
そしてギャラリーは次々に声を上げる。
「おい、見ろよ!ロリ・カイザーがまた幼女を増やして戻って来たぞ!」
「しかも全員、裸同然だよ!」
「ちょ…、彼の隣にいて手を繋いでいるのって神様…だよな?」
「神様まで同じ格好してるってコトは…、」
「まさかロリ・カイザー、遂に神様まで下僕にしちまったのか!?」
何かとんでもない誤解が飛び交っている!?(汗)
『♥―成る程。これは使えますね。』
―すっごく嫌な予感しかしない…。
俺達は街頭のお立ち台に登る。辺り一帯は黒山の人だかり。
―公開処刑だな、コレ。
ロリ神様は先の『ロリ・カイザー指名手配』の発布は自分の誤り(というコトにした)であり、
俺が無実であると宣言してくれた。
―そこまでは良かったのだが、
『♥私は罪を償うために暫しの間、この青年のパーティーに加わる事としました。』
「「「「「ええええええええーーーーっっっっ!!!!」」」」」
観衆は驚天動地。俺達も驚天動地。聞いてないよぉおおー!!
ロリ神様は、あんぐりと口を開けてる俺に向かって小声で、
『♥実は、長期間身体を奪われていたので、この身体に再度慣れる時間が必要なのです。』
「そ、そうなんですか…。」
「かみさまといっしょっすか!たのしそーっす。」
そこに、お立ち台の下、最前列に見知ったヤツが駆け寄って来た。
「おぉう!何という眼福!!某は、今日この日のためにこの世に生を受けたのでござるな!デュフフフフ!!」
武器屋のニート息子か。最後の最後、滑り込みで出番あったな。(苦笑)
「お前、何かちょっと雰囲気変わったな?」
「フッ…。今までは『働いたら負け』と思っていたでござるが、ロリ・カイザー殿を見て気付いたでござるよ。
幼女にモテるには、正しい勇敢な行動あるのみだと!某の人生、これからでござる!!」
うん。本当にオタクの鑑だよ。お前は。
みんなも互いの顔を見て笑みがこぼれる。だが、フッとワイズィがつぶやく様に言う。
「―でも、スレイがいないと何だか拍子抜けしちゃうわね。」
「スレイがここにいるロリ神様だったと分かっていても、それは…あるかもなのです。」
みんなもそれを思うと、ちょっとしんみりムードだ。
そうだなぁ。あの喧しさが、今となっては何故か懐かしい。
『♥あの身体は完全に消滅してはいません。』
「え?どういうコトですか?」
『♥私がこの身体に戻った事で、この世界に1つ、魂の器の『空き』が出来たという意味です。
不幸にもまだ死ぬべきではない者の魂があれば、きっとそこに宿ることでしょう。』
「―それって、つまり…、スレイが…?」
『♥この世界のいずこかに。』
俺達は一様に喜びにどよめく。
そうか。この世界のどこかに『アイツ』がいるのか!
魂が違うってコトは、多分、俺達のコトを覚えていないのかも知れないけれど、
また出会えて、また仲間になって、また冒険出来たら良いなぁ…。
更にロリ神様は思い出した様に言い加える。
『♥そうそう、それと…、』
「何でしょうか?」
『♥消し神にああ言った以上、疑われぬ様、早急に既成事実化しなくてはなりません。』
「何をですか?」
『♥貴方達の、子供です。』
スタンド発動。俺の時間が止まった。
そして時は動き出す。猛然と俺に群がって来る幼女達の圧で。
「け、ケインさん!わ、私、その、頑張ります!!」
「ボスー!こんどこそ、できちゃうっすねー!」
「うむ!余は最低10年間、毎年主の子を産むと宣言したからのう!!」
「…マスター。マーシャ、マスターとの赤ちゃん、一杯産む。」
「だ、旦那様!不束者ですがヨロシクお願いするのです!」
「ダーリン、アタシが必ず幸せにしてあ・げ・る♥」
「これはこれハ。今日ハ、お赤飯ですネ。」
覚悟を決めろと運命が俺に言う。ロリ神様は俺に向けてにこやかに仰った。
『♥貴方に神の加護を。』
街に溢れ返る鳴り止まぬ『ロリ・カイザー』コール。幸せそうに微笑む幼女達。
どうやら、まだまだ平穏な日々は望むべくも無さそうだ。
俺はようやく登り始めたばかりだからな。この果てし無く遠いロリコン坂をよ…。
「―この世界に来て、本当に良かった。」
〈 END 〉
お付き合い下さり、ありがとうございました。




