11「神々の斗い」その2
向き合う『神様』とスレイ。
スレイが神様なら、『神様』の格好をしてそこに立ってるのは誰なんだ?
今度は神様のニセモノが出て来たのか!?
「♥ニセモノじゃあ、ありませんよぉー。」
うわっ!心読まれた!!間違い無い!!俺の知ってる神様だ!!
そう言えば、スレイは時々こんな場面あったよなぁ…。やっと理由が分かったよ。
「♥ケイン様ぁー、ココがどこだかお忘れですかぁー?」
「え?ここって…『神々の住まう場所』…。あぁっ!!『神々』!?」
「♥ピンポーン! いつから神は1柱だけだと錯覚していましたぁー?」
この世界には複数の神様がいたのか!!
「つまり、スレイがダーリンの知ってる本来の神様で、そこにいるのは全く別の神ってコトなのね?」
「オイラ、ワケわかんなくなってきたっす…。」
「スレイ…神様は、なぜケイン殿や私達に同行されていたのです?」
スレイはまた誰かの様に、唇と顎の間に人差し指を添えて「♥うーん、」と唸りながら、
「♥話すと長くなりますがぁ―、あんちくしょーのやり方が気に食わなかったからですぅー。」
そう言ってスレイ…神様は、向こうにいる『神』に指を差す。
「それってどういうコトですか?」
プリスの問いに応える様に、スレイに「あんちくしょー」と言われた『神』は俺に向かって言い放つ。
『そこの男。お前はこの世界にあってはならぬ存在なのだ。』
「お、俺!?」
「馬鹿な!!主がこの世界に不要じゃと!?」
「聞き捨てならないわ!!」
「…あやまれ! マスターにあやまれ!」
俺の前にみんながワラワラと集まって来る。それも意に介さず『神』は言葉を続ける。
『お前はこの世界の人間では無い。これ以上この世界に干渉し、理を変え続ける事はまかりならぬ。』
―確かにこの世界は、俺が転移して来たコトで理が改変され、
日本語や日本の通貨、文化などが入り混じった妙な世界にシフトしている。
そしてこれ以上転移者が来ると、世界は矛盾を抱え切れなくなり崩壊する。―そう神様から聞かされた。
だから俺達は魔導都市にあった転送機を奪取して、これ以上の転送者が出ない様にしたのだ。
でもそれって、『俺1人なら何とかセーフ』ってコトじゃ無かったのか!?
『それは奴の独断である。』
『神』はスレイを指す。―うん、こっちの『神』も俺の心読んでる。もう俺のプライバシー、ズタボロ。
「♥それで勝手に全権を奪いますかね?こんちくしょーは。それこそ独断ですぅー。」
何となく話が見えて来たぞ。
「つまり、ダーリンがこの世界に存在するコトを容認した神様を無理矢理追い出して、
何があってもダーリンをこの世界から排除しようとしていたのが、そこにいる『神』ってワケね?」
「我々の知らぬ間に、神は入れ替わっておったのじゃな?」
「えー!?ぜんぜん、きがつかなかったっすよー!?」
「不条理極まりなイ、お話でス。」
「一体、何時から入れ替わっていたのです!?」
クルッとスレイが向き直る。
「♥魔導都市の連中があれこれ異世界から取り寄せていた時点で、要注意だと目を付けてはいたのですぅー。
ですが、連中はとうとう異世界の人間までこの世界に呼んでしまいましたぁー。」
「それが、俺…か。」
『我はその時点で警鐘を鳴らした。転移者を今すぐ始末し、世界の秩序を保つべきだと。』
「♥でも、『私』は見守るコトにしましたぁー。ケイン様が悪しき存在だと決まったワケではありませんからぁー。」
「…神様マジ天使。じゃなかった、神様。」
「♥そこから魔導巨人を倒した時までは『私』でしたぁー。でも、業を煮やしたこんちくしょーは、
可愛い『私』を無理矢理に引き剥がし、自分がこの世界の責任者に成り代わりやがったのですぅー。」
「横暴なのです!」
『我はあの魔導都市のエルフに啓示を授け、魔導巨人の沈んでいる位置と、直し方を教えてやった。
―が、あの所長はお前を殺せなかった。』
「―魔導巨人を復活させたのは『アンタ』だったのか!?」
「そこまでしてケインさんを亡き者にしようとするなんて…!!」
「じゃあ、きまいらとけるべろすのたいじを、オイラたちにたのんだのは…、」
『我だ。』
「あれも、危険なクエストで主を謀殺するためであったか!!」
「…カツ丼対決で中央都市の宿屋のお風呂に来たのは…?」
「♥あれは私ですぅー。スキを見て、一瞬ですが取り返してやったのですぅー。
皆さんが『神々の住まう場所』にいけば、こんちくしょーの思うツボでしたから、
安全のためにも、何としてでも中央都市に足止めしたかったのですぅー。」
そういうコトか…!!
「裏では凄い攻防がされていたのね…。」
「♥入れ替わったコトをケイン様にお知らせしたかったのですがぁー、同じあの『神』の身体を使う以上、
知られてしまう危険があって、詳細を伝えられなかったのですぅー。」
「それで、対決後にもう1回現れた時、『面白かった』って俗っぽい感想で違和感を伝えようとしてくれたのですね…。」
分かって来たぞ。キマイラとケルベロス討伐後に現れたのも、
「♥『私』ですぅー。」
やっぱり!!あの時、神様は俺達にこう言った。
『これからの冒険でも、辛く苦しい時があるでしょう。』
『貴方達が今まで培ってきたものを信じるのです。どんな苦境に打ちのめされようとも。』
あれは、『乗っ取った『神』の計略に負けるな!』というコトだったんだ!!
「♥でも、そこで取り返していたコトがバレてぇー、『私』は、身体を完全に奪われてしまったのですぅー。
そしてあんちくしょーは、ケイン様達に大嵐をぶつけやがったのですぅー。」
「あの天変地異かとも思えた突然の大嵐…。『神』の所業なら納得もいくというモノじゃ…。」
「―でも、俺は助かった。プリス達も助かった…んだよな。」
「♥はい。間に合って良かったですぅー。」
「あれって、かみさまのおかげだったっすかー!!」
「♥身体を失った『私』ではぁー、4人の幼女を漁村まで流れ着かせた後でぇー、
ケイン様の装備を外し、冒険者の町に向かう海流に乗せるだけが精一杯でしたぁー。」
俺の装備が外れていたのは神様のお陰だったのか!!あれで俺は沈んで溺れるコト無く漂着出来たんだ!!!
「―そして、私がケイン殿を発見したのです。
今、理解したのです!これは、本当に神様が与えて下さったターニングポイントだったのです!!」
アスミスは震えながら泣いている。
『度重なる邪魔が入り、お前は死ななかった。そこで我は古に作らせた兵器を使う事とした。』
「―!?待って下さいなのです!!まさか、それって…、」
『そこにいる戦闘用ゴーレムが、そうである。』
「エメスガ、オーナーを抹殺するためノ…兵器…!?」
『だが、また『前任者』の邪魔が入った。』
「神様が防いでくれたんだな!!それでエメスは放置されたままになっていたのか!!」
「成る程。あの天高くそびえる岩山を築いたのは、正真正銘、神の御業だったワケなのです…。」
あそこの関所を岩山で塞いだのも、俺を中央都市に行かせない様にするためだったんだな!
「♥身体の無い『私』がこれ以上この世界で活動するのは無理でしたぁー。
そこで、あんちくしょーにもバレない様に、大急ぎの一瞬で身体を用意する必要があったのですぅー。」
「それが、その身体…『スレイ』というワケか!!」
「♥神が分身体を作るタイムは、僅か0.05秒に過ぎません。では、制作プロセスをもう一度見てみましょー!」
「いや、それは良いです。」(汗)
「♥良くないですよぉー。そーやってプリスさん達の分身も、あんちくしょーが作ったんですからぁー。」
「それは良くないわね!!」
「全くなのです!!」
「同意せざるヲ、得ませン。」
「♥『私』はぁー、モデルのいないゼロから急いで作ったのでぇー、かなり大雑把な身体になりましたぁー。テヘペロ☆。
あ、でもでもぉー、ケイン様のお仲間の思い出が芯になったんですよぉー。」
「私達との思い出でが芯に?それってどういうコトでしょうか…。」
プリスたんが桜色の唇の下に人差し指を当てて、上目使いで考える。
―あ!!そうか!!
スレイの、唇と顎の間に指をおいて考える仕草。あれは、このプリスの癖だ!!
ボケ発言はマーシャ。脳天気なのはパトル。色っぽい部分がデヴィルラか!!
そして慌てて作ったため、スレイは「武器や魔法が全く使えない」「美貌と乳は数値MAX」「運は神様レベル」という
有り得ない程の滅茶苦茶なパラメーターになったワケか。(汗)
「そして私達と出会ったのです。」
「じゃあ、バザーの町で俺を手招きしたのは…、」
「♥ケイン様が困ってたのでぇー、ちょこっとお手伝いしましたぁー。」
奴隷船の情報が得られたのも、賭け腕相撲の場所に辿り着いたのも、スレイ…いや、神様が導いてくれていたのか!!
「♥正直、ゴーレムを直すのはどーかと思ったのですがぁー、ケイン様なら良い方向に向かうと信じましたぁー。」
「はいです!エメスは立派な我々の仲間なのです!!」
「そういうコトね。これもダーリンの愛の力よね。」
「皆様…、有難うございまス。」
その後の、奴隷船乗り場でのくじ引きで、入れていないハズの特賞を当てたのも神様パワーか。
となると、海域外なのにイカクラーケンが船を襲い、船が凪で進めなくなったのは…、
『我が仕掛けた。』
そこで風が吹いたのは、
「♥私ですぅー。」
『防人の塔』でのハゲ男とのバトルで、握手させたり、服をはだけて俺の立ち位置を変えたりしたのも、
「♥最低限のお手伝いですぅー。」
「では私の故郷、ドワーフの村へのツインモンスターの襲撃は!!」
『我が作り仕向けた。』
そうか!!あの騒ぎで1日ロスさせるコトで、俺達が中央都市に到着するのを遅らせて、
プリス達と会わない様に調整していたのか!!
「俺が屋上から落ちて、下にいないハズのスレイに助けられたのも、
俺以外に魔剣を触っても平気だったのも、スレイが神様だったからか…。」
「♥『私』はただ、ちょっと位置を移動したりぃー、物を浮かせて放っただけですぅー。」
『戯言を。』
中央都市に着いて、魔王国への即時出発を言い出したのもスレイだった。
神様は全て分かっていて、言い出せないながらも何とか俺を助けようとしてくれていたんだ。
「じゃあ、魔眼も出るって分かってて、そのモンスターを引っ張って来た!?」
「♥モチのロンですぅー。あんちくしょーのやりそうなコトを考えたら、1つはあった方が良いと思ったのですぅー。」
その後も、先走ったフリをして魔王国の門番と会話して、俺が指名手配になっている情報を聞き出したり、
森の中で『神々の住まう場所』へ飛べる魔法陣を作って、それを『見付けた』と言って来たり、
全部、神様が陰でフォローしてくれたお陰で、俺達は今ここにこうしていられるってワケか…!!




