10「幼女×幼女×幼女×幼女×幼女×幼女×幼女×幼女」その2
俺達は魔王国に向けて出発。
道中、気が付いたらスレイがいなくなってて、はぐれたのか?と思って辺りを探そうとしたら、
林の中からモンスターに追われて飛び出して来た。
モンスターは…、ヤケンレイビー2匹か。ノラドッグの上位種で、中級モンスターでは上ランクだ。
つーか、スレイは何で嬉しそうに走ってるんだ?乳をバルンバルン揺らして。
俺は思わずドワーフの村でもらった魔剣を手に取った。―が、
「♥あ、駄目ですよぉー!フツーに倒して下さぁーい!」
そのスレイの言葉でハッとした。そうだ、この魔剣は本当に危ない時だけのチート武器。
倒せる相手なら、自分の力で挑まないと。
機敏なヤケンレイビーは、素早い動きが苦手なアスミスには鬼門だ。彼女にはスレイを守っていてもらおう。
エメスとワイズィとで挑むコトに。
右に左に縦横無尽に駆け回るヤケンレイビー。
何とか1匹を仕留めたが、ここまでエメスの魔導砲もワイズィの魔法も無駄撃ちが目立ち、命中率が低い。
―と、突然エメスの動きがガクン!と止まる。
「いけない!マナ切れ起こしたわ!」
「げ!この状況でか!!」
俺の作戦ミスだ。エメスのエネルギー残量を見誤ってた。戦闘中の燃費が予想以上に悪い。
くそぅ、こんなコトなら、近接戦のみを指示するべきだった…!
「私がエメスに何か食べさせるのです!」
「駄目だ!アスミスは動かないでくれ!」
速度の足りないアスミスは動かしちゃいけない。壁に徹するべきだ。
かと言って、俺とワイズィ2人で抑えてるこの現状、どちらかがエメスの元まで行くのも厳しい。
どーすりゃ良いんだよ!!
その時、エメスが残り少ないエネルギーを振り絞ってガクガクと動き始めた。
そして足元に落ちている、倒した1匹目のヤケンレイビーの鉱石を掴むと―、
自分の口に放り込んだ!!ガリガリと噛み砕く音が辺りに響く!!
エメス、それドロップやない!鉱石や!!
フィイイイーーーン!!
その瞬間、エメスの身体から蒸気が吹き出し、今までのエンストが嘘の様に立ち上がった!
そして両手をデルタ型の剣に変えて、ヤケンレイビーに突進する!!
一閃!!ヤケンレイビーの4本の脚がすっ飛ぶ!!
エメスはそのまま地面に突っ込んだ。今のが最後の力だったか。
最大の武器である機動性を失ったヤケンレイビーは、もう敵では無い。俺とワイズィで十分対処出来た。
「いやぁー、エメス、助かったよ。本当に良くやってくれた。」
携帯食料をエメスに食べさせながら、俺はベタ褒めする。
あそこでエメスが自発的に判断して動いてくれなかったら、かなり危なかったもんな…。
「考えてみれば純度の高い鉱石は即ち、純度の高いマナですものね。」
「成る程。マナの急速充填には好都合、ということなのです。」
そういうコトか。でも、エメスは今までそんな素振りも見せなかったのにな。
「―美味しく無いからでス。やはり食事ハ、皆さんとご一緒が美味しいでス。」
俺達はそれを聞いて一様に笑った。
それは、ゴーレムのエメスがジョークを言ったからでは無く、
俺達との仲間意識を強く持ってくれているという喜びから来る笑いだった。
更に驚くコトが。何と、この戦いで2匹目のヤケンレイビーから魔眼が出た。
驚いたのは俺よりもアスミス達。
「えぇ!?これが魔眼なのです!?初めて見たのです!!」
「ちょ、倒したのって中級モンスターよね?魔眼って、最上級モンスターでも滅多に出ないハズだけど!?」
「中級モンスターから出る確率ハ、1万分の1以下かと思われまス。」
魔眼は心で思ったモノの在処まで飛んで行き、光って教えてくれる不思議な珠だ。
超レアドロップアイテムで、とんでもなく珍しいモノなのだが…、
「えーっと、みんな驚いてくれているトコロ、本当にスマン。実は…、」
「え?ケイン殿?」
「ダーリン…、まさか…、」
「うん。以前も中級モンスター倒して魔眼出した。これで2個目。」
唖然とするアスミスとワイズィ。そして、さも当然といったかの様なスレイ。
「♥ツイてますねぇー、ケイン様ぁー。」
「も、もうコレは、私の旦那様が凄いというコトで終わらせた方が良い気がするのです…。」
「そうね。ダーリンは異常。変態。ハイ、終わり。」
「ヘンタイは無いだろ!?」
そりゃあ、ロリコンという名の変態紳士だけどさ!!
そしてエメスが頬を染めて俺に言う。
「流石はオーナー。不利な状況でモ、最後まで魔剣を使わずに挑むそのお姿、素晴らしいでス。ポッ…。」
―あ!!テンパっててすっかり忘れてた!!(汗)
でも、もし倒すのに魔剣を使っていたら、マナが霧散してしまって魔眼まで消えていたかもな。
スレイの忠告を聞いたから魔眼がゲット出来たのか。もしかして、スレイは最初から魔眼が出ると判っていた!?
―まさかね…。
スレイは相変わらずニコニコと微笑むのみだ。
そして数日を掛け、俺達は魔王国の入口付近の茂みまでやって来た。
俺がこの国に何度も来ていて道のりに慣れていたせいか、予定より早かったな。
じゃあ早速、城門に行こ…あれ?またスレイがいない!?
「ケイン殿!あそこなのです!」
アスミスの指差す方向を見ると、スレイが1人で勝手に門番と話していた。
そして、また乳を揺らしながら戻って来る。
「おいスレイ、別行動しちゃ駄目だろ。」
「♥ごめんなさいですぅー。それよりケイン様ぁ、ケイン様は今、魔王国でお尋ね者ですよぉー。」
「何ぃ!?」
「どういうコトなの?」
スレイが門番から半ば色仕掛けで聞き出した話によると、
神様が魔王国に現れ、王や国民に向けて『ロリ・カイザーは神を欺いた反逆者』と宣言したらしい。
そして、それを受けて魔王国は厳戒態勢。城門を閉じ、魔族以外の出入りを一切禁じてしまったとのコト。
「そんな!何かの間違いなのです!!」
「ダーリンは神様と仲良かったんでしょ?一体何があったのよ?」
「俺が知りたい。」
えぇー?俺、何か神様の気に障る様なコト、したっけかなぁー?(汗)
キマイラ・ケルベロス退治以降、ここ最近は会ってもいないしなぁー。
「取り敢えず、結果的にはスレイが先走りしてくれたお陰で助かったわね。」
「あぁ。お尋ね者になってるコトも知らずにノコノコ行ってたら、速攻で捕まってるトコロだった。」
これも、スレイのカンストした運の良さの恩恵なのか…?
「でも、これからどうするのです?魔王国に入らなければプリスさん達の行方も、この騒動の詳細も判らないのです。」
「そうだよなぁ…。」
俺達が困ってると、そこにワイズィの一声。
「ダーリン。諦めたらそこで試合終了よ。アタシがいるでしょ?」
―え?
そう言われてワイズィを見ると、彼女はフードの上にある2つの三角型をした布…
今まで垂らして塞いでいた右側の布をたくし上げ、青肌を顔を覗かせニコッと微笑む。
そしてそれとは逆に、見えていた左側のペールピンクの肌を隠す。
そんな格好をして、どうしようというんだ!?
「どう?これなら魔族として門を通れるでしょ?」
その瞬間、俺とアスミスは目から鱗が落ちる。
「そうか!他の者なら門番を刺激するかもしれんが、青肌を持つ魔族なら門番も気を許してしまう!!」
「何という冷静で的確な判断力なのです!!」
「それじゃあ行って来るわ。」
「気を付けてな。俺のコネが使えなくなった以上、魔王様には会えないだろうからコンビニに行ってみてくれ。」
「『こんびに』…?」
「以前俺達が出店した中央通りにある店だ。まだ無事なら、情報発信基地として使われているかも知れない。」
「分かったわ。」
手短過ぎる説明だが、賢いワイズィなら上手くやってくれると信じられる。
残された俺達は、見付からない様に近くの森に隠れてワイズィの帰投を待つコトにした。
翌日の朝、ワイズィは戻って来た。身バレしなかった様で何よりだ…。
「ダーリン、あの『こんびに』って画期的ね。驚いたわ。」
「帰って来て第一声がそれか。」
「真夜中も開いてたから、大っぴらに出来ない情報が集めやすかったわ。―あら?スレイとエメスは?」
「あぁ、森にトイレだ。エメスは護衛で。」
「ケイン殿、そこは『花摘み』と言ってあげて欲しかったのです。」
ワイズィの得た情報によると、プリス達は確かにこの魔王国に来たとのコト。
それよりも前に一度、神様は魔王様のトコロに現れ、魔族全てを魔王国に集める様に言ったらしい。
「東の関所に魔族がいなかったのは、ソレか!」
「あの時に、既に事態は動いていたというコトなのです?」
「そこから先は、昨日スレイが門番から聞き出した通りね。でも、街の様子は至って普通だったわよ。
『こんびに』が閉められていなかったワケだし。」
あぁ、確かに。
俺を指名手配したのなら、俺と関わり合いのあるコンビニも閉店に追い込まれるのが当然の流れだもんな。
「『こんびに』の店員が言ってたわ。『魔王様はロリ・カイザー様をまだ信じておられるのではないか?』って。
だから神様の言うコトには一応従って、ダーリンの指名手配と厳戒態勢を発布はしたけれど、
それ以上は何も動きが無いのだろう、って。」
「プリス達はどうなったか分かったか?」
「それなんだけど…、神様と一緒に消えたそうよ。丁度、私達がここに着いた昨日に。」
消えた!? てか、また一歩遅れてすれ違いか!!
「何か、事態が迷走して来たのです…。」
「城には入れなかったから、残念ながら分かったのはここまでね。」
くっそー!あれこれ予想も付かないコトが多過ぎる!
今の俺じゃ考えがまとめられないな…。
「ワイズィ!プリス達、4人の行方が推理出来ないか?」
「うーん…、アタシはその4人を知らないし、情報も不足してるから難しいわね…。」
「そこを何とか!!知恵を貸してくれ!お前が頼りなんだ!」
「あ、アタシが頼り?…え、い、良いわよ。幾らでも役に立ってあげるわ。」
ワイズィは頬を桃色に染めて了解してくれた。
アスミスが小声で「チョロ過ぎるのです。」と呟いたが、それは今は置いておこう。
咳払い1つして、ワイズィが推理を語る。
「―まずその4人が、アタシやアスミス、エメス、スレイと同様に、
ダーリンのためなら生命も捨てられる覚悟がある女の子だと仮定するわ。」
うむ。そこまで大袈裟かどうかは兎も角、プリス達の俺への献身度は有難い程だった。
「だとすれば当然、神様の『ダーリン指名手配』の宣言には納得出来ない。」
「同意なのです。」
「となれば、するコトは1つ。神様への直談判。」
「直談判って…、神様相手に無茶だろ?」
「あら?アタシならするわよ?コトと次第によっては神様にタイマン張る覚悟あるわ。」
「同じくなのです。」
ワイズィの言葉に、至って真剣な目付きでアスミスが頷く。ワイズィは続ける。
「それで全員で消えたってコトは…、どこかに話し合いの席でも設けるツモリだったのかしらね。」
「神様が全員を連れて行き、尚且つ誰の邪魔も入らない場所…なのです?」
「――あ!!」
『神々の住まう場所』だ!!




