08「剣ヶ峰の里」その2
エメスのお披露目会になると思ってたら、モンスターだと!?
「迎撃はどうしたのである!?」
「それが、見たコトも無い強いモンスターらしく、戦闘系ドワーフの戦士達でも苦戦しているとのコトなのです!!」
見たコトも無いモンスターと聞いて、俺の脳裏にはあのキマイラとケルベロスが浮かんだ。
アイツ等にまだ生き残りがいたのか!?もしあの2匹だったら、普通の戦い方じゃとても敵わないぞ!?
これは俺達も行くしか無いか!!
「アスミス!案内してくれ!!エメス!ワイズィ!手を貸してくれ!!」
「畏まりましタ。」
「アンタの命令になら、いつだってイエスよ。」
「♥ケイン様ぁー、スレイはぁー?」
「そう言われても、お前は戦えないしなぁ…。そうだ、周りの非難や救護の助けをしてくれ。」
「♥かしこまっ!」
―え?今の、前にもどこかで聞いた様な…?
ええい!!今はそんなコトどーでもいい!!モンスター迎撃が最優先だ!!
俺達はアスミスに先導され、岩山の中に縦横無尽に掘られた通路を走って行く。
「アスミス、外じゃないのか?」
「山の上から出現したのです。現在、村の屋上にある広場で交戦中なのです。」
俺の元いた世界でもそうだったが、こういう急斜面に居住区を作った場合、日照権とか空間の利用とかで
大体は連なった建物で階段上の景観になる。で、下の建物の屋上は上の階の住民達の広場として活用されるワケだ。
「着いたのです!!」
屋上広場への門をくぐると、景色が開け屋外に出る。
ここは村全てが1つの施設になっている。だからその屋上広場も、テニスコート数面分の十分な広さがあった。
そこで俺達は、今まで見たコトも無いモノを目の当たりにする。
「何だ、ありゃあ!?」
斧やハンマーを手にした戦闘系ドワーフ達が戦っている相手。
それは、中級モンスターのヘビスネーク、ノラドッグ、
そして上級モンスターのイノシシボア、と、見慣れたモンスター達。
だが、それらが全て、2体が横に繋がっている!?
―航空機で『ツインムスタング』ってのがある。
ムスタングの改造機で、航続距離の拡大とそれに伴うパイロットの疲労問題を解決すべく、
手っ取り早く2機を横に繋げて1機の大型機にしてしまった機体だ。
コイツ等は正に、モンスターのツインムスタング版だ。
ツインヘビスネーク、ツインノラドッグ、ツインイノシシボア、とでも言えば良いんだろうか。
敵の勢力はツインイノシシボア1体と、その他10体程。
「こんなの初めて見たわ…!」
「ただの2匹分よりも遥かに戦闘力が高いのです。皆、押されているのです。」
こうして見ている間にも、ツインモンスターの群れに次々に跳ね飛ばされていく戦闘系ドワーフ達。
早く俺達も加勢しなくちゃ。
「エメス、魔導砲で―、」
「待ちなさいよ!!魔導砲じゃ威力が高過ぎて、外れたらこの岩山に風穴が空くわよ!?」
「うっ、そりゃマズイ。…ならエメス、近接戦になるけど、何か手段を持ってるか?」
「少々お待ち下さイ。……該当あリ。使用可能でス。」
そう言うと、エメスの右手が腕の中に引込み、そこから代わりに鋭いデルタ型をした刃が出てきた。
「おぉう!言ってみるモンだ!」
「オリハルコンの刃なのです。これならモンスター相手でも十分に戦えそうなのです!」
「よし!エメス、まずは確実に敵の数を減らす!ツインヘビスネークとツインノラドッグから相手を頼む!」
「ツイン…それがあのモンスターの名称ですカ。畏まりましタ。」
俺の命令を受けてエメスは駆け出し、ツインモンスターとの戦闘に入った。
「ゴーレムは毒や睡眠、麻痺がほぼ無効だそうです。体力だけ注意すれば大丈夫なのです。」
「そういうトコは機械の強みだな。それじゃワイズィはエメスのサポートをしてくれ。」
「良いわよ。アンタと組めないのは残念だけど。」
言うが早いか、ワイズィは右手から雷撃魔法を放ち、ツインノラドッグにブチ当てる。
敵はもんどり打って倒れるが、すぐに立ち上がる。
「何ぃ!?中級魔法で倒れない!?」
「アスミスの言った通りね。2匹繋がったコトで、体力や防御力も相乗して向上してるみたい。」
本来のノラドッグは中級モンスターで、中級魔法で十分対処が出来るハズだ。
でもコレは、どう見ても上級モンスター以上のステータスを感じさせる。
見れば、エメスの一撃がツインヘビスネークの牙に弾かれている。
戦闘ゴーレムが振るうオリハルコンの剣でさえも、決定的なダメージを与えるには至っていない様だ。
「だったら『取っておき』を出そうかしら。」
ワイズィは両手に魔力を集め、右手に雷撃魔法、左手に神聖魔法を作り出す。
完全半魔の彼女だけに出来る、魔法の同時発動だ。
そして、その左右の手を合わせると…、
「!? 攻撃魔法と神聖魔法が融合する!?」
「同じ身体に宿る同じマナから得られる魔法だからこそ可能なのよ!!コレがアタシの編み出した『融合魔法』!!」
その言葉と共に撃ち出された魔法は、白く輝く神聖魔法の光を放ちつつ、雷撃魔法の放電を激しく纏う!!
融合魔法はツインノラドッグに命中し、2体分の身体を猛烈な閃光に包む!!
「アンタが言う『退魔』の効果に雷撃ダメージを追加してるわ!今ならヤツは動けない!!」
「分かった!!―エメス!今だ!!」
電撃と退魔で二重のスタンが入ったツインノラドッグに、エメスの右手の刃が振るわれる!!
一閃!!2つの頭は宙に舞う!!
「やった!!」
ツインノラドッグは光となって消滅し、2体分の鉱石が落ちて来る。
矢継ぎ早にワイズィは次の魔法を発動させる
「こういう芸当も出来るわよ!」
今度は右手に炎、左手に風の魔法だ。
左右の手が合わさり、融合された魔法は火炎の竜巻となってツインヘビスネークを襲う!!
それは業火の渦の中、空高く舞い上がり、周りにいたドワーフ達を驚かせる。
ここまでお膳立てしてくれりゃ、次に何をすべきかは俺にも判る。
「エメス!!炎が消えて落下して来るトコロを狙え!!」
「畏まりましタ。」
火炎竜巻が消える寸前、エメスは垂直にジャンプする。
そして、煙を燻らせて落ちて来るツインヘビスネークをすれ違い様に一刀両断!!
2つの蛇の頭がすっ飛び、光となり、そして鉱石がバラバラと落ちて来る。
「ワイズィ殿!!これは凄いのです!!中級魔法が組み合わさって、上級魔法と同等の威力になっているのです!」
「これ位やれなきゃ、賢者の末裔としての沽券に関わるわ。」
「これ位って…、多分、ワイズィにしか出来ないと思うぞ…。」
『ツインモンスター』に対抗したのが、ワイズィの融合魔法『ツインマジック』か。
目には目を、ツインにはツインを、か。
「エメス!ワイズィ!この調子で残りのツインノラドッグとツインヘビスネークを頼む!!
エメスは俺のいない間は、ワイズィの言うコトを聞く様に!」
「任せなさい。アンタの注文に完璧に応えてあげるから。行くわよエメス!!」
「畏まりましタ。よろしくお願いしまス。」
2人は、依然として苦戦中のドワーフ達がいる屋上広場の奥へと向かう。
「ケイン殿、我々は!?」
「俺達の相手はツインイノシシボアだな。多分、最上級モンスター並の強さになってるだろうけど。
取り敢えず何とか足止めをして、エメスとワイズィが来るまで被害の拡大を防ぎ、持ちこたえよう。」
「承知したのです!!」
戦闘系ドワーフは、小柄だが筋肉が発達していて見るからに精悍だ。
大きな斧やハンマーを自在に振るい、どんな相手にも果敢に攻めて行く。
それがツインイノシシボアの突進1つで、何人もの戦士達がまるでストライクを取られたボーリングのピンの様に弾け飛ぶ。
それでも、激突の瞬間にに当たりどころを変えて、致命傷にならない様にしているのは見事と言う他は無い。
俺はヘナチョコだし、アスミスも戦闘系では無い技術系のドワーフだ。
足止めするとは言ったものの、俺達でどうやってこのモンスターを食い止めりゃ良いんだ…。
「ヤツは真っ直ぐ突っ込んで来るから、寸前で横にズレて攻撃すれば良いか?」
「ケイン殿、残念ですが、そこまで機敏な対処は我々ドワーフでは難しいのです。」
あ、そうか。ドワーフは筋力は高いものの、素早さが低いんだった。
だから戦闘系ドワーフ達は、ヤツの突進を正面から迎え撃つ方法しか採って無かったワケか…。
くそぅ、こういう時にマーシャみたいな素早い格闘家がいてくれたらなぁ。
つくづく強敵とやり合うには、多種族混合のパーティーの方が良いと痛感させられるわ。
「そっちに行くぞ!!」
突然、戦闘系ドワーフの1人が叫ぶ。
ツインイノシシボアが急ターンして、こちらに突進して来た!!コイツ、直進専門じゃ無かったのかよ!?
俺はアスミスに打ってもらった剣を構えようとしたが、時既に遅し。
ドガァアアッッ!!
「うわぁああああーーーーっっ!!」
俺はツインイノシシボアの4本の牙にすくい上げられ、空中高く飛ばされてしまった!!
「ケイン殿ぉおおおーーーーーっっ!!」
「嘘っっ!!」
アスミスとワイズィの叫び声が上がる。
そのまま俺は屋上の柵を超えて、地面に向けて落ちて行く。
こんな時だが、俺はとある言葉を思い出す。
『たった数メートル、否、数十センチでも、人は受け身が取れなければ死ぬ。』
そんな記述を見たのは災害関係のサイトだったか、スタントマンの特集番組だったか。




