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ゲーム

「さて、静かになりましたね。どうでしょうか、ひとつゲームをしませんか?」

「ゲームだとふざけるな。」

「私はあなたに馬鹿な真似を止めて欲しい、あなたは自分の計画を完遂したい。

でも、今のままじゃ、どちらとも思い通りにならずにお互いに損をする。

それくらいなら、いっそゲームで勝った方の総取りでどうでしょうか。私が勝てば装置を止めてください。あなたが勝てばあなたを解放します。どうですか?」

「選択の余地はないだろ、好きにしろ。で、なんで勝負する?」

「木製の将棋盤、初めて見ました。されるんですか?」

「知っているのか?」

「えぇ、私たちの世界にも、一応はあります、やってる人は私以外に見たことはありませんが、ルールが同じならいいのですが、どうでしょうあれで勝負するというのは」

「勝てると思っているのか?」

「そう思ってます、私、強いですから、」

「いいだろう、後悔させてやる。」

葵は将棋盤をテーブルに持ってくると、口頭でルールの認識の差異がないかを確認する。

「さて、問題はなさそうですので、始めますか、お互いに時間はありません持ち時間は無し、一手5秒ルールでどうでしょうか。」

「5秒、長すぎるな。」

「では3秒で、始めましょうか。では私から」

葵は駒を動かすと、それに答えるように間髪入れずにハルカワが打ち返す

「失策だったな。」

「何がです?」

「ゲームの選択がだ。お前は知らないだろうが、僕たちの世界では将棋は勝利が確立されたゲームだ。全ての打ち筋は計算され尽くし、人とコンピューターが戦えばコンピューターが必ず勝つ。」

「へぇ、そうなんですか。じゃあハルカワさんも負けてたってことですか。」

「馬鹿を言うな、もし、コンピューター同士が戦えばどうなるか」

「どうなるんです?」

「決着がつかない、千日手に代表されるように永遠に同じことを繰り返すだけだ。俺が打つということはそれと同じ結果を導き出す。」

「勝てないけど、負けない。それじゃ、3秒でも終わらないってことですか」

「違う、俺の頭脳は最高の将棋コンピューター棋帝と同じ頭脳だと言っているんだ。」

「棋帝?そうですかそれは楽しみですね。」

葵はハルカワの言葉など意に介さず、流れるように打ち続ける。

「あのハルカワさん。もし、なんでしたら私の先生になってくれませんか?レッカさんお願いして窃盗の件は無罪放免。司法取引的な感じで、全部なかったことに。

まだハルカワさんは世界を終わらせていませんし、衣食住はそれなりに保証しますよ。

ここでの生活も慣れればいいものですよ」

「馬鹿を言うな、なんでキサマらと一緒にくらさないといけない。この出来損ないが」

「そんなに私たちのことが嫌いですか?自分の汚点を見るようで」

一瞬ハルカワは手を止め睨みつける。

「私の作り出した新しい生命は完全だった。だが、薄汚いウイルスに犯され完璧は崩され、あろう事か人と交わり、穢された。私の芸術がまた、人間風情のせいで狂わされる。ロイドも、そうだ、あれは戦う為の道具じゃない。それだけじゃない過去に何度も、いつだってあいつらは争い、奪い、私腹を肥やすことしか考えていない。」

「完璧、ですか。」

「そうだ、争うこともなく、悲しむこともない世界を調和し、管理し数百億年続く宇宙の生命の時代を生き、やがては物質界の制約さえもふりはらい、宇宙の終焉さえも超越する可能性を秘めた存在になるはずだった。」

「と、いう妄想。」

「あ?」

「だって結果が証明しているでしょ。理想は遠くに人々と争いを起こし、そして負けた。」

「だからそれは、」

「それ以前にウイルスに敗れた。そして人に心揺さぶられ、人に惹かれ、堕落した(笑)。

つまりは完璧じゃなかった、負けたんです。結果が証明しています。

科学者でしたら現実を否定する前に事実を受け入れましょう。

必要なのは否定ではなく、検証と次に進む意志と改善策です。」

葵の打った手に、ハルカワは初めて思考のために手を止めた。

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