いざゆかん鬼ヶ島
葵との約束の日から遅れること2日目、レッカは日が昇る少し前に目を覚まし、外に出る。日が昇る前は荒野以上に砂漠のここは冷え込む。
「今日も徹夜?」
ガレージに入ると葵は既に生き生きと作業を続ける
「寝てますよ。3時間も寝れば十分です。」
「昨日のテストはうまくいったけど、まだ気になることが?」
「ピキューンと来たので、改良です、旋回速度の向上と小回りがききやすくするようにです。双葉さんの腕前ならピーキーな仕上がりで大丈夫そうでしたので。」
「ありがとうな、協力してくれて、」
「いえいえ、お気になさらず。少し遅れてすみませんでした。ちょっとこの子強情で、」
「ううん、ありがとう。ところで、やっぱり付いてくるつもり?」
「それはもちろん、あぁ、自分の身は自分で守りますからなんとかして、ラグナロクの中身を見たい、それとそのハルカワっていう人にあってみたいんです。」
「彼は危険だよ。」
「そうでしょうか、立派な科学者さんだと思いますけどね、」
「葵ちゃんは彼が許せるのか?君たちを殺そうとしているんだよ。」
「許すだとか許さないとかそういうことじゃないですよ。別に許したからどうなるわけでもない。彼は科学者として責任を取ろうとしている。私たちは生きるために彼を止めようとしている。それだけです。」
葵は作業を終え白衣を脱ぐと飛行機の翼に腰掛け、横に座るように手で翼を叩く。
「科学は非情にあるべきだ。なんてことは言いません。科学だって人の幸せのためだったり、探究心だったり、時には復讐心だったり、そういう思いが発想の根幹になります。
ハルカワさんの場合、人の理想の姿を私たちに追い求めた。でも私たちはそうならずに、昔の人間は大切な自分たちの星を出て行かざる得なくなった。
もし、非情な人なら、だからどうしたですよ。でも、ハルカワさんはそれを取り戻そうとしている。彼からしてみれば私たちは自分の手で生み出してしまった化物そのものです。
星を奪った侵略者。多分交渉しようっていう発想はないんだと思います。
だからまずは話して認めてもらうんです、共存の可能性だってある。
あぁ、もちろん私たちは死にたくないですから、それにこだわる必要はありません。まずは、ラグナロクの兵器を止めることが最優先です。でも、それとハルカワさんと話し合うってことは矛盾しないと思います。止める=殺すじゃないですから。
レッカさんは少し緊張の糸を緩めませんか
鬼ヶ島が現れたのは結構前ですけど、私たちはその近くに住んでいて今もこうして生きている。それに今もこうして生きているっていうことはそういう可能性も0じゃないって、」
君はすごいな、レッカは素直に感心し、彼女の頭を撫でる
「こういうのって好きでもない人にされても嬉しくないんですよ。」
「そうなの、ごめん、サクヤはこうされるの好きだったから、それに月子も喜んでたし。」
「鈍いですね。だからそういうことなんですよ。さて、少し早いですが、そろそろ行きますか」
葵が立ち上がり見つめる目線の先には二人の姿が、
「そうだね、でも、ちゃんとご飯食べてからな、みんなで、」
「えぇ、そうしましょう」
ごちそうさまでした。全員で片付けをして、準備を整え、葵の飛行機に乗り込む。
「さて、それじゃ、準備はいいかい?」
双葉は操縦桿に手を置き、天技を発動させるエンジンのとは良好、風もなし、空も快晴、絶好の飛行日和だ。
レッカが遺跡から回収したもので作ったエタニティドライブの残粒子を検知するレーダーを頼りに、飛行機は空を翔る。レーダーの精度は良くはないが、それでもたどれないことはない。予測到着時間は1時間後。その時間が一度引き締まった緊張感が緩んでくる。
「まぁ、少年、私は君に頭を撫でてもらったことはないが、」
「聞いてたんですか、というか、して欲しかったんですか、」
「そういう発想はなかった。」
「そうですか、だったら帰ったらお楽しみということで、」
「なぁ、レッカ、これが終わったらどうするんだ。今も元の世界に帰りたいのか」
「そうだね、そういう気持ちがないといえば嘘になる。でも、ま、どうだろうな、まずは目先のことだけに集中したいかな」
「ま、私はどこまでもついて行くけどな。」
「あ!見えてきましたよ!近くでみるとおっきいですね!」
ずっと双眼鏡を覗いていた葵が、レッカの頭に手を置き前のめりで前方を指す。




