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第九話 二人の編入生


 あたしがカイムに会ってから、一週間が経った。

 魔王さまは、あたしが「ワープの魔法」で連れ帰った。


「これなら、魔王城にも遊びに行けますね!」


 と、カイムが言ったので、


「あたしでよければいつでも行き来してあげるから!」


 ……って言ってやった。

 クソオヤジは……どうでもよくて覚えていない。

 ただ、とある技術を盗むために、何日か会話はしたけどね。

 

 そして今日、あたしたちは魔導学校に編入生として入学する。


「はい。それでは二人とも、入ってきてください!」


 先生がそう言うので、あたしは廊下でつぶやく。


「いくわよ、カイム」

「うん……」


 そうして、カイムと共に教室に入った。


「「失礼します」」


 みんなが拍手するけど、あたし的には、正直耳障りだった。

 そう思っていると、先生が叫ぶ。


「静粛に!」


 ピタリと拍手が止んだ。

 そのときあたしは、ものすごく清々しい気持ちになった。


「では、フレイルさん」

「はい! 魔王さまに育てられた勇者の娘、フレイルです。よろしくお願いします!」


 教室には拍手よりも、驚愕する「えぇっ!?」って言葉の方が響いた。


「ただし、カイムに近づいたら覚悟しておくように」


 まずは悪い虫がくっつかないようにしないと。

 そう思ってした発言は、教室を静寂に包み込んだ。


「で、では、カイムくん」

「はい……! かつての勇者に弟子入りした魔王の息子、カイムです……! えーと、ぼくには目を合わせないでください! 触るのもやめてください! それから、チラチラ見るのも禁止します! ぼくは世間知らずなので、魔族としてではなく人間として生きたいんです! だから、意識しちゃうので、話しかけるのもできれば来週あたりから……」

「カイムくん!」

「はいっ!? なんですか?」

「カイム、単純に長いから。もっとシンプルに!」

「ああ、うん。要するに、友達募集中です!」


 カイムのこの発言に、クラスメイト全員が笑い、カイムは恥ずかしそうにしていた。

 このとき、あたしはカイムのことを、「かわいい」と思った。


「では、解散! 中等部に上がったからって、浮かれないように!」

「「「はーい」」」

「あと、カイムくんとフレイルさんの席は隣同士で、空いてる席に座ること! 以上!」

「「はい!」」

「それでは、授業は十五分後に開始するので、できるだけ騒がないように」

「「「はーい」」」


 入学するとき、クソオヤジに、「二人の席が近い方が、馴染みやすいと思いますよ」って言わせたのが役に立ったようだ。

 先生が教室から出ていくと、空いてる机に二人して座る。

 そして、あたしたちは二人で話す。


「フレイルさん……じゃなかった。フレイル、学校って面白そうだね」

「魔界の方が面白かったけど?」


 カイムの敬語はなんとか矯正した。

 まだ危ういけど、大丈夫でしょ。あたしはそう判断した。

 それに、カイムにも友達はできるだろうからね。


「ぼくもそう思う。でも、魔王になるんだし、こういう場所も学ばないとね!」

「……そうね! まずはあたしたちが『普通』に慣れないと!」


 そう話し合いしていると、カイムの机に人が集まる。


「転校生だよね!?」

「編入生だけど……?」

「みんなで話そうよ! カイムくん、隈すごいね! 寝ないの?」

「寝てるけど、ぼくは魔族なので……」

「魔族……実在したんだ!」

「背中の二つの剣って本物?」

「あ、はい……」


 なんか、カイムの方ばっかり話しかけられるなぁ……

 ま、いっか。

 そう考えていると、あたしも話しかけられたので、適当に受け答えする。


「フレイルさん! 勇者様ってどんな感じ?」

「……サボり魔。国王だけどね」

「マジで? 面白そう!」

「娘としては最悪だったよ。魔王さまの方が構ってくれたし!」

「魔王優しいんだ!」

「すっげぇギャップ!」

「それから、魔王軍の方が優しかったりするのよね」

「ふーん! 勇者様と魔王って仲良いの?」

「うん!」


 そんなふうに会話していると、あたしに近寄ってくる男がいた。


「それよりさぁ、フレイルさんって綺麗だよねぇ……よかったら、俺と付き合わな……」


 男はあたしの首筋を撫でてくる。

 あたしって、クソ野郎にモテるなぁ。

 そう思いながら「光の剣」を創ろうとしたら、いつの間にかカイムが剣を抜いていた。

 しかも二本も。


「……い?」

「フレイルに触るな。首を落とすぞ?」


 カイムの剣は交差させていて、クソ野郎の首を落とす寸前までいっていた。

 二本の刃先が完全に首へ触れていたからだ。


「す、すんませんした! もう近づかないので、許してください!」

「約束は……」

「守ります!」

「よし……行っていいよ」


 カイムの「行っていいよ」が軽快な発音だったのに、周りは「魔王の息子」がヤバいやつ扱い。

 って、そんなことより……


「……カイム、やるじゃん! ま、あたしもぶっ飛ばしてやりたかったけど!」

「うん。だって、フレイルは大切な人だから。……ぼくたちは、ライバルだもんね!」

「うん! ま、いまはね」

「い、言っておくけど、ぼくにはまだその気はないからね!」

「はいはい……」


 そんな会話をしていると、教室中に歓声が響く。


「魔王の息子半端ねぇ!!」

「あのチャラ男の首、血ぃ出てたけど、その剣マジもんなんだな! すっげぇ!」

「あ、拭かなきゃ……!」

「いや、血って紙で拭くもんなのかよ! 面白いなお前!」


 そうやってカイムを褒める男子と、


「カイムくんかっこよかった!」

「カイムくんとフレイルさんって、付き合ってんの?」

「え? 許婚だけど……?」


 その発言に、再び教室に驚愕の声が上がる。

 と同時に、また質問責め。


「へぇー! やっぱ、魔王と勇者の子どもだから?」

「うん。親に決められたけど、あたしは乗り気。で、カイムは乗り気じゃない」

「だから! ぼくはこの気持ちが恋愛としての好きなのか、それとも尊敬なのか、それがわかったら進展させるって言ってんじゃん!」

「それっていつ?」

「それは、わかんないけど……」


 カイムが口ごもると、みんなが口を開く。


「フレイルさん! 私、応援するね!」

「魔王に育てられた勇者の胆力で頑張れー!」

「カイム、好きなタイプは? あ、フレイルさんか!」

「さっきはかっこよかったぜ! おれもあいつ嫌いだったからさー」

「いや、『人を嫌いになるのは、好きになる努力を怠ってるからだよ』って、フレイルが言ってたから、明日謝りに行くかな!」

「ははは! 明日かよ!」

「フレイルさんの格言? めっちゃかっけーな!」

「そういや魔王って、いまも悪さしてるの?」

「いまは休戦中。でも、ぼくが魔王を継いで、いつか世界の悪人を減らすんだ!」

「頑張れー、魔王Jr.!!」

「うん!」


 なんなのよ、みんなして! あたしだって魔王になりたいのに!


「カイム、あたしも魔王狙ってんの、忘れてないわよね!」

「うん! まずはフレイルが強敵かな!」

「剣抜いてるし、かかってきなさい! みんな、離れて!」

「おっ、なんか始まるぞ!! 机を後ろに運べー!」


 みんながスペースを開けて、見学する。


 こうして、あたしたちは戦う。

 あたしは窓側、カイムは教室の入り口側で、向かい合った。


「いくわよ!」

「いくぞ!」

「『魔力』……」

「『魔の力』……」

「「『解放』!!」」


 教室中の空気が紫色のオーラに包まれる。


「すごっ!」

「『魔力解放』って、高等部で習うやつだよね!?」

「カイムー! 頑張れー!!」

「せーの!」

「「「フレイルさーん! 負けないでー!」」」

「うん、ありがとね!」


 ……って、なんであたしが黄色い声援を浴びてんのよ!?


「よし、『有物質光技法』! 手裏剣!」

「なんの!」


 キンキンと、二本の剣で手裏剣を振り落とすカイム。


「『有物質光技法』! 光のあたし!!」


 教室は一瞬光に包まれる。

 そして、あたしは姿形があたしそっくりな分身を作り出した。


「なっ……!? 分身!?」

「あのときは失敗したから、クソオヤジに見せてもらったのよ! そして、それを盗んだ!」

「へぇ……! 師匠に!」

「いくわよ! 『有物質光技法』! 光の剣!」


 分身はあたしと左右対称に動く!

 まずは、


「足を攻撃!」


 分身と共に剣を振り下ろす!


 ……が、カイムは両方受け止める。


 しかし、ガチガチという金属音が教室に静かに響く中、ドアが開いた音がした。

 そう、ガラガラガラッっていう音がね。

 そして、それが先生だったので、あたしは反射的に会釈してしまう。


 が、その隙を狙われ、カイムはあたしたちを薙ぎ払う。

 あたしと分身は窓側へと吹き飛ばされ、

 膠着状態が解け、仕切り直すことに。


「いくわよ!」

「いくよ!」


 あたしはカイムの方へ前進!

 そして、あたしはカイムの真横に移動する。


 「光のあたし」もカイムに隣接状態だ。

 からの、


「『上下反転』! 発動!」


 分身の動きを変更させて、

 「光の剣」を上向きに振り上げるあたし。

 分身は下に剣を振り下ろす。


「うっとうしい分身だな……! 『紫電』!!」

「ここは引く!」


 分身がやられたら、カイムにはたぶん勝てない!

 それに、体力の関係もあって、一日一体が限度だ。


 教室中が一瞬だけ紫色に光った後、紫の雷が落ちる。


 分身と共に窓側へと下がり、分身と共に「紫電」を避けるあたし。


 ……どうにか紫色の焦げ目だけで済んだようだ。


「フレイル! なかなかやるね!」

「カイムもね! 前は引き分けたけど、今度は勝つ!」


 そういえば、カイムはあたしに「紫電」を直接撃てない!

 クソオヤジ曰く、「重傷を負うほどの威力」らしいから、そこを狙う!

 

 あたしはカイムに向かって突っ込んだ。


「なら、お父さんもできない、『ぼくだけの技』をやってやる!!」

「はぁ?」

「『紫電』……」

「ハッタリね! 撃てるはず……」

「『紫電』……」

「まさか……」


 カイムの目は本気だ。

 だけど、ここは……


「攻める!!」

「『紫電纏い』!!」

「なっ……!?」

「『マジカルソード』は、魔力を『溜めて』大きくなる!」


 剣が紫色の電気を帯びている……!

 ……そうか!


「……さっきのは『紫電』を流してたってわけね……!」

「その通り! よし、攻めるぞ!」


 カイムはあたしとの距離を詰めてくる。


「まずい! 避けないと……! でも、ここだと狭すぎて、『高速移動』ができない……!」

「遅い! 『紫電突き』!!」

「くっ……!」


 目をつぶって覚悟するあたし。

 でもカイムは、


「えいっ!」


 といったふうに、あたしにちょいと剣をくっつけ、すぐ離した。

 でも、一瞬触れただけなのに、「紫電」はあたしに帯電する。


「ぐっ……!」


 ビリビリと焼けるような痛みが全身に……!

 

「筋肉痛なんかとは比べものにならない……!」


 これは、帯電してるせいで、常に痛い!


 痛すぎて四つん這いになるあたし。


「フレイル」

「くっ、もういいや! あたしの負け!!」

「うん、ごめん。でも、お父さんに会ったとき、フレイルとの戦いを話してくれてね……」

「えっ?」

「ぼくも使うよ! お父さんが教えてくれた技! 『魔力吸収』!!」


 カイムがあたしの肩に触れると、「紫電」だけが吸収された。


「くっ……! また負けかぁ!」

「ごめんね、痛い思いさせて」

「いや、戦いってのは、そういうものでしょうが……」

「ていうか、前のは引き分けじゃなかった?」

「いや、しりとりのこと!」

「ああ、あれは……」


 そんなふうに会話していると、教室が拍手に包まれる。


「いい勝負だった!」

「感動した!」

「どっちもすげー!」

「先生! 中等部の生徒も、戦闘してもいいですかー?」

「それ賛成!」


 と、クラスメイトが笑ってた。

 カイムはというと、周りが静かになってから、先生に向かってこう告げた。


「チャイムが『紫電』のせいで聞こえなかったのか、授業時間を十五分もオーバーしちゃった……。先生、早く授業をしましょう!」


 対する先生は、怒りを表には出さず、すさまじい威圧感を出しながらこう言った。


「いい試合だったが、今日はこのクラスは昼休み以外、休み時間なしな!」


 それを聞いたあたしは、戦闘するときは、なるべく昼休みとかにしようと決意するのだった。

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