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第十話 帰還と勝負


 あの試合から数日が経った。

 中等部のみならず、高等部にも、あたしたちの名前は広まっているようだ。

 うわさだと、先生方からは問題児扱いらしいけど、授業は真面目に受けてるし、あたしは大丈夫だと思ってる。


「さてと、帰ろ? カイム!」

「うん、わかった」

「ちょっと待ってみなよ!」


 あたしたちが帰ろうとすると、金髪の男が邪魔をする。

 てか、クソオヤジの若い頃に似ててなんかムカつくな。


「どいて。てかウザい」

「ウザくて結構! おれはライト! ライバルの『ライ』に、『ト』だよ!」

「うっざ」

「フレイル、前のドアから出ようよ」

「あ、その手があったね」


 そうやって去ろうとすると、今度は茶髪でロングヘアのメガネっ娘が邪魔をする。


「あの、その……カイムくん! ……の話を、フレイルさんとしたいので、お邪魔してもいいですか?」

「は?」


 今度はなんだ?

 ていうか、カイムに気があるのかな? このメガネっ娘?


「ちょいちょい! 待ってクレヨン! おれを無視するなんて、虫が良すぎるぞ!」

「どうしよう、どっち選ぶ? フレイル?」

「……あーもう! だったらどっちも来い!」

「「「えっ!?」」」


 メガネっ娘とムカつくチャラ助とカイムが口を揃える。


「なんで? なんでそうなるの?」

「対消滅させる」

「いや、人じゃできないから! ぼく魔族だけど!」

「とりあえず、ライバルの『ライ』に『ト』の『人』。略してライヒトさんと、メガネっ娘、ついて来な」

「はい!」

「おいおい、そこはライトだろ! いや、レフトかな?」

「クソウザい」

「それより、今日はどこに寄るのかな?」

「あ、あの!」


 メガネっ娘が口を開く。


「ライヒトさんとカイムくんが邪魔です」

「っておーい! ライヒトってあだ名、継続かよ!」

「たしかに邪魔だけど、仕方ないじゃない。これから行くところで二人の時間作るから、黙ってついて来なさい」

「あの、普通に帰るんじゃないの? どこに行くつもり?」

「魔界」

「「「えっ!!?」」」


 再び声を揃える三人。


「みんなうるさい。いいから、それぞれ手を握って輪になって?」

「えー? おれ、『勇者』に憧れてるのに、魔界に行くのかよ!」

「わたしはドキドキしてます! カイムくんのお家に行けるから!」

「そうなの。ふーん……」


 そういえば、カイムって案外モテるよなぁ。

 あたしもそこそこモテるけど。


「それじゃあ、『ワープの魔法』!」

「おおお!?」

「きゃっ!?」

「うわっ!」


 光並みの速度に加速して、物体を透過する。

 その結果、どんな次元も飛び越えられる。

 それが、「ワープの魔法」だ。

 

「……到着! 魔王さま、会いに来たよ!」

「お父さん! 久しぶり!」

「おおっ、カイムか!」


 カイムが感動の再会ってやつをしている中、ここに初めて来た連中が騒ぎ立てる。


「ここが魔界の……どこ?」

「きっと魔王城ですよ! ふわあ、感激です!」

「魔王城に来ちゃったの!? おれ?」

「いまは……えーっと、昼前だから、みんないないよね?」

「うむ。皆、出払っておる」

「紫色の鎧が動いてる! しかも喋った!」

「すごいですねー!」


 なんか、魔王さまの扱われ方が面白いな。


「なんかわれ、見世物みたいになってないか?」

「ふふふっ、大丈夫大丈夫! それより魔王さま、今日は戦う?」

「お前とは何度も戦ったであろう。それに、われは忙しいのだ」

「ケチ!」


 ……あ、そっか。魔王さまも、愛する息子と話したいのかな?


「じゃあカイム、またあとで! 魔王さまと仲良くね! いくよ、ライヒト! メガネ!」

「は、はい……!」

「おれ、ライヒトっていつまで呼ばれるんだよ!?」

「一生。それより、『勇者の娘』の武勇伝、聞かせてあげる」

「マジで!? ついてくわ!」

「ちょっろ」


 こうして、あたしの部屋に向かう。

 すると、ヴァッサゴこと、じいやに会った。


「お久しゅうございます。フレイル様……と、ご友人方も」

「フレイルさん、このおじいさんは?」

「あっ、ワニだ! このワニはペットかな? かわいいじゃん! それで、じいちゃんはなんでいるの?」

「何故と申されても、魔王軍ですからな」

「じいや、またあとでね! あ、そうだ。みんなは夕方まで帰ってこないの?」

「そうでございますね、あと少しで全員帰ってくるでしょう」

「サンキュー! じゃ、行こ?」

「あの、いまのおじいさん、誰ですか?」

「予知ができる不思議おじいちゃん。たぶん幹部」

「「へー」」


 すごすぎて反応が薄くなってるな……。

 まあ、ギャーギャー騒がれるよりはいいか。


 あたしの部屋に着いたので、二人に目的を聞くことにした。


「で? 二人はなんの用?」

「おれは『勇者』志望! フレイルとカイムに、勇者さんのことを聞きたかった」

「呼び捨てかよ……。てかムカつくと思ったら、クソオヤジの真似してんのか」

「うす! 格好は『元勇者』をリスペクトしていまっす!」

「で? メガネっ娘は?」

「わたしは、『魔王』という分野に憧れてます!」

「……そんだけ?」

「はい! なので、カイムくんにお話を……でも、フレイルさんでもいいかなって」


 なんだその妥協は?

 もしかして、あたしに気があるとか? 魔族ならよくあることだし。

 ……って、それはないか。


「じゃあライヒト、どっか行って?」

「何その無茶振り!?」

「てか、メガネ! 名前は?」

「デボンです」

「デボン、は……話聞かれても平気?」

「はい!」

「よし。それじゃあ、何が知りたい?」

「『魔王』のすべてで!」

「わかった。魔王さまってね、偉いんだよ」

「……え?」


 あれ? 聞こえてなかったかな?


「偉いの」

「いや、聞こえてましたから。偉いこと以外は?」

「怖い顔と統率力が必要」

「はぁ……フレイルさん」

「なによ?」

「言っちゃ悪いんですが、説明が下手ですね……」

「この様子だと、武勇伝もショボそうだよな」

「……いいのかなー? そんなこと言って」

「「え?」」

「この城に置いていっちゃうよ? 五年くらい」

「はぁ!?」

「えっ!? それ、ほんとですか!?」


 脅してるつもりなのに、なんでデボンは嬉しそうなんだ?


「あたしはそれをクソオヤジにやられて、『家族』の温もりを知ったの」

「ふーん」

「はぁ……」


 あれ? ピンと来てないみたいだな。


「知ってる? 誕生日って、ケーキに年齢の数だけ蝋燭立てて、祝うんだって」

「え? 常識じゃん」

「……ですよね?」

「いいないいな! あんたたちは王族じゃないからなー!」


 寝転がって暴れるあたし。


「これはたぶん……」

「地雷を踏んだ感じですね……」


 そんな会話をしていると、窓が開く音がした。


「あ! ちょっと行ってくる!」

「どこに!?」

「魔王軍が全員集合する場面に!」

「あっ! わ、わたしも行きます!」

「えっ!? ならおれも!」

「うん! じゃああたし、先行くね! 『高速移動』!」


 こうして、「高速移動」の無駄遣いをして、集会に立ち会う。

 広間に出ると、どうやら到着したばかりのようだ。

 みんな座ってるし。


「よっ!」

「あ、フレイルさん!」

「おっす、アンドレアルフス! 略してアンちゃん!」

「はい! ワタシ、フレイルさんのおかげで……おっと、失礼しました。魔王さま」

「いや、よいぞ? 久々の対面だ。自由にやれ」

「ははー! ありがたき幸せ」


 ……なんだこれ?

 

 あたしが呆れていると、カイムがソファの上に立って宣言する。


「ぼくはカイム! 次期魔王になる男です!」

「はぁ? 言っとくけどそれ、あたしも狙ってるから!」

「まあ、その話はよかろう。それより、カイムと手合わせしたい者は?」


 みんなだんまり。

 そりゃ、次期魔王最有力候補のやつとなんて、誰も対戦したくないか。


「ならば、今日は魔王軍の指揮はカイムがとれ」

「「「なんなりとご命令を!!」」」

「えっ? じゃあ、今日は休日! いつもお疲れさまという意味を込めて、仕事をしたら……そうだな、一発デコピン!」

「「「はっ!」」」

「かわいい処罰だな……」


 そうつぶやくと、カイムがソファから降りて、あたしの方に来る。


「えいっ!」

「いてっ! ……なんでデコピンしたのよ?」

「フレイルも魔王軍だから。生意気なことは言わないこと。悪口もデコピン!」

「なんじゃそりゃ。……まあいいや。じゃあ、アンちゃん?」

「はい! なんでしょうか?」

「あたしと手合わせ……」

「……勘弁してください!」

「ダメか……」


 魔王さまや魔王軍のみんなに自慢したかったのになー。

 あたしも強くなったって!


「ならフレイル、ぼくと組み手しない?」

「え? いいけど……」

「Yo! またあれが見れちゃうのかヨー!」

「あっ……魔王さん、お邪魔してます」


 あ、ライヒトとデボンのこと忘れてた……。


「うむ。せっかくだから、キサマらもよく見ておけ」

「うす!」

「はい!」

「「「はい!!」」」


 こうして、ライヒト、デボン、魔王軍のみんなが、魔王さまの座っているソファの後ろであたしたちを見守る。


「いくよ、カイム!」

「来て、フレイル!」

「『魔力』……」

「『魔の力』……」

「「『解放』!!」」


 魔王城の広間が、紫色のオーラに包まれる。


「おおっ! カイムは当然として、フレイルもここまで濃いオーラになったか」

「うん! あたしだって強くなってるのよ!」

「ぼくもだよ! お父さん!」

「では組み手……始め!」

「いくよ! いままでは狭い場所ばかりでできなかった……『高速移動』!」


 一瞬でカイムの背後に回る。

 久しぶりでちょっと内臓が揺れたけど、すぐに慣れた。

 そんで、


「おりゃあ!」

「え……!? どへっ!」


 あたしはカイムの背中を蹴り上げて、転ばせる。


「『有物質光技法』! 光の剣!」

「ま、まずい……!」

「ふっ!」


 うつ伏せになっているカイムに剣を振り下ろす。

 だが、カイムはすぐに振り返り、光の剣を白刃取りする。


 ギチギチと剣が揺れる音が静かに鳴り響く。

 でも、カイムは奇策を思いつく。


「あ、そうだ! 『魔力吸収』!」

「えっ!? あ、そっか! 魔法も吸い取れるのか!」

「出力最大!!」

「くっ……! 『高速移動』!」


 あたしは光の剣が吸収されたので、距離を取る。

 それにしても、吸収されるのか……

 ならここは、中距離でいく!


「『有物質光技法』! 光の槍!」

「そう来るか! なら、剣を抜く!」

「させるか!」


 カイムが剣を抜こうとするが、槍で突き、抜く隙を与えない。

 普通にかわされてるけど、これでカイムは後手に回るはず!


「くっ! だが、これでもぼくは魔導剣士だ! フレイルにできるなら、ぼくにもできるはず! 『有物質雷技法』! 『紫電』!」

「まさか……!?」


 これはあたしが子どもの頃に、クソオヤジから伝授した超高等技術だよ!?

 あたしは一瞬びっくりして、棒立ちになってしまう。

 そんなふうにカイムを眺めていると……


「……と見せかけて、隙あり! 『マジカルソード』! と、『勇者の剣』!!」

「あ! 騙された!!」

「よし、これなら対等に戦えるぞ!」

「ズルだ!」

「ズルくない! いくよ、フレイル!」

「はぁ……『有物質光技法』! 光のあたし! 二人!」


 一瞬だけ広間が光に包まれたあと、あたしが二人増える。

 

「あれっ!? これ、あのときのやつだよね!?」

「そう! クソオヤジに直接コツを聞いたの! すっごく嫌だったけど!」

「だけど、左右対称に動く弱点が……」

「二人とも行け!」

「えっ?」


 分身二人が突っ込んでいく。

 あたし本体はというと……


「『有物質光技法』! 光の手裏剣! ふっ!」

「なんの!」


 カキンカキンと剣で叩き落とされる手裏剣。

 でも、


「右のあたしはカイムの胴体を、力いっぱい蹴って! 左のあたしはカイムの腹を殴りかかって!」

「くっ……!」


 カイムは二人の拳と蹴りを剣で受ける。

 でもね、クソオヤジから学んだのは、それだけじゃない!


「場所替え! 左のあたし!」

「えっ?」

「ふんっ!」


 カイムの頬を思いっきりぶん殴る。

 ドゴッという鈍い音が鳴り、

 衝撃がじわじわと顔全体へ広がったようだ。


 そして、カイムはぶっ飛ばされ、ソファにぶつかると同時に受け身を取る。

 勢いが良すぎて、ソファがひっくり返ったけど。


 それから、ソファの前のテーブルに乗っていた飲み物や、魔王さまのおつまみも、大半が衝撃で落ちてしまう。


「どうだ!」


 あれ? これ、初めてあたしが優勢だよね?

 勝ってるときって、めちゃくちゃ楽しいな!


「「「王子様!」」」

「こ、来ないで……! まだ、勝負の途中だから……」

「あ、そっか。カイムって王子なのか!」

「久しぶりに効いたよ……! フレイル!」

「マジパンダ以来だよね?」

「……そうだね」

「でも、無駄話はあと! 行け! 光のあたし二人!!」


 再び光のあたしが突っ込んでいく。

 しかも二人もだ。


「みんな下がって! ぼくは勝負に巻き込みたくない!」

「いいのかなー? 注意力が散漫になってるよ?」

「いいんだよ! 『紫電』!!」


 広間が一瞬、紫色の光に包まれ、次の瞬間、紫色の雷が降り注ぐ。

 でも、直撃した光のあたしたちは、すぐにあたしの姿を維持する。


「って、なんで!?」

「残念! そいつらの特性をクソオヤジに聞いたんだ! 分身は光! 光は攻撃されたとき、『質量のない光』に戻るんだ! ……ってね!」

「マジか……! それじゃあ、本体を倒すしかないな!」

「そして、あたしも『紫電』みたいな必殺技を作ったの! クソオヤジ直伝、『稲妻起こし』! ……を、さらに強力にした! あたしだけの必殺技!」

「ま、まずい……!」

「場所替え! 光のあたし!」


 あたしは場所替えをしてカイムに近づく。


「……からの、『雷電落とし』!!」


 天井の方がピカッと光り、その光はいかずちと稲妻を呼び起こす。

 上の方ではゴロゴロと雷鳴が響き、落とす準備は万端だ。


「カイム! 『魔の力』で思いっきり防御して! この技は、魔王さまとカイムの『紫電』を参考にしたから! 特に、威力をね!」

「ふっ……フレイル、今回はぼくの負けだね」


 カイムが笑った。


「いくよ! 『雷電落とし』!!」


 ピシャッという音のあと、落雷がソファと床を貫通した。

 けど、そこにカイムの姿はなかった。


「あれ? カイムは?」

「ぼくは後ろだよー」

「はぁっ!?」


 振り返ると、カイムを抱えた魔王さまがいた。


「お父さんが助けてくれたんだ!」

「ちょっと魔王さま! 邪魔しないでくれる!?」

「いや、だって……カイムがあれ喰らってたら、重傷になってたかもしれんし……」

「すごい威力だったよ! あれはぼくでもヤバかったかも!」

「ふふーん! でも、ようやくあたしもカイムに勝てたわね!」

「うん。いいライバルになったね、フレイル」

「なによ? その上から目線は?」

「いや、そんなことは……」


 そんな会話をしてると、魔王軍のみんなが拍手してくれる。


「王子様、よかったです!」

「フレイルさん! さすがっす!!」

「あのー、おれたち忘れられてね?」

「それより、あのときより激しい戦いでしたね! ライヒトさん!」

「お、おう!」


 ライヒトとデボンも拍手してるし……

 てか、カイムとの戦いに夢中で、存在を忘れてたな……。


「カイムー。明日って、学校あったっけ? ライヒトとデボンはわかる?」

「中等部からは、週二回休みができます! そして明日は休みです!」

「そっか。なら魔王さま! みんな泊めていい?」

「「えっ!?」」

「くれぐれも、部下たちの邪魔をしないようにな……」

「いいってさ!」

「フレイルは軽いなぁ……。ライヒトくん、と……デボンさん?もゆっくりしていってください」

「こら! 敬語!」

「あ、ゆっくりしてってよ!」

「よし」

「「お世話になります!」」


 こうして、ライヒトとデボンが、今日は魔王城に泊まることになった。

 いや、あたしとカイムもお泊まりするけどね。

 そして、初勝利の味を噛み締めるあたしだった。

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