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第七話 対面と対決

ここからが、物語の始まりです


 今日はものすごく久しぶりにお父さんに会う。

 なんでも、師匠の娘さんも「ワープ魔法」を使えるんだとか。


「『ワープの魔法』!」

「おっ、来た来た! おーい!」

「チッ!」


 あれ? いまあの女の子、舌打ちしたような……?


 って、そんなことより……!


「お父さん! お久しぶりです!」

「おおっ! カイム、会いたかったぞ!」

「はい! ぼくも、会いたかったです……」


 ぼくが寄り添うと、お父さんが抱き上げてくれた。


「よ、よう。フレイル」

「……クソオヤジ」

「えっ?」

「ふんっ!」

「いってぇ!!」

「ほら、どっか行ってよ!」


 女の子が師匠のすねを蹴った。

 実の娘じゃないのか……!?


「あの、ちょっと! あなた、師匠の娘じゃないんですか?」

「誰あんた? 気安くあたしに話しかけないで」

「なんですとぉ!?」

「落ち着けカイム。オレは足を蹴られただけだ」

「でも師匠! ぼくはこの子を許せない!」

「いいじゃない。やろうっての?」

「やってやります! 師匠、お父さん、見ていてください!」

「「はぁ……なんでこんなことに……」」


 頭を抱える二人をよそに、ぼくたちは場所を変える。

 そして、移動中……師匠の娘さんが口を開いた。

 

「魔王さま! できる限り応援してよね! クソオヤジは見なくていいから。どっかのドブでもすすってれば?」

「ねぇ、なんでオレ嫌われてんの?」

「うーむ、まさか外弁慶に育つとはなぁ……」

「やってやります!」

「いまのうちに吠え面かいてなさい、真面目くん」

「なんだと! この金髪ポニテ雑魚女!」

「は? まだ戦ってないじゃん! ここでやってもいいけど? この黒髪短髪で、真面目クソパンダ野郎のくせに! 寝てろっての! 隈がやべーくせに、イキってんじゃないわよ!」

「そっちこそ、エリートぶって偉そうにしないように! ぼくはあんたみたいな『感謝』の心得がないやつが大っ嫌いなんだ!」


 ぼくたちが言い争いをしていると、お父さんと師匠が先導する。


「それより、はやく試合場に行こうか」

「ですね! この女の子を痛い目にあわせてやります。『紫電』は直接使いませんが」

「は? 『紫電』を使えるのに出し惜しみって、もしかして舐められてる?」

「師匠に使うなって言われたんですー! 文字通りの必殺技なんでね!」

「フレイル、あまりカイムを舐めない方がいいぞ」

「クソオヤジは黙ってろって言ったわよね?」


 師匠の娘さんが異様な角度で首をかしげる。

 すごく睨んでるけど、何があったんだろう?


「オレ、娘が反抗期すぎてつらい」

「ドンマイ、クソオヤジ」

「仮面かち割るぞクソ魔王」


 こんな調子で、本当に大丈夫なのか……?


 そうしている間に、試合場に着く。


「ここなら修行場より広いし、やり合っていいぞー!」

「見ててください! 師匠! お父さん!」

「見ててね、魔王さま!」

「あの……フレイル、オレは?」


 こうして向かい合うぼくたち。


「じゃあ、いくぞ!」

「いくわよ!」

「『魔の力』……」

「『魔力』……」

「「『解放』!!」」


 互いに全身が紫色のオーラに包まれ、部屋中をオーラで充満させた。


「先手必勝! 『可視性暗黒技法』! 『暗闇魔法』!」


 ぼくは師匠の娘さんの視界だけを暗くする。


「真っ暗闇は魔王さまとの戦いで対策済みだし! 『聖光の加護』!」

「何っ!?」


 なんだ? 何をやったんだ?

 辺りの暗闇までもが解けた……!


「『有物質光技法』! 手裏剣!」

「師匠の技術!?」


 投げつけられた手裏剣を、とっさに剣で振り落とす。


「チッ……やるわね」


 当てに来たってことは、やっぱり見えてるな。

 さっきのセリフは、暗闇に対抗する策があったって意味だったのか!


「なら、『紫電』!」

「来なさい!」

「おい、その技は禁断の……!」


 なるべく当てないように……!


 ぼくは師匠の娘さんの背後に「紫電」を撃った。

 娘さんの背後で、落雷の音が響く。


「は?」


 よし、後ろに気が逸れた……!

 ……からの、突撃!


「まさか、いまのは囮!? 生意気ね! 『有物質光技法』、光の剣!」

「はああああ!!」


 ガキンガキンという金属音が、部屋中に鳴り響く。

 まさか「光の剣」を使ってくるとは……!

 だけど、


「師匠ほど、強くない!」

「あんたも、ね!」


 剣を交えて、互いの力が拮抗する。

 そして、大きく振りかぶった一撃がぶつかり合い、

 弾き飛ばされるぼくと師匠の娘さん。


「くっ、また間合いが……!」


 でも、師匠の娘さんは息切れしているけど、ぼくはまだしていないぞ!

 絶対に勝って、師匠のいいところを理解させてやる!


「はぁ、はぁ……埒が明かない! 『有物質光技法』! 光分身!」


 娘さんを中心にして、一瞬光ったと思えば、大量の人型の光が剣を持って襲いかかってくる。

 それに、師匠と同じ「有物質光技法」使いってことは、実体があるってことだ……!

 

「くそっ、どうしたら……! あっ、そうだ!」

「ふぅ! 魔力を分身に分配するからか、疲れるなぁこれ。いまさら知ったわ」

「『マジカルソード』! 中型バージョン! はああああああ!!」


 ぼくは回転しながら、文字通り剣二つを振り回し、光の分身を消していく。

 けど、だんだん分身が襲いかかってこなくなってきたな……!

 つ、疲れてきた……


 ぼくは回転斬りなんて、やり慣れていないからなぁ……。


「はぁ……はぁ……ならば!」

「……ふん、なかなかやるわね。けど、間合いがある限り、あたしの勝ちは揺るがない……」


 娘さんがそう言っている間に、ぼくはその背後から襲撃する。

 

「って……!? どうやって!?」


 やり方は簡単だ。

 壁に刺さるほど「マジカルソード」を大きくして、「マジカルソード」を壁に刺す。

 それから魔力を「勇者の剣」に集中させる。

 そして、縮小していく「マジカルソード」を掴んで背後を取ったって寸法だ。


 もちろん、魔力量の多いぼくにしかできない芸当だろう。


「マジパンダのくせに……!」

「略すな! ぼくはまだ許していないからな! 親に『感謝』しないやつは!」

「頑固ね。でも、そういう不器用な真面目さは……魔王さまに、似てる、か……も……」


 そう言って、師匠の娘さんはぶっ倒れた。

 そして光の人型も、呼応するようにフッと消えていく。


「えっ!? お父さん、この人は?」

「おそらく、ただの魔力切れだ。少ししたらまた起き上がる」

「そっか、よかった」

「それよりカイムよぉ、『紫電』は使うなっつったよな?」

「いえ師匠! あれ、囮ですから!」

「ま、当てなければいいか」

「なぜ禁じておるのだ?」

「詠唱なしで素の魔王クラスの威力だからだよ。もちろん、『魔の力』解放前提だから、まだまだ及ばないがな」

「だが、それでも大した威力だったぞ、カイムよ」

「はい!」


 お父さんに褒められた! 嬉しい!


「うーん……あれ? あたしどうなったの……?」

「引き分けです。それよりあなた、とんでもないですね!」

「は?」

「ぼくは! ぼくと拮抗できるくらいの相手が欲しかったんですよ!」

「は……?」


 ぼくと同格になるって師匠が言っていたのは、このことだったのか。

 その話を思い出しながら発言した。

 ちょっと照れくさかったけど、本心からの言葉だったから、胸を張って言う。


「師匠は格上だし、お父さんは戦ってくれないし! ぼく、感激です!」

「い、今さらマジパンダに褒められても、嬉しくないし!」

「ご、ごめんなさい」

「……でも、あたしも同じかな。周りは気を遣ってくるし、『家族』みたいなもんだから戦いづらいし、何よりあたしが強すぎて、みんなは守ってはくれても、倒しにくるやつはいなかったから、嬉しい。魔王さまなんて、一度も勝たせてくんないしさ!」

「師匠もです! グータラしてるくせに強いんですよ!」

「魔王さまは、いつも鍛錬?してるから、かっこいいよ! イケおじだし!」

「はい! お父さんはかっこいいです!」


 ここまで仲良く話せる人は初めてだ……!

 というか、同年代の人自体初めて話すかも!


「それで、娘さんの……」

「フレイル。……で、いいから。あんたは?」

「カイムです!」

「よろしくね、カイム」

「はい! よろしくお願いします、フレイルさん」

「それより、クソオヤジはあんたと一緒のときはどんな感じだったの?」


 ぼくは師匠の方をチラッと見てから、思ったことを口にする。


「そうですね。グータラで、怠けてて、強くて、指導には真剣な、大切な師匠です!」

「やっぱりサボってたのね」

「はい! 週に一日だけ!」

「おおっ! いいぞカイム! そのまま言ってやれ!」

「はい! 週に一日だけ、働くことがあります!」

「やっぱサボってんのね……! クソオヤジ!」

「面目ない……」

「あたしじゃなくて、大臣とかに謝りなさい!」

「それより、フレイルさんは? お父さんはどんな感じでした?」

「そうね……」


 よし、これでお父さんの話が聞けるぞ!

 と、期待するが……


「いい人!」

「……は?」

「だから、いい人だったよ?」

「そ、そうですか……」


 やっぱり親子だな……。

 なんというか、師匠と同じく雑だ。

 こういうときは……


「じゃ、じゃあ、一番仲が良かった人は?」

「アンドレアルフス。舎弟ね」

「アンドレアルフスさんが!?」

「初対面のときに、ザクッとね」

「刺しちゃったんですか!?」

「いや? あのときはまだ未熟だったから、刺してはいない。灼いたの」

「それ、余計ヤバいでしょ!」

「でも、いい人なのよ!」

「……はい、アンドレアルフスさんは頭の回転が速くていい人ですよね!」

「あとは、博識ってやつ?」

「あー、そういうところもありますね」


 なんだろう、同年代っていいなぁ……!


「あ、そうだ。カイム?」

「はい、なんでしょう師匠」

「フレイルよ。よく聞け」

「なによ?」

「まぁ、前々から伝えていたけど……」

「改めてここでいま言おう」


 ん? なんだろう?


「お前たちは……その」

「いくぞ勇者よ。せーの……」

「「これからはお互い許婚として扱うから、肝に銘じておくように!」」


 あ、そういえば……


「えーっ!? 今さらだけど、嫌! こんな黒髪短髪マジパンダ!」

「ぼくも嫌ですよ! こんなガサツで高飛車な金髪ポニテ女!」

「はぁ? 喧嘩売ってるのかしら? なら買うわよ?」

「ぼくの隈は元からなんですー! 魔族なんでね!」

「あら、そうだったの。徹夜して修行しないと弱いからだと思ってたわぁ」

「まあ、徹夜は何日もしたことあるけど……でも、まとめて寝るとスッキリしますよね!」

「わかる。魔族の連中暇すぎてトランプばっかりやるから、ポーカーフェイスが自然と身についたわ」

「話はいいか?」

「「はいっ!」」


 ぼくたちはついつい返事をしてしまう。

 


「じゃあ、積もる話もあるだろうし……」

「われらはこれで失礼する。また会おう、カイムよ」

「お、お父さん! 帰っちゃうんですか?」

「いや、三日くらいは、王都を堪能しようと思う」

「おっ、いいね! カイムも一緒に行こ? こっちの街には、クソオヤジが過保護すぎて、行かせてくれなくてさー!」

「じゃあフレイル、またあとでなー?」

「ドブ水すすったら話してあげてもいいわよ? 五時間すするごとに、会話時間一秒だけど」

「娘が冷たい……」

「というか、もはやあれは氷河期だな。では、フレイルもまたな」

「うん! 魔王さま!」


 何なんだフレイルさんは……

 でも、長年会ってなかったうえに、父親の不真面目さを実感したがゆえの反抗期なのだろう。


「フレイルさん、お話しましょう。これまでのことと、これからのことを」

「いいわよ? これまでのことも、これからのことも。親同士が仲良いし、あたしたちは切っても切り離せない縁になるだろうし、仕方ないから会話してあげるわ」


 こうして、ぼくとフレイルさんが試合場で二人きりになる。

 それから、フレイルさんと師匠が仲良く話せる日はくるのだろうか……。

 そんな不安を抱きつつ、フレイルさんと話をするぼくだった。

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