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第五話 成長と自由


 あれから数日が経ち、あたしの部屋ができた。


「イエーイ! お疲れ!」

「フレイルさんのためならば!」

「うんうん。ま、じいやに予知してもらってて知ってたけどね! あたしの部屋づくりを誰かが手伝ってくれるって」

「ヴァッサゴさんが!?」

「うん。それより、お腹減らない?」


 そう言うと、アンドレアルフスが口を開く。


「フレイルさん、ワタシに提案が」

「おっ、今日も頭の回転が速いね、アンちゃん! 言ってみて」

「アイムの兄貴に言ってみましょう!」

「アイムの兄貴? 誰?」

「料理上手なんです。料理は火加減なんで」

「へー。じゃ、レッツゴー!」

「へい! フレイルさん、乗ってください!」

「うん!」


 こうして、魔王さまの部屋を素通りしようとしたら、ドアが少し開いていた。


「アンちゃん、止まって」

「はい?」

「魔王さまの部屋に近づいて。あのでかい扉、少し開いてるから覗けるかも!」

「正直ワタシ、魔王さま怖いんだよなぁ……」

「灼いていい?」

「ひっ!? わかりましたよ……」


 こうして、アンドレアルフスから降りて、一緒に魔王さまの部屋を覗く。


「広いなぁ……」


 そこは、あたしの家のどんな部屋より広かった。


「ここは次元が歪んでいるので、高さも横幅も変幻自在なんですよ」

「へー……あの動きはなに? ていうか、仮面外してるし」

「魔王さまはほとんどの武術に精通してると聞きます。拳も、武器も、魔法すらハイレベルなのです」

「へー! おーい、魔王さまー!」

「お疲れ様です!! 魔王さま!」

「アンドレアルフスとフレイルか。なんの用だ?」

「あたしも武術を習いたい! 弟子にしてよ! 魔王さま!」

「ダメだ。……と言ってもやるのだろうな。フレイル、それなら見て盗め。われは勇者ほど厳しくないし、甘くもない」

「独学ってやつね。それ、一番厳しいと思うけど?」

「そう思うならしなくてもいいぞ」

「地毛が茶色のおっさんに気を遣われたくないなぁ。アンドレ、今日は眠くなるまでここにいるから、好きにしていいよ。いつもあんがとね」

「はい!」


 こうして、アンドレアルフスが去っていく。

 よし、これで集中できる。


「まずは動きを見て、覚える」

「フレイル。キサマ、『有物質光技法』は使えんのか?」

「使えるけど、剣とか長さが短いものじゃないと無理なんだよなー」

「キサマの父は言っていた。『有物質光? あんなの物体をイメージできれば誰でもできるから!』と」

「うわ、言いそう……」

「キサマもできるだろ? やってみろ」


 物体のイメージか……。

 そういえば、いままで持つところ以外を物体だと意識してなかったかも。

 

「『光の手裏剣』、生成!」

「ほう……」


 うん、握れる。

 そして、刃も切れ味がいい。

 ちゃんと切れるみたい。


「ちょっと痛いけど……」

「キサマ、血が……」

「せい!」


 あたしは魔王さまに投げつけた。

 魔王さまはそれを武器で対応する。


「ふん!」


 カキンッと音がして、床に光の手裏剣が刺さった。


「なかなかやるな。それじゃあ、ついてこい」

「うん! 魔王さま!」


 そうして、あたしは魔王さまの自主トレに付き合うようになる。


 それから半年後……


「「はっ!」」


 あたしは魔王さまの動きを真似られるようになった。


「ふう、休憩するぞ」

「はい!」


 会話しているのか、独り言を言っているのか、どっちかわからないようなセリフに対し、あたしは返事をする。


「ところでフレイルよ、『魔力解放』は使えるか?」

「うん。ママのご先祖に一人だけ魔族がいるらしくて、『魔力解放』は楽にできるんだ」

「そうか。キサマ、天才だな。ま、カイムほどではないだろうが」

「だけど、『魔力強化』は苦手で……」

「なら、教えてやろう。『魔力強化』を。われからのご褒美だ」

「魔王さまが!? ありがとうございます」

「いつになく礼儀正しいな……」

「だって、魔王さまってば『魔王』だし」

「うむ……」


 沈黙が流れたあと、魔王さまのレクチャーが始まる。


「ではまず、キサマは力をどう入れている?」

「なに? なんの話?」

「筋肉の話だ」

「えーと、グッて」

「なら、『魔力強化』は?」

「フヨフヨってしてて、フワーって感じ?」

「なら、フヨフヨをがっしり掴んで、ドバッと破裂させるイメージでやれ」

「はい!」


 あたしの周りを紫色のオーラが流れ、溢れ出す。

 魔王さまのアドバイスの通りに、流れる魔力を固める意識で腕に集中させる。

 すると、魔力が両腕に集中する。


「やった!」

「あとは、破裂させろ」

「はい!」


 両腕に集中した魔力を、ギュッとしてからドバッという感じに爆発させる。

 すると、両腕に魔力が集中する。


「腕が軽い……!」

「魔力は第二の筋肉だ。いや、血液の方が近いか……?」

「それより、ありがとう! 魔王さま!」

「うむ。じゃあ、休むぞ」

「はい!」


 部屋を出ると、たくさんの魔王さまの部下たちが話しかけてくる。


「よかったな! 『魔力強化』できて!」

「フレイルさん、やりましたね!」

「あの、アンドレアルフスが集めたの? この人だかり」

「違いますよフレイルさん。これはあなたが努力している姿に感化されて集まったんです」

「……ってことは、半年くらい見られてたの? ちょっと恥ずかしいかな……」

「フレイル。そして皆のもの、飯にするぞ」

「「「はい!」」」


 こうして、ごはんを食べるあたしたち。

 けど、いただきますが面白いんだよね!


「「「この世のすべての生命いのちを弔い、今もなお生きようとする生命いのちに対し感謝を。では、今回も……命を美味しくいただきます!」」」

「この世の……えーと、なんだっけ?」

「無理して覚える必要はないぞ、フレイル」

「だって、それだと仲間はずれみたいじゃん!」

「……ま、好きにしろ」

「うん! それより、アイムさんのごはんは美味しいね。見た目グロいけど」

「アイムは料理人として雇った魔族だからな」

「光栄っす! 魔王さま! フレイルさん!」

「いや、あたしは別に……」

「ふっ……。どんどん食え。遠慮はするなよ?」

「あ、はい!」


 見た目がなぁ……。

 でも、ナマモノではないしいいか。


「うん、やっぱ美味しい!」

「おかわりを所望する」

「あたしはいいや。部屋に戻るから、誰も入ってこないでね。寝る」

「「「はい!」」」

「ではワタシが……」

「アンドレはごはん食べてて」

「あ、はい……」


 こうして、あたしは自室に戻る。


「はぁ……ホームシックがつらいなぁ」


 そんなことを思っていると、コンコンコンとノックされる。


「われだ。入っていいか?」

「ど、どうぞ?」

「すまんな」

「魔王さま、なにか用でもあんの?」


 まさか、聞かれてたかな?

 ……いや、別にいいか。


「フレイル。キサマ、家に帰りたいのではないか?」

「うん……少しだけね」

「帰りたいなら帰ってもいいぞ。お前を好いてるやつも多いが、キサマは勇者の娘なのだから」

「いや、あたしも『ワープ魔法』は使えるけど、戻れなくなるのがこわくて……」

「そうか。なら自由に生きろ。お前にはその資格がある。われや部下どもの言うことなんて気にするな。われが許さん」

「魔王さま……」

「あ、それと、これはいま言うべきではないのだろうが、一応言っておく」

「な、なに?」

「お前を許嫁として、カイムと結婚させることにしたらしい。あの勇者」

「えっ?」


 でも、あの人ならやりそうだな。あたしのパパだし。


「だけど、顔も知らない人なんかと、仲良くなんてできないよ……」

「だから先ほど言ったのだ。自由に生きろとな。それじゃあな」

「え? それだけ?」

「ああ。あ、それと、魔王候補にするとは言ったが、魔王候補は強さとまとめ上げる力が必要だ。フレイルが選ばれようと、選ばれなかろうと、われはお前が嫌と言うなら就任させない」

「そっか……!」

「またな」

「うん!」


 こうして、魔王さまは去っていった。


「自由に生きろ……か。よし、自由に生きてやる! 家になんて、いつでも帰れるからね! それに、まだここにいたいし!」


 その日から、あたしは自由に生きることにした。


「ヘイヘイ! アンちゃん今日もイカしてる!」

「あの、もう五周目なんですけど……」

「あたしは風になるの! 頑張って!」

「へ、へい……!」


 アンドレアルフスに乗って魔王城内を周回して風になったり……


「アイムさん、ケルベロスの丸焼き一丁!」

「あいよ! よーく火を通すぜ!」

「頑張ってー!」


 ゲテモノに挑戦しようとしたり……


「フレイルさん、最近変じゃないっすか?」

「そう?」


 もぐもぐとケルベロスの肉を頬張りながら、アンドレアルフスに相槌を打つ。


「何があったんすか?」

「アンちゃんさー、自由ってなんだと思う? てか、ケルベロスの肉って美味しいんだな」

「自由……そうっすね、『魔法学』は自由だと思うっす」

「『魔法学』って?」

「『魔法学』とは、魔法陣を軸に構築する戦闘スタイルのことっすね」

「ふーん。どうでもいいかな……」


 だいたい、勉強するのって窮屈じゃん。


「魔法陣から魔法を構築するんすよ。魔法と魔法を掛け合わせたり、誰でもどんな魔法でも使えるようになるんす! もちろん、固有魔法との関係上使えない魔法があったりして、いまはマイナーな技術なんすけど」

「へぇ……」


 ちょっと面白そうじゃん。

 たしかに、「魔法学」は自由かもしれない。


「ま、大きくなったら学ぶわ。あたし十三歳になったら魔導学校行くから」

「へぇ……! てことは、あと四年ちょっとしか一緒にいられないんすね」

「いやいや、あたし『ワープ魔法』使えるから、あまりしんみりしないでよね。それに、ここが第二の家みたいになってるしさ。よし、食事終わり!」

「そうっすか! で、午後から何します?」

「いまだに星が出てるのに昼間なのは慣れないなぁ。とりあえず、昼寝かな」

「えぇー? トランプやりません?」

「アンちゃん友達いないの?」

「えっと……みんな仕事してるんで」

「じゃあ、お仕事見学かな」

「はい!」


 こうして、魔王の部下たちの副業?を観察するあたしたち。

 それにしても、自由ってなんだろう?

 そんなことを疑問に思いつつ、さらなる自由を求めてアンドレアルフスと共に過ごすのだった。

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