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第二十話 信頼と恋愛


「お久しぶりです、魔王さま!」

「久しぶりですね、魔王さん」

「魔王さま、おひさ! 遊びに来たよ!」

「久しぶりです! お父さん!」


 今日はいつものメンバーで魔王城に遊びに来た。

 けど、最近のカイムが変なことに、魔王さまは気付くかな?

 つい魔王さまの方を見てしまうおれ。


「キョロキョロして、どうかしたの? ライトさん」

「いや、魔王さまが……ちょっとね」

「それより、フレイルさんたちのとこに行こ?」

「うん! あーでもあれだなぁ……」


 挙動不審になるおれ。

 そんなおれを、デボンさんはしっかりと受け入れてくれた。


「あーもう! ほら、行くよ。ライトさん!」


 手を繋いでリードされる。


 これだ! おれはこれを待っていたんだ!!

 おれは普段は構う側だ。

 なのに、デボンさんには構ってほしくなる。

 これが恋ってやつなのだろうか。


「ごめんね、デボンさん」

「うん。それより、カイムくんって、最近おかしいよね」

「うん。あいつは恋したみたいだからな! おれのように!」

「うん、知ってるよ。ふふっ……」

「えっ……?」


 この小悪魔的なところも、やっぱり好きだ!


「じゃ、行こ?」

「うん!」


 こうして、フレイルの部屋へと導かれる。


「おせーぞバカップル!」

「なっ……おれたちまだ付き合ってねーし!」

「そうですよ。ライトさんとはいつか付き合うかもしれないので、付き合うまでは、その言い方はやめてください」

「へいへい、仲がよろしいようで」

「ライト、デボンさん、二人でデートしてもいいよ?」

「えっ? マジで!?」

「うん。ライヒトとデボンはいない方がいいかも。マジバトルするから!」

「へー! 見てみたいな! ね、デボンさん?」

「うん! 何するんですか?」

「「戦闘」」


 魔勇コンビが口を揃える。


「そうなんだ……」

「そうなんですね……」

「そ! それで、危険だから、広間では観戦させたくないなって」

「あ、そういう意味だったのか」

「だね。てっきりお二人がわたしたちのファンになったのかと」

「いや、それはもうなってるけどさ、友達を危険に巻き込みたくないのよ」

「だよね。ライトとデボンさんは、もうぼくの親友だから」


 うーん、でも、迫力がある方が好きだし……

 そんで、あわよくば「ライトさん、わたし怖い」的な感じで、関係が進展するかもだし。


 そしてなにより、同年代のトップの戦いを生で見てみたいし!


「おれ、近くで見たい! 魔王さまと一緒なら、きっとなんとかしてくれるでしょ!」

「そうだね! わたしもライトさんとは離れたくないので!」

「へいへい、お熱いようで」

「じゃあ、お父さんの近くで観戦してね!」

「おう!」

「はい!」



 こうして、魔王さまの座っているソファに二人で座らせてもらった。

 ここからだと、カイムは右側、フレイルは左側で身構えている。


「では、試し合い……始め!」

「はい!」

「うん!」


 来るぞ……!


「『魔の力』……」

「『魔力』……」

「「『解放』!!」」


 こうして、二人の「魔力」によって、広間の空気が紫色になる。

 あと、すさまじいプレッシャーが、二人から発生する。

 

「すごいプレッシャーだ!」

「だよね……! 相変わらず、すごい!」

「だが、おぬしらは、あの二人に三連勝したのだ。見ておくがいい、一対一のバトルを!」

「「はい!」」


 魔王さまと話していると、戦闘が始まる。


 カイムの二本の剣のうち片方の剣が、「紫色の電気」を帯びながら少し大きくなった。


「『光のあたし』!!」


 そして、フレイルも姿形が本物と変わらない分身を二人作りだし、三人まとめてカイムの方へと向かった。


「おっ!」

「すごい……!」


 なんて高レベルな魔法の応酬……!

 そして、いつ見ても、見慣れない技術だ!

 光が質量を持って人に変形したり、紫色の雷だったり……

 

 これが同年代の戦いって話だから驚きだよなぁ……。


「あっ、フレイルが入れ替わった!」

「けど、カイムくんはそれを読んでるよ! あ、フレイルさんがまた入れ替わった!」

「……高レベルな戦いだな。入れ替わりを何度もするのは、魔力量が多くないとできぬはずだが……」

「そうなんすか? 魔王さま」

「うむ。入れ替わりは分身を一人創るのと同等の魔力を消費する」

「「へー」」


 ……ってことは、二人の魔力量は化け物クラスってことか!

 

 外に出てるオーラからして、魔王さまの半分くらいだろうけど、それも子供にしてはかなり多い方だろうしな!


 そう思って眺めていると、カイムも分身する。


「あっ! 紫色のカイムだ! 何あの技!?」

「あのカイムくん、電気を帯びてるから、きっと『紫電』の派生技だと思う!」

「あれは、われが考案したができなかった技『紫電分身』だ。カイムは天才だからな!」

「つまりカイムは、『紫電』を魔王さまより使いこなしてるってことっすね?」

「そうなるな。『攻撃はいかに当てるか』が鍵だ! ペースは『支配』するものだからな!」

「「なるほど……」」


 ていうか、カイムと同じ戦闘テーマだけど、やっぱり親子だな……!


「あっ、見て! ライトさん! 『光のあたし』二体が帯電してる!」

「あれなら本体を見分けられるってことか! さすがカイムだな!」

「そして、『紫電纏い』した剣で触れて終わりか。カイムも成長してるのだな」

「デボンさん、反省会しに行こ?」

「うん!」


 こうして、カイムとフレイルのもとへ近づく。


「なんだよ『紫電分身』って! セコいわ!」

「それ、フレイルが言ったらダメじゃない……?」

「いい試合だったな! 会話は聞こえなかったけど、『紫電纏い』の帯電で分身を見分けるのはよかったぞ!」

「うん」

「逆にフレイルさんは『光のあたし』に頼りすぎでは……? 魔王さん曰く、『分身は入れ替わるたび、創ったときと同等の魔力を消費する』らしいです!」

「あのクソオヤジ、隠してやがったな……! 言えや!!」

「フレイル、言葉遣いが荒くなってるよ」

「はいはい。これでいいかしら?」

「うん」

「よーし! じゃ、反省会すっか!」

「はい!」

「うん!」

「だね!」


 こうして、反省会をする。


「あれってやっぱり、『紫電分身』って言うんだな」

「うん。『紫電』を『聖光魔法』に見立てた。もとは『紫色の雷』だし、『光のあたし』からヒントをもらったんだ!」

「その代わりに、『有物質光技法』を使ってないから、雷人間が走るだけだったけどね」

「いや、それでも強くね?」

「だよね! 『紫電』って、本来は封印されてたんですよね? 元勇者さんから」

「そ。それで、カイムが派生技を増やしたの。天才じゃね?」

「うん。師匠からも、天才だって言われたことがあるよ。でも、全部周りの人の技や技術を吸収して成長したうえでの技だから、ぼく一人の技じゃないんだ」

「……ってことは、『紫電分身』は、初めての共同作業ってやつじゃね!?」

「いや、お父さんが言ってたから、そこからヒントを……」

「おいマジパンダ! 照れてんじゃねーし!」

「照れてない! これは事実だよ! ぼくは嘘はつかない!!」

「ははは! 変わんねーな!」


 やっぱり、カイムとフレイルは、恋をしても変わらない関係なんだな。

 正直言うと羨ましい。

 

 おれも、いつかはデボンさんと……

 よし、ここはフレイルのように攻めて、関係を発展させよう!


 カイムも最近は攻めてるんだ!

 おれだけが受け身のままじゃ、デボンさんもいつか誰かに取られるかも。


 それだけは嫌だ……!!


「ん? どうかしたの? ライトさん?」

「おれ、デボンさんと戦いたい!」

「えー……」

「ライト、どういう風の吹き回し?」

「そうだぞライヒト、珍しいじゃん」


 おれは、デボンさんと付き合いたい。

 そのために、この気持ちと向き合うと決めた。

 けど、カイムのように傷つけたくない気持ちもある。

 どうしたらいいんだ……!?


「どうかした?」

「ちょっとカイム、来てくれ」

「あ、うん……!」


 こうして、カイムと緊急会議する。


「カイムってさ、傷つけたくないのに、なんでフレイルと戦えるの?」

「ああ、そのことか。それはね、『信じてるから』だよ」

「『信じてる』?」

「うん。信頼してるからこそ、戦っても圧倒しないって思い合える。信頼があるからこそ、ここまで傷ついても、きっと大丈夫。なんとかなるって、そう思えるんだ!」

「『信じる力』か……」

「うん。ライトがさっき、どういうつもりでああ言ったのかはわからない。けど、デボンさんが気になるのなら、ライトなりのアプローチしたら?」

「おれなりの?」

「うん。ぼくたちには『戦闘』しかコミュニケーションがなかった。初めて会ったときから、戦ってたから! といっても、数ヶ月前のことだけどね!」

「そうなんだ……」

「だから、ライトはライトなりのコミュニケーションを確立させてよ!」

「おう! サンキュー、親友!」


 おれはカイムと拳をくっつけて、解散する。


「お待たせ!」

「おせーぞ金髪」

「久しぶりに当たりキツイな! つーか、フレイルも金髪じゃん!」

「カイム、ライヒトはなんだって?」

「ああ、デボンさんに言いたいことがあるから、相談してって」

「え?」

「そんなことかよ。おら、決めろライヒト」

「頑張れ、ライト!」

「お、おう!」


 せっかく親友が背中を押してくれたんだ!

 告るしかない!!


「デボンさん!」

「な、何? ていうか、戦いは?」

「デボンさん。好きです」

「うん、知ってるけど……?」

「だから、付き合ってください!」

「いいけど、関係は変わらないかもよ?」

「……それでもいい。おれは、デボンさんのそんなところが好きだから。デボンさんが誰かと一緒になっても、じいさんになった頃までにでも戻ってきてくれたら、それでいい。愛してます」


 どうだろう? この告白は?

 正直言うと、不安だ。


「あの、一言だけいいかな?」

「何?」

「ライトさん……いや、ライトくんって呼ぶね?」

「うす!」

「それで、ライトくんは待っててくれるだろうけど、わたし、そこまで恋愛観崩れないから!」

「え?」

「だから、愛してるんなら、ライトくんなりに、『わたしを好きにさせる努力』をしなよ! 惚れたのなら掴んで、『一生キミを離さない』くらい言いなよ! もう!」

「おー、デボンかっけー!」

「だね! ライト、かっこよく決めて!」

「わかった! じゃあ、おれが幸せにするので、お付き合いしましょう!」

「うん! 浮気したら……ま、いいや。お楽しみに!」


 え? 浮気したらどうなるんだろう……?


「呼ぶとしたらデボンちゃんかなー? いや、呼び捨てもいいかも! けど慣れないなぁ! ははは!」

「ライトくん、テンション高いね!」

「うん!」

「いいぞー、最強コンビ!」

「いやフレイル、最強カップルの間違いだよ」

「でも、わたしからは、距離感を変えないからね?」

「うん! その代わり、いつもおれの隣で笑っててほしい!」

「うん、わかった!」

「じゃあ、最後に戦わない? 最強カップル同士」

「いや、ぼくとフレイルは、まだ付き合ってないよね……?」

「いいね! やろうぜ魔勇コンビ!」

「ライトくん、魔勇カップルね」

「だから、ぼくたちまだ付き合ってないってば!」


 こうして、魔勇コンビと戦うことになる。

 ……が、


「あっ、『光のあたし』使ったの忘れてた! 今日は無理だわ」

「ぼくも魔力消費しすぎて無理かも! 『紫電分身』って、すごく疲れるなぁ」

「そうなんだ……」

「そうですか……」

「だからさ、ガールズトークしよ! こい、デボン!」

「ライトくん! またあとで!」

「うん!」


 ライトくんか。

 唯一無二って感じでいいね!


「ライト、ニヤけてる」

「あ、ごめん。じゃ、恋愛トークしよーぜ!」

「はいはい、どこで?」

「ここで! 魔王さまもいるしさ!」

「お父さんと!?」

「おう!」


 というわけで、魔王さまと一緒にカイムとおれで恋愛トークする。


「魔王さま、奥さんは?」

「別居中。三十三代目の魔王が誕生したら、嫁と隠居する予定だ」

「そうだったの……!?」 

「奥さんをまだ愛してますか?」

「ああ。われは一途だからな」

「ぼくと似てる……かな?」

「奥さんって美人なんすか?」

「うむ。われにもったいないほどの美人だ! 真面目に好きだった! というか、愛している!」

「そっか」

「そうすか……」


 気合いが入りすぎてて、若干引くおれ。


「それより、フレイルとはどうなのだ? カイム」

「はい。異性として意識し始めて、『信じてる』からこそ、『戦闘』というコミュニケーションで仲良くしてます!」

「ふむ……。まあ、『回復魔法』も使えるし、心配ないか。ライトはどうなのだ?」

「えー? 告白してたのを見てたのに、聞いちゃうんすか?」

「うむ。われは普通に気になる」

「照れるなー!」

「いいからはやく!」

「カイムの言うとおりだ!」

「仕方ないなぁ!」


 よし、この親子に語ってやるか!

 おれの恋愛哲学を!


「恋愛は支え合いが大事なので、デボンさん……いや、デボンちゃん次第なんですよねー!」

「どういう意味だ?」

「要するに、相手に合わせてあげるのが『支え合う』ってことじゃない? カイムや魔王さまにはその気持ちが欠けているのかも!」

「なるほどな。持ちつ持たれつってことか」

「さすがはお父さん。まとめるのが上手いですね!」

「ま、そうなるかな! 関係が変わらなくても、二人で老後までいれたらいいなって!」

「なるほど! チューしちゃうの?」

「いやー、どうかなー?」

「じゃあ、子供はいらないってこと?」

「おいカイム、何故キスと子どもが関係あるのだ?」

「え? チューしたら、赤ちゃんができるんでしょ?」


 カイムの純粋さに対してどう対処するんだ? 魔王さまは?

 これは必見だな!


「あのなカイム、子どもは魔鳥が運んでくるものなのだ」

「へー! 魔鳥さんってすごいなぁ! 師匠からはチューでできるって聞いたのに!」

「うむ。今度会ったらどついておく」

「……なるほど。結局カイムをピュアなままにするのか……」


 こうして、カイムがズレてるのは魔王さま譲りだったのかもなと思うおれ。

 そして、デボンちゃん? デボンさん? と付き合えてかなり嬉しいと思った。

 おれは彼女を幸せにできればいいなと密かに願いつつ、魔王さまとの会話を弾ませるのだった。

 そしてこのあと、フレイルたちも恋愛トークに混ざってくるけど、それはまた別のお話。

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