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最終話 魔勇コンビの進展



「『ワープの魔法』!」


 今日も校門前に「ワープの魔法」でワープして登校するあたしたち。


「ありがとう、フレイル」

「うん。お礼にハグして?」

「また今度ね! さーてと、教室行こっと!」

「なんだそりゃ! 待てよ、マジパンダ!」


 カイムを追いかけていると、バカップルに声をかけられる。


「ちょりっす! カイム、フレイル!」

「おはようございます」

「おう、最近付き合ったバカップルじゃないの」

「デボンさん、おれたちバカップルらしいですよ!」

「あれ? ライヒトって、デボンに敬語だったっけ? ちょっとキモいな……」

「普通にひどくね? ま、交際していないフレイルにはわからないか。デボンさんとおれの小指と小指が赤い糸に繋がれてる関係性は!」

「ライトくん、別に敬語じゃなくていいんだよ?」

「いえ! おれはデボンさんを大切にしたいと思ったので、敬語なんです!」

「そうだったの、ありがとね。じゃ、行こっか」

「はい!」


 そう言って手を繋いで登校するデボンとライヒト。


「じゃ、またあとでな! おれたちイチャつかないといけないからさー!」

「教室で集まって話しましょうね! あっ、ライトくん、歩くの早すぎるよ!」


 なんだよライヒトの野郎……!

 というか、そんなことよりも先に出た感想は、


「くっ、羨ましい……!」


 だった。


「あたしだってカイムとイチャイチャしたいのに!」

「じゃあさ、こういうのはどう?」

「え?」


 あ、カイムの前だった……!


 そうハッとしていると、カイムは肩を寄せてくる。


「フレイル、行こうか」

「……うん」


 肩を掴まれながら登校するあたしたち。


 こういうのがいいんだよなぁ。

 この距離感! 遠すぎず近づきすぎず!

 この雰囲気を味わいたかったのよね!


「カイム、ありがとね」

「う、うん……ぼくも、好きな人が困ってたら、助けたいし……!」

「えっ?」


 いま、なんて言った?


「も、もう一回言って?」

「困ってたら、助けたいから!」

「誰を?」

「フレイルを」

「おいマジパンダ! 誤魔化してんじゃねー!」

「フレイル、言葉遣い!」

「ヘタレ!」

「ごめん……」

「でも、いまは肩掴んでくれてるし、許してあげる!」

「うん……!」


 ま、あたしたちはあたしたちのペースでイチャイチャすればいいか。


 そして、周りの人たちからめちゃくちゃ見られてることをスルーしつつ、教室へと向かう。



 あたしたちは教室に着くと、カバンを机の上に置いて席に座った。

 すると、ライヒトとデボンが茶化しに来る。


「よう、遅かったな! 両片想いカップル! ……で、合ってますか? デボンさん」

「うん。カップルなことに変わりないからね!」

「なるほど、勉強になります!」


 はぁ……なんか、いつもよりも多く視線を感じるし、不安だ。

 そう思いつつ、不意にカイムを見ると、目が合った。


「「あっ……」」


 一瞬見つめ合うも、すぐに目線を逸らされる。

 

「よし、ここは……あえてずっと見続ける!」

「な、なんで!?」

「ほれほれ、見られてるわよー? あたしも見られてるけど!」


 じわじわとカイムに顔を近づけるあたし。


「あーもう、じれったいな! カイム、おれの言う通りにしてみて?」

「え? うん……」

「はい、腕を広げて! 前側にこう!」

「こう?」

「そうそう。それで、デボンさんはフレイルを押してください!」

「フレイルさん……ごめんなさい!」

「え?」


 いきなり押されるあたし。

 そして、カイムと顔がぶつかりそうになったので、あたしは反射的に避ける。

 すると、なんか抱きしめちゃったみたいな形になり、少し照れてしまう。


「カイム、次は腕を回して!」


 カイムはぐるぐるとプロペラのように縦に回す。


「違う! フレイルを抱きしめて!」

「あ、はいはい……フレイル、嫌だったら言ってね?」

「……べつに、嫌じゃない」


 つい乙女スイッチが入ってしまうあたし。


「デボンさん、フレイルが静かなんだけど! こんなの初めてだ! どうしたらいい?」

「ギュッと抱きしめてあげてください」

「うん! フレイル、強くするね? 赤ちゃんできたらごめん」

「……ぃゃ、できないから」


 あたしは小声でつぶやく。


 カイムが抱きしめてくれるのは嬉しい。

 だって、あったかくて、懐かしい匂いがするから。

 「魔族」特有の、「魔力」を帯びたような匂いが。


 でも……


「ちょっと恥ずかしいな……」

「うん。ぼくも……」

「でも、ずっとこうしてたいかな……」

「うん。ぼくも……!」


 でも、きっと無理だろう。

 ここは学校だし、先生も既にいる。

 だからここは、嫌だけども仕方ない!


 乙女スイッチをオフにして、普段のあたしに戻る。


「ごめん、カイム。元気出たから、もういいわ」

「そ、そう……?」

「うん。ありがとね」


 こうして、イチャイチャタイムは終了。

 先生も待ってるし、早くしないと。


「じゃあ先生、ホームルームを始めてもいいですよ」

「はい。それでは……」


 こうして、いつも通りホームルームに入る。



 でもあたしは、さっきの温もりを思い出しながらも、授業中も休み時間もボーっとしてしまう。

 

 あたしって、カイムからはどう思われてるんだろう?

 デボンとライヒトの関係は、あたしたちと違う。

 あの二人は息ぴったりで、馬が合う最強のカップルだ。

 戦闘面でも。そしてたぶん、恋愛面でも。


 ……じゃあ、あたしたちは?

 

 あたしが一方的なだけで、カイムは望んでないのかな?

 真面目だし、あたしが実は迷惑だとか?

 あー、ダメだ。なんかブルーになってきた。

 

 好きだって思われるのと、好きだからって尽くしたいというのは違う。

 だって、好きだからって、いままでの距離感というのを維持したい人もいるだろうからね。

 カイムはどっちなんだろう? やっぱり付かず離れずがいいのかな?


「フレイル?」


 そんなことを考えていると、カイムがあたしのことを呼んでくれる。


「あ、ごめん……」

「なんか顔が暗かったけど、どうかした?」

「ブルーになってた」

「ほんとに!? なら、ぼくにしてほしいことはある?」

「うん。たくさんある……」


 ちょっと涙声になるけど、カイムは気にしていないみたい。


「じゃあやるよ! できる範囲で!」

「恋人繋ぎ……が、したいです……」

「わかった! 手を出して?」

「うん」


 両手を出すと、両手とも恋人繋ぎしてくれた。

 こういうところは魔王さまに似て、優しいなぁ。


「カイムはさ……」

「うん?」

「誰にでも優しいね」


 あたしが寂しそうに言うと、すぐ反論するカイム。


「いや? フレイルにだけだよ?」

「……なんでそんな優しいの?」

「好きだから」


 そう聞いて、少しだけドキッとするあたし。


「前にフレイルがこういう言い方したときは、ぼく、すごくドキッとした。フレイルも、いまのでドキッとした?」

「うん」


 ブルーな気分で泣きそうになってたけど、今回はギリギリのところで持ちこたえたかな。


「よかった。フレイルには嫌われてもいいけど、ぼくが好きでいる権利は、自由なままがいいからさ」

「うん。あのさ、なんで付き合ってくれないの?」

「じゃあ付き合う?」

「えっ?」

「でも、いまと関係は変わらないよ?」

「そうなの?」

「だって、ぼくはフレイルが好きだから。ドキドキしたり、ハラハラしたり、イチャイチャしたり、いまの関係性も好きなんだ。付き合っても、そのスタンスは変わらない」

「ふーん……」

「というのは建前で、本当は……自信がないんだ。ぼくがキミを護れるようになったら、付き合うかも。高等部だと、生徒同士の戦闘が可能らしいから、そこで鍛えて、強くなってから付き合いたい」

「つまり、高等部でトップを取れたら付き合うってこと?」

「……うん。事実上はそうなるかもね」


 そっか。

 カイムはクソオヤジに負けたみたいだし、デボンとライヒトのコンビにも負けたし、自信がないから付き合わないのか。

 あたしに勝っても、護りたい人に勝つのは当たり前だし、あたしとの勝負はノーカウントってことなのかな?


「はぁ……」

「遅いよね……? ごめん。でも、ぼくはフレイルにとって弱い恋人になりたくないから。師匠みたいに強くて、お父さんのようにしっかりした人になりたいんだ!」

「いいよ」

「えっ? いいの?」

「うん。あたしより強いのは当たり前ってことでしょ?」

「……そうなるね」

「ハグしてくれたら待ってあげる」

「うん。でも、一言だけいいかな?」

「なに?」

「いまは授業中だから、あとでするね」

「あっ……!」


 二人の世界に夢中になってて忘れてた!


「おい、授業中もイチャイチャしよーぜ!」

「ハグしないの?」

「先生! あと五分で終わりだから、もう終わってもいいんじゃないでしょうか!?」

「フレイルさんかっこかわいい!」

「魔勇コンビ頑張れー!!」

「あと五分で昼休みだぞー! 耐えろー!!」


 いろいろな言葉が飛び交う中、先生は口を開いた。


「では、ここからはカイムくんとフレイルさんが仲良くじゃれ合うのを見て、終わりにしましょう」

「「は!?」」


 あたしたちが動揺している中、クラスメイトの声は歓喜のものとなっていた。


「いいぞ、先生!」

「手を繋げ!」

「ハグしろ!」

「両方同時にできないのがネックだな!」

「魔勇コンビー!!」


 見られてると、さすがに恥ずかしいな……


 そう思っていると、カイムが左手同士で恋人繋ぎをしながら、顔を近づけてくる。


「フレイル、横向いて」


 あたしはそっぽを向いた。

 すると、グイッと引っ張られるあたし。


 そうして、ほっぺ同士がぶつかった。

 それに乗じて、頬ずりしてくるカイム。


「どう? フレイル」

「うん、めっちゃドキドキする」

「ぼくもだよ。そして、ぼくはフレイルより強くなりたい!」

「そうだなぁ……」


 あたしを護るんだし、ここは怒ったらダメだな。

 そして、強くなるのなら、あたしもサポートしてあげないと。


 あたしは、「カイムに護られるために」強くなる……!

 

 カイムの「競争相手」として、強くならなくちゃ!!


「なら……あたしは、カイムの次に強くなる!!」

「うん。よろしくね、相棒!」

「相棒、か……」


 相棒……。

 いや、いままでも対等に扱われてたけど、ようやくカイムからアプローチされた気がする。

 ならここは、


「あ、嫌だった? なら……」

「ううん! いまはそれでいいんじゃない? これからもよろしくね、カイム!」

「うん!」


 と、ここで予鈴が鳴る。


「それでは、これで授業を終わりにします。昼休みに入っていいですよ」

「「「ありがとうございました!」」」


 そして、昼休みに入ると、ほっぺを離した直後、カイムがあたしに抱きついてきた。


「か、カイム!?」

「フレイルが不安そうな顔してたから、ずっとこうしたかった。安心させたかった。でも、ぼくはヘタレだし真面目だから、授業に集中しないとって……」

「この、マジパンダ!」


 カイムが情けない声をあげたので、あたしなりに軽く突き飛ばす。

 すると、カイムは吹き飛ばされた衝撃で着席した。

 

 それから、あたしは立ち上がってから、カイムを優しく抱きしめてあげる。


「フレイル!?」

「カイムはさ……その、真面目過ぎ! たまには、クソオヤジみたいに、自由にしてもいいと思う」

「フレイル……」

「だから、安心させたいなら、いつでも自由に行動しなよ。そしたら、あたしも一緒に怒られてあげるし、嬉しいことは分け合っていきたいから」

「……うん、わかった! ぼく、『真面目パンダ目』魔族から、『不真面目パンダ目』魔族になろうと思う!!」

「ふっ……そういうところが真面目なの! まぁ、それでいいと思う。好きだよ、カイム」

「ぼくも、フレイルの……えーと、フレイルが想ってくれてた時期よりも遅く好きになったから……同じくらいってほどじゃないけど、フレイル以外になら、愛の大きさは負けるつもりないよ!!」

「マジパンダだなぁ。これからは、戦ったあとは反省会をしましょう。弱点とかわかるし」

「そうだね。いつもの四人じゃなくても、反省会しよっか!」

「うん!」


 こうして、カイムから相棒扱いされたあたし。

 両片想い? 両想い? にはなったけど、あたしたちの場合、いまはこれでいいのかもしれない。


 そして、編入してから随分経って、あたしたちは大きく成長したと思う。

 二人の友達ができたり、その二人が進展したり、その二人に負けたり……

 親世代の強さを目の当たりにしたり、それでも、まだ小手調べ程度しか本気を出されてなかったり……

 それでも、あたしたちは戦い合い強くなり、進展していくだろう。

 それが、魔王の息子と勇者の娘の宿命なのだから。

ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。

この作品で書きたかったのは、勇者と魔王という枠を越えた関係を持つ親世代のもとで、立場が交差した二人が、ぶつかり合いながらも距離を縮めていくラブコメでした。

テンポと会話重視で最後まで走り切る形にしたので、人を選ぶ部分もあったと思いますが、それでもここまで読んでくださった方には本当に感謝しています。

次回作はまだ構想中ですが、引き続きラブコメやバディものを軸に書いていく予定です。

もしこの作品やキャラで気に入ったものがあれば、感想などで教えていただけると嬉しいです。

改めて、本当にありがとうございました。

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