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第十七話 元勇者登場


 ライトとデボンさんのコンビと戦ってから数日が経った。

 ライトがせがんだので、ぼくたちは仕方なく王宮に招待する。

 そして、フレイルがいつも通り「ワープ」させてくれる。


「『ワープの魔法』!」


 ちなみに、ライトはデボンさんも誘ってほしかったみたいだから、フレイルに頼んで誘ってもらった。

 まったく、世話が焼ける親友だなぁ。


「うおおおおお!! 広いなぁ!!」

「そうだね! ライトさん!」

「あの、あんまり騒がないでね?」

「くっ、嫌なことを思い出すわね……!」

「フレイルは、八年間住んでたんだよね……?」

「物心ついた頃からで比べると、魔界歴の方が長いし! ふん!」

「フレイルさん、カイムくんと一緒にいてください。わたしは、ライトさんと回るので!」

「マジ!? デートしてくれんの?」

「うん。だって、来たかったんだもんね?」

「あれ? なんか、デボンが強い! いつもは気弱そうなのに!」


 ぼくはライトに近づき、こっそりと助言する。


「ライト。押してくる相手に合わせて受けつつ、たまに攻める。これがテクニックだって、師匠が言ってた!」

「オッケー! さすが許嫁持ち! アドバイスが適切だな!」

「それは関係ないと思うけど……」


 今度は、フレイルがデボンさんに助言する。

 ぼくはライトを放置して、聞き耳を立てる。


「デボン。まずは相手に意識させるように、攻めて攻めて攻めまくるのよ!」

「はい……その次は?」

「えーと、カウンターを喰らってイチャイチャ感を演出するの!」

「あのー、それって相手に合わせないとできないと思うんですけど……」

「なら、攻めあるのみ!」

「はい! ……ところで、何の話ですか?」

「デボンって、ライヒトのことは好き?」

「好きですけど、恋愛の好きじゃない気が……」

「なら、好きになる努力をしなさいよ」


 ここでぼくがツッコミを入れる。


「あの、フレイル……デボンさんとライトって、付き合ってないよ?」

「あ、そういえば……」

「カイムー、デボンさんといつまで会話してるの?」


 まずい! ライトに聞かれたら面倒くさいことになるかも……!


「フレイル、話をまとめて!」

「……とにかく、頑張りなさい!」


 フレイルがデボンさんの背中を思いっきり叩く。


「きゃっ!」

「じゃ、デボン! ガンバ!」

「はい! よくわかりませんが、頑張りますね!」

「よし! それじゃああたしたちは……」


 まずいな。

 フレイルの性格を考えたら、こういう場面だと……


「後をつけましょう!」

「やっぱり……」

「なに? 不満?」

「いや、フレイルらしいね……。色んな意味で」

「うん。じゃ、追うわよ!」


 ていうか、つける意味あるかな?

 試しに提案してみよう。


「フレイル、四人で回ればいいんじゃ……」

「それだとダブルデートになって、気まずそうじゃん? それに、こういうのはこっそりやるのが楽しいから!」

「ま、フレイルはそういう人だよね……嫌いじゃないけど。ぼくもライトの恋路が気になるし」

「じゃ、こっそり行きましょう!」


 こうして、こっそりと後をつける。

 けど、肝心の会話が聞こえないし、本当に意味のある行為なのかな……?


「フレイル、ライトたちの会話って、聞こえてる?」

「全然? 普通に合流しましょう」

「だよね……」


 というわけで、デボンさんとライトのもとへと向かう。


「おーい!」

「あっ、フレイルさんたち!」

「さっきからついてきてたのは、会話に入りたかったからなのか! なら、おれに気を遣わないで、言えばいいのに!」

「まあ、そうだね。ごめん」

「いいですよ、別に。それで、ライトさんと話してたんですけど、二人の独特な気配がして……」

「そうそう! 王族オーラと魔族オーラ!」

「あたしらそんなの出してるのか……」

「なんか嫌だなぁ」

「それで、違和感があったんです! だよね? ライトさん」

「うん。だから、二人も一緒に来たらいいのになって……ね!」


 うーん、なんて大人な対応なんだろうか。

 二人をくっつけたいとかいう理由でつけてた自分を殴りたい気分だ。


「じゃ、カイム! 行こ?」

「うん」

「あ、二人は腕組んで!」 

「えっ?」


 フレイルはデボンさんに無茶振りする。


「ほら、くっついて!」


 デボンさんを押すフレイル。


「ちょっ……何ですか……?」

「カイムもライヒト押して!」

「うん!」


 こうして、二人をくっつける。

 あっ、ある意味目的を達成したなぁ。

 物理的にくっつけたし。


「あの! 照れるので、やめてもらえますか!?」

「ガーン……」

「「ごめんなさい……」」

「もう! ライトさん、行こう?」


 そう言って、手を繋ぐデボンさん。


「カイム……! おれ、嬉しい!」

「ライト、頑張って!」

「おう! デボンさん、どこ行く?」


 どうやら、要らぬ世話だったみたいだ。


「ふふっ……じゃ、あたしたちも行こっか!」


 自然な流れで手を繋ごうとするフレイル。


「こういうのは、付き合ってからだって!」

「あーもう、じれったいな!!」

「ふわあ、いいですね! あのじれったい感じ!」

「おう! やっぱりおれ、デボンさんが好きだ」

「そうですか。なんか、照れますね……」

「あっ、フレイル! ライトとデボンさんがいい感じだよ!」

「そうね! あたしたちも見習わなきゃね!」

「それとこれとは話が別だ! ぼく先に行くね!」

「待てや、マジパンダ!!」

「あはは、二人は変わらないね」

「……そうだな!」


 フレイルから逃げ延びるために、修行場に逃げ込む。

 すると、部屋が真っ暗になっていた。

 これはおそらく……


「ちょっと師匠! また電気消して、暗闇モードで寝てるんですか!?」


 ぼくは電気をつける。


「おい、明るくするなよな。オレが寝れないだろうが」

「おいクソオヤジ、カイムの邪魔すんな!」

「あっ、フレイル!」


 いつの間に……!?


「師匠、ほら起きて! 仕事はどうしたんですか?」

「大臣がやってるぞ! あいつ、働き者だよなー!」

「少しは見習え! クソオヤジ!」


 フレイルは師匠を蹴り、壁にまで吹き飛ばした。


「いってぇ!!」

「師匠! 目が覚めましたかー!?」

「こらフレイル! 危うく永遠の眠りにつくところだったわ!!」

「ドブの水すすってから話しかけなさい! あーあ、あたし魔王さまに会いに行こうかなー!」


 そんな会話をしていると、ライトとデボンさんも乱入してくる。


「あっ、カイム! あのさ、あの無職みたいな服を着たおっさんって、誰?」

「『有物質光技法』……」

「わー! 待ってください、師匠! この二人はぼくたちの親友ですので!」

「カイムくんのお師匠さん……ってことは……」

「国王にして元勇者の、『タルワール』さん!? 失礼しました!!」

「おう、敬語使えば許してくれると思うなよ?」

「みんな! 師匠はいま、サボってるんだ! 頑張って、みんなで仕事させよう!」

「カイムに賛成! クソオヤジを働かせるわよ!」

「はい! 働いてください!」

「せめてコツコツと、小さなことを積み重ねてください!」

「やだね。そういうのは大臣に任せてる」


 あーあ、師匠のだらしない姿がみんなにバレちゃった……。


「……つってもオレ、週二で働いてるから!」

「師匠! それ、普通は逆ですから!」

「ていうか、国王様なのにサボってて、嫌われないの?」

「サボってるクソオヤジの姿は、国民にはほとんど見せないの」

「そんな感じで、よく国民が納得してますね……」

「師匠のこういうところは、大臣さんが揉み消してるので……」

「しかもね、たまに外に出ては友人と遊んでるから、国王としては最低でも、国民からの支持は厚いの。このクソオヤジ」

「師匠、たまに親しみやすいって言われますもんね。学校行く前はいつも付き添ってくれてたから、気付かなかったけど」


 ていうか、修行してる頃はほぼ毎日寝てばかりだった気がする……。


「で? 何の用だ? オレは忙しいんだ!」

「師匠! バレバレの嘘はやめてください!」

「てか、ほんとに忙しいのは大臣だろうが!」

「なら、お前ら全員でかかってこい! 久しぶりに戦ってやるよ!」

「師匠……」

「デボン、ライヒト、最強コンビでぶっ倒して! そんで、働かせて!」

「了解!」

「わかりました。ライトさん!」

「何だ? 二人だけか?」

「『炎魔法』の陣! 発動!」


 ライトは炎を出し、操作する。


「ふーん、『魔法学』ねぇ……」

「『操炎』! 超巨大な炎!」

「断っておくが、火事にはするなよ?」

「影はできた! デボンさん!」

「うん! 『影魔法』! 影マリオネット!」


 師匠が簡単にマリオネットで操られる。


「師匠! 働いて!」

「デボン! 油断しないでね! こんなクソオヤジでも、元勇者だよ!」

「えっ?」

「口さえ動けばこっちのもんだ!」

「……あっ!」


 まずい! 師匠は「光魔法」! 

 よく考えたら、「影魔法」じゃ倒せない!


「えーと、我が呪縛せし影を、自由な姿に解き放たん! 『光魔法』! 発光!!」


 詠唱のせいで光力が上がっていて、全員が目をやられる。


「あー! 束縛されんのって、疲れるな! あの魔王は倒せても、オレには効かないからな!」


 だんだん目が慣れてきた頃、フレイルが質問する。


「てか、魔王さまから話聞いたの? いつだよ!?」

「一昨日飲みに行ったときに」

「お父さんのバカ……!」

「いいや、たしかに中等部程度なら、これでもトップレベルだろ。でもな、オレは引きこもってた魔王と違って、冒険していたんだ! 強いやつや行動不能になる技は嫌というほど浴びた! オレには誰も勝てねーよ!」

「その経験を戦闘以外にも活かしてください、師匠!」

「カイムの言う通りだ! 働けクソオヤジ!」

「かろうじて『操炎』は維持したけど、デボンさんは相性が悪いな……!」

「ごめん、ライトさん! わたしがしくじった!」

「いや、おれたち二人とも油断してた!」

「ほら、諦めてデートでもしてこい! つーか、全員で来いって言っただろ!」

「くっ……! こうなったら……!」


 フレイルがどこかへ行く。


「……なんだろう? まあいいや。師匠、手合わせお願いします!」

「久しぶりにやってやるか! 『魔力解放』!」


 部屋中が紫色のオーラに包まれる。


「部屋の中心にいるのに、すごい魔力量だ……! カイム、タイマンでやれるのか!?」

「カイムくん……!」

「ぼくがやる! そして、戻ってきたフレイルと一緒に戦う!」

「わかった! 任せたぞ、親友!」

「カイムくん、頑張ってください!」

「いきます! 『魔の力』……『解放』!!」

「一丁前に来るつもりか! なら、久しぶりにオレが、稽古をつけてやる!」

「『紫電纏い』! 師匠、本気でいきます!」

「なるほどな。『紫電』を『マジカルソード』に溜めたのか! 成長したな!」


 ぼくは、師匠に対して向き合った。

 そして、


「師匠! これがいまのぼくです! デボンさん考案、かつフレイル直伝!」

「来い!」

「『紫電移動』!!」


 ぼくも制御できないほどの速度で、師匠に突撃する。


「見切った! 『有物質光技法』! 光の盾!」

「えっ!?」


 だが、師匠は「光の盾」を後出しする。

 というか、『紫電移動』を止められたうえに、盾で「マジカルソード」を防がれた!?


「そんな……」

「はっはっは! オレを止められるやつは、誰一人……」

「いるよ! クソオヤジを叱ってあげて、ママ!」

「……フレイルのお母さんってことは……」

「元勇者さんの奥さんですか!?」

「あっ、師匠の奥さん!」


 たまに会う、美人で優しい人だ。

 けど、どうやらいまは違うようだ。


「うわっ! エストックじゃん!」

「タルワールさん! たまにはデートしましょう?」

「いやー、オレ仕事するから!」

「デート行きましょう!」

「たまには働かないとな! じゃあな、小僧ども! 筋はよかったぞ!」

「デートに……」

「……許してください。仕事したいので」

「じゃあ、一緒に仕事しましょう!」

「えー? お前べたべた触ってくるから、嫌なんだよなぁ……」


 そうつぶやきながら、師匠は仕事しに行った。


「師匠、これでどうか仕事癖をつけてください……!」

「というか、フレイルさんのアタックする感じって……」

「お母さんに似たんだな……」

「さ! カイム、デートしよ!」

「いや、ぼくは……まあいいか。師匠を見習って、フレイルに向き合う!」

「ほんとに!?」

「うん。四人で回ろう!」

「このヘタレマジパンダがぁ!!」


 フレイルが胸ぐらを掴む。


「殴らないでね!?」

「いいからあたしとデートしろ、こらぁ!」

「おおっ、元勇者さんたちのイチャイチャを真似しようと試みるも、照れて結局四人で回ろうとするだなんて、さすがは魔勇コンビだね! ね、ライトさん?」

「……あの、デボンさん。おれと二人でデートしない?」

「いいけど、イチャイチャなら四人でもできるよね? 二人をお手本にして、わたしたちも頑張ろう?」

「うん! デボンさん!」

「……やっぱりデボンは、強者の器だなぁ」

「フレイルもね。いや、戦闘面含めたらぼくもかな……」


 こうして、師匠の存在がみんなに知れ渡ってしまった。

 そして、元勇者の底の見えない実力を噛み締め、力の差を感じるぼくだった。

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