第十六話 レンズ越しの友達
「デボンさん、はやく行こうぜ」
「はい!」
そう言って、ライトさんについていくわたし。
「おそい! あ、ライヒトとイチャイチャしてた? そっか、それはごめんね」
「いや違いますよ!? 食事が終わったので、ライトさんが迎えに来て……」
「フレイル。そんなことより、『高速移動』のコツ教えてよ!」
「はいはい」
フレイルさんに茶化されながらも、カイムくんが話の軸を定める。
そういう関係が素敵だと思った。ずっと眺めていたいくらい。
だからわたしは、二人のファンになったんだ。
「デボンさん、おれたちも行こーぜ!」
「はい! ……って、さっきもやりましたね。このくだり」
「あっ……だな!」
ライトくんは面白い。
「勇者」に憧れたらしいけど、ちょっとだけ軽薄で、かっこよくて……
そういうところが好きだなぁ。
友人としてだけど。
そして、部屋を移動するわたしたち。
すると、ドア越しに茶髪のかっこいい人を発見する。
ハンサムだなぁ。
そう思いつつ部屋に入ると、カイムくんが話しかけた。
「お父さん! 日課?」
「うむ」
「魔王さま! あたしたちもいい?」
「魔王さま、ハンサムっすね!」
「魔王さんって、かっこよかったんですね……」
なんというか、ものすごくアダルトなオーラを出しているなぁ。
「てかさ、なんか長くね? この部屋。縦も横も超なげぇな! 天井高っ!?」
「アンドレアルフス曰く、次元が歪んでるんだってさ!」
「でも、ここなら、『高速移動』の『紫電』版! 『紫電移動』の訓練ができるね!」
「何故だ? 『魔の力』の解放を使えば、『高速移動』並みの速度を出せるであろう」
「あの、普通の地面だと、床がへこんでしまって……」
「つまり、ここと違い、外の世界は床が脆いのだな。そうか……」
表情は変わってないけど、元気をなくす魔王さん。
「魔王さんも、へこんでしまいましたね……」
「ドンマイっす! それより、おれもなんかしようかな! 炎の速度を使う的な!」
「でも、炎って留まってますよね……?」
「うん! じゃあ、どうする? おれら!」
「えっ!? えーと……」
あの二人の時間を邪魔したくはないし、魔王さんと戦おうかな……?
「じゃ、じゃあ魔王さん! わたしたちと、手合わせを!!」
「おっ、いいね! 魔王さま! 暇だから相手してくださいっす!」
「うむ。よかろう。キサマらとは手合わせしたかったしな。強くしてやる」
「いや、別にわたし、強くはなりたくな……」
「お願いしやーす!!」
「って、なんでライトさんは乗り気なんですか!?」
「いや、暇だから魔王さまを相手に選んだんでしょ? デボンさんは!」
「そ、そうですけど……わたし、十分強いので!!」
そう宣言すると、場が静まった。
「あ、ごめんなさい」
「ふはははは! 面白いムスメだな! 戦闘嫌いなのに、その力を持て余すとは! 後継ぎにしてやりたいくらいだ! カイムの存在がなければな!」
「おっ、魔王さま! おれは?」
「キサマは力のコントロールができていない。炎を操るとは、炎を動かすだけではない。高温にできるのなら、『魔法学』の陣でマグマをイメージして使いこなせ!」
「でも魔王さま! カイムにも言ったけど、おれは非情にはなれない! 強すぎず弱すぎず、リスペクトの精神を大事にして戦いたい!」
ライトさん……真面目だなぁ。
でも、そういうところは、すごくライトさんらしいかも。
「何をぬるいことを……! 炎を操っている時点で、リスペクトもクソもなかろう!」
「だったら、ぬるい『操炎』使いとして、魔王さまに勝つ! デボンさんと一緒に!」
「えっ!? わたし込みで勝つんですか!? 散々かっこいいことを言っておいて!?」
「おうとも! 『炎魔法』の陣! 発動!!」
「はぁ……では、いきます。魔王さん!」
「いいだろう。久しぶりに手合わせしてやる! カイムとフレイルも見ておるしな!」
「「えっ?」」
そう思い横を見ると、二人が座って応援していた。
「「二人とも頑張ってー!」」
「おう! 見てろよ!」
「……負けられない! 本気でいきますよ! 魔王さん!!」
「ふはははは!! 面白いコンビだ!」
「では! 超巨大炎!!」
「よし、影ができた!」
わたしは自分とライトさんの影に触れ、実体化させる。
「『影魔法』、影行進!」
「ほう、コンビネーションは良好だ。だが、小僧はムスメに頼り過ぎている」
「そんなのわかって……」
「いえ! わたしはそうは思いません! 人は影がないと存在を示せない! わたしはライトさんがいないと光れない!」
「ライトだけに? なんつって!」
「ライトさん!? もう少し真面目に……」
そう言おうとすると、頭をポンと乗せてこう言われた。
「サンキュー、デボンさん! 元気出た!」
笑いながらそう言うライトくんが、いつもよりかっこよく見えた。
「い、いきます! 影のライトさんと影のわたし! 行ってください!」
そう思って振り返ると、影のライトさんも、影のわたしの頭に手をポンと乗せていた。
「ええっ!? なんでなんで!?」
「実は、影の性格は持ち主の性格と同じになるんです。だから、やる気になったわたしならいけると思ったんですが……」
「あ、だから影の実体化を渋ってたのか!」
「そうですよ! でも、ライトさんが強いと証明するためにも、やる気出します!」
わたしがやる気を出そうとしていると、フレイルさんが茶化してくる。
「ヒューヒュー! 影までイチャついていい感じ!」
「フレイル、あんまり茶化さないであげて……」
「やれやれ、いつかかってくるのだ?」
魔王さんまで呆れてる……。
「気を取り直して、いきます! わたしとライトさんの影! 魔王さんに向かってください!」
「……来い!!」
わたしたちの影が魔王さんに突っ込んでいく。
その隙を突いて、作戦を思いつくわたし。
「ライトさん、考えがあります。それは……」
みんなに聞こえないよう、耳元でコソッと伝える。
「できますか?」
「うん! あとさ、これ勝ったら……敬語禁止な!」
「えっ……?」
「約束な! じゃ、始めるよん!」
「は、はい!」
ライトさん、どういう意味で言ったのかな……?
……いや、それはあとだ!
「超ビックバン巨大大炎上! ……な、でかい炎!!!!」
魔王さんに向かっていった二人の影は、
巨大な炎に焼かれて、持ち主の影に戻った。
「なんだこの大きさは!? だが、陽動の影たちまで消えているぞ! そして、『魔王の力』、解放!!」
部屋の中の天井から奥に至るまで、紫色のオーラに包まれる。
これが魔王さんの『魔力解放』なのかな?
「天井が高いから、炎もいままでにないサイズだぜ! フォ――ゥ!!」
「だが、当たらなければどうということはな……何っ!? 身体が動かん!!」
「影が魔王さんに重なった時点で、勝負は決まりました! 『影魔法』! 影マリオネット!!」
「なになに? 何が起きたの!?」
「お父さんが動かない……!?」
「フレイルさんの疑問も正しいので、魔王さんとライトさん、解説お願いします」
わたしは影に潜みながらライトさんにそう伝える。
「まず、おれが部屋の高さ限界まで炎を大きくする。そして、それを浮かせる」
「「ふむふむ」」
相槌を打つ魔勇コンビ。
ライトさんは続けた。
「すると、炎自体に影ができる。浮かしてるからね! その影に、デボンさんを潜らせた」
「なるほど……」
「……あとはわれに『影移り』とやらをして、われが『影マリオネット』で固定されたというわけだ」
「それで、魔王さま! 降参しますか?」
「……この攻撃を受けてもいいが、大火傷するだろうからな。認めよう。小僧とムスメは最強のコンビかもしれん」
「「……ありがとうございます!!」」
こうして、炎は縮小され消えた。
わたしも魔王さんの影から出て実体化する。
そして、
「デボンさん!」
「ライトさん!」
「「イエーイ!」」
仲良くハイタッチするわたしたち。
やっぱり、一人より二人だなぁ。
「じゃあ、約束ね!」
「はい……じゃなくて! うん! ……これからもよろしくね! ライトさん!」
「ヒューヒュー! イチャついてんね!」
「はい! イチャついてます!」
「おっ? さては惚れたか?」
「ふふふっ……どうでしょう?」
「おっ、またしてもデボンが、強者のオーラだ!」
そんなわたしを見て、ぼーっとするライトさん。
「どうかしましたか?」
「カイム! デボンさんって、超かわいくね!? カイムもそう思うよな! いや、思わないで! デボンさんの魅力はおれだけが知っててほしい!」
「それどっちなの!?」
「あはは。……それとライトさん。そういうことは、本人の前であんまり言わないこと!」
「……うん、ごめん」
「いや、謝られても……別にわたし、怒ってないから!」
「うん、ごめん……」
うーん、どうして謝るんだろう?
「ねぇカイム、あの二人のファンにならない?」
「うーん、ぼくはどっちでもいいかな」
「えっ!? お二人がわたしたちのファンになるんですか!?」
「あっ、いつものデボンだ」
「でもおれは、普段のデボンさんも好きだ!」
「だからライトさん、そういうことは本人を目の前にして言わないの!」
「サーセン!」
こうして、ライトさんと仲良くなったわたし。
この好意がそういう気持ちなのかはわからないけれど、大切にしよう。
そう思わせてくれるくらい、ライトさんに惹かれてしまうわたしだった。




