第十五話 タッグバトル
今日は魔導学校が休みだから、魔王城に遊びに来てる。
そして……
「それでは、我が息子カイム!」
「はい!」
「許嫁のフレイル!」
「うん!」
「操炎使いのライト!」
「うっす!」
「影魔法使い、デボン!」
「は、はいっ!」
「タッグバトル……始め!!」
ぼくたちはコンビを組んで戦うことになった。
なぜこんなことになったかというと、フレイルが、
『ねー、カイム。あたしたちでタッグバトルしない? 相性チェック的な感じでさー』
と言ったせいで、ぼくたちは巻き込まれる形になった。
ライトとデボンさんは、コンビを組む際に五分ほど作戦会議をしてた。
そして、いまに至る。
「魔王さま! おれ、『魔法のチョーク』使ってもいいすか?」
「ほう、『魔法学』か。うむ、許可しよう」
「あざっす! これ、小遣い貯めて買ったんだ!」
「な、何するんですか? ライトさん」
「……できた! 『炎魔法』の陣! 発動!!」
「なるほど! 頭いいですね!」
こうして、ライトは戦闘準備ができたようだ。
デボンさんは……常に準備万端か。
「フレイル、いくよ!」
「うん!」
「『魔の力』……」
「『魔力』……」
「「『解放』!!」」
こうして、魔王城の広間の空気が紫色に塗りつぶされる。
「よし、いこう!」
「そうだね! いくからね、デボン! ライヒト!」
「こ、来い!」
「あまり戦闘は好きじゃないけれど……来てください!」
ぼくはライトを狙い、フレイルはデボンさんを狙う。
「超巨大炎! からの、蒼い炎!!」
「くっ、近づけない!!」
「暗闇魔法」を使うか?
いや、そんなことをしたら、部屋全体が真っ暗になる。
つまり、「影魔法」の領域と化す!
「デボンさん、厄介だな……!」
「なら、ライヒトはあたしがやるね!」
「うん! ここは速攻でいこう! 『魔力強化』! 脚!」
「『高速移動』!」
お互いに、二人の背後を取る。
「かかった!」
ライトは一瞬で、ぼくたちの背後に炎を動かした。
「ライト、何するつもり?」
「デボンさん!」
「は、はい! 『影魔法』! 影つかみ!!」
「「えっ?」」
デボンさんがぼくとフレイルの前にできた影を両手で引っ張る。
すると二人とも足をズルッと滑らせ、
フレイルとぼくは背中から落ち、床に叩きつけられる。
「「かはっ!!」」
「ナイス! 畳みかけるぞ! 蒼の煉獄!!」
「やばいやばいやばい!! 『紫電』!!」
ぼくは「紫電」を上に向けて撃つ。
しかし、炎は実体がないので、普通に透かされた。
「はっはー! 戦闘経験の浅いおれたちが、最強コンビに勝てちゃったりして!?」
「『影魔法』! 影縛り! これで動けません! ……ライトさん!」
「おうとも! ほらほら二人とも! 蒼の煉獄を喰らうと、火傷するぜ!」
「あたし降参!! 固定されてたら分身できないもん! 寝っ転がってるし!!」
「……はぁ、ぼくも降参する。強くなったね、ライト」
「おう! よし、デボンさん!」
「はい、ライトさん!」
「「イエーイ!」」
仲良くハイタッチをして喜ぶ二人。
ぼくは初めて師匠とフレイル以外に負けて、
「ぼくより強い人っているんだ! 嬉しい!」
すっごく嬉しかった。
「こらカイム! なに喜んでんのよ!!」
「あ、ごめん。だってぼく、師匠とフレイル以外に負けたの初めてだし」
「あたしも。……でも悔しいぃぃぃ!!」
「はっはー! 反省会しようぜ!」
「ですね! 気分がいいうちに!」
「おめーら覚えとけよ」
「フレイル、言葉遣いが荒れてるよ!」
そんなふうに会話していると、お父さんが口を開く。
「わかったか? カイムにフレイルよ。単体じゃ勝てなくとも、コンビだったらわからんのだ」
「はい! お父さん!」
「うん! 魔王さま!」
「それにしても、同年代に負けるとはな。子世代も育っているということか……」
少し嬉しそうなお父さんに、ほっこりするぼく。
「はい、集まって!」
「ここでやるんですか?」
「うん! ほら、フレイルとカイムも!」
「へいへい」
「うん!」
こうして、反省会が始まる。
「なんであたしたちが背後を取るってわかったのよ?」
「お二人はいつも、死角から攻撃するので!」
「だからなのか。ライトが火を大きくしたのは、誘っていたと」
「そうだよ! というか、接近しないと、カイムって攻撃手段ほぼないしね! あのときのリベンジ成功だよ!」
「それと、炎を大きくしたり、位置を動かしたのは、影を作るためでもありました」
「作戦会議、役に立ってんじゃん」
「だね……」
というか、ぼくたち慢心してたな。
油断とも言えるけど。
「もう一回やっていい?」
「ぼくもリベンジしたい!」
「え? また勝っちゃっていいの?」
「あんまりあたしたちを舐めんなよ? 金髪野郎!」
「当たりキッツ!」
「あ、『暗闇魔法』も使っていいですよ。わたしの支配下になるので」
「おおっ、デボンが強者のオーラだ……!」
「というか、デボンさんが強すぎる!」
「聖光魔法」も「暗闇魔法」も、まさか「影魔法」が天敵だったとは。
「おれは?」
「バカ」
「扱い悪いな!?」
「でも実際、ライトも強いよ。火力面だけでいえば、ぼくの『紫電』に匹敵するし」
「あざまっす!」
「うっざ」
「トリッキーなわたしと、圧倒的火力のライトさん。案外いいコンビかもしれませんね」
「だな!」
「いや、デボンは全員の魔法と相性良いけどね」
「まあ、それはそうなんですが……」
それより、ぼくも負けて悔しいし、
「ライト! デボンさん! リベンジさせてください!」
「だね! あたしも勝ちたい!」
「ふっ、かかってきたまえ!」
「わたしも、戦うことの楽しさがわかってきた気がします!」
そして、二回戦目が始まる。
「よし、まずはデボンさんを狙おう!」
「うん! オッケー!」
「『魔力強化』! 脚!」
「『高速移動』!!」
またしても二人の背後を取る!
「デボンさん! ……蒼の煉獄!!」
蒼い炎が空中で横に広がる。
「くっ、炙られる……!」
「あっつ! でも、『有物質光技法』! 光の剣!」
「デボンさん! 信じてるぞ!」
「はい! そのまま灼いてください!」
「うっす!!」
蒼い炎が近づいてくる。
けど、
「うらぁ!」
フレイルの方が、一手速い!
デボンさんが屈むけれど、
光の剣がほぼ同時に振り下ろされる。
「もらった!!」
「『影潜り』!!」
「「あっ」」
しまった! 失念していた!!
ライトの影に潜り込み、剣をかわすデボンさん。
「『影魔法』! 影の引力!! ライトさん!」
潜っていても会話できるのか……!
そして、じわじわと炎に引き寄せられるぼくたち。
「ほれほれ。降参しないと、蒼の煉獄で……」
「降参!」
「ぼくも!」
デボンさんは影から出ると、またもやライトとハイタッチする。
「イエーイ! 二連勝!」
「ですね!」
仲がいいなぁ。
なんて思っていると、
「くっ、調子に乗りやがって……!」
フレイルが二人に毒づく。
「反省会する? カイム、フレイル!」
「ここまでくると、なんか申し訳なくなりますね」
「調子乗んなよ! 金髪メガネコンビ!!」
「だからフレイル、言葉遣いが荒れてるってば!!」
こうして、二度目の反省会が始まる。
「でもさー、やっぱりデボンが強すぎる!」
「だよね! ぼくたちが本気ではないとはいえ、翻弄されるなんて!」
「なら本気で来なよ! おれたちはいつでも真剣だけど? な!」
「はい! フレイルさんもカイムくんも、いつもの感じで来てください!」
「いいけど、後悔しないでよね?」
「ぼくは本気だったけどね。でも、もっと勝ちに貪欲にいくよ!」
ていうか、いま思えば二人を舐めてたかも。
「ほっほっほ、おれたちに勝てるかのぅ?」
「ライトさん、なんですか……? そのキャラ?」
「強者枠のおじいちゃんみたいなイメージかな!」
「なんですかそれ! あはは!」
「イチャついてんじゃねー! ほら、三戦目いくわよ!」
「あっ、はい!」
「おう!」
「はぁ、次は本気でやろう!」
「言っとくけど、これで最後ね」
「「えっ?」」
それから、三回戦目が始まる。
「フレイル! 分身して!」
「うん! まずは分身で様子見だね! 『有物質光技法』! 光のあたし! 二人分!!」
こうしてフレイルは、自分に姿形がそっくりな「光の分身」を作り出す。
「いけ! あいつらは受け身だと弱い! たぶんだけど! 二人とも片方ずつ攻撃して!」
フレイルがそう命令すると、「光のあたし」二人は軽くうなずき、ライトとデボンさんに突っ込んだ。
「『操炎』! 分裂する炎!!」
ライトがそう言うと、炎が分裂した。
「二つに分割した!?」
「ライヒトのやつ、『操炎』が上手くなってる……! でも、光には効くまい!」
「はい! だから、『影魔法』!」
デボンさんが宣言したけど……
「デボンさんは、一体何をするつもりだ……?」
「気をつけてカイム! デボン、影に触ってる!」
「え?」
デボンさんは「光のあたし」二人の影を引っ張り上げて、
「光のあたし」と引っ張った影をくっつけた。
「『影魔法』! 影マリオネット! 『光のあたし』さんたち、攻撃しに行って!!」
「乗っ取られた!?」
「でも、武器は持っていな……あ! フレイルの怪力があるか!」
「いえ、武器は『影』です!」
「「え?」」
武器は「影」? どういう意味だろう?
そう考えていると、「光のあたし」二人がぼくらに突っ込んできた。
攻撃されると思い、身構えるぼくたち。
……と、思いきや、
「光のあたし」はぼくたちの影に触れた。
「影マリオネット! からの、『影移り』!」
「光のあたし」の影が、じわじわとぼくたちの影に移動する。
「あっ! これ、前にライヒトがやられてたやつ!」
「しまった! 影に入られたってことは……!」
「『影魔法』! 影マリオネット!! これで、どんな動きもさせられますが、今回は立ったまま硬直させます! ライトさん!」
「うっす! 蒼の煉獄!!」
「こ、降参!」
「ぼくも……!」
「解除!」
こうして、影マリオネットは解除され、ぼくたちは大の字で前方向に倒れる。
「はー! 本気出したのに負けた!! つーかライヒト、何もしてねーじゃん!」
「フレイル、言葉遣い! それに、フレイルの分身の影を作ってたでしょ!」
「あー、言われてみれば」
「どうだ? 魔勇コンビ! おれたちに三回連続で負けた気分は!」
「やりましたね!」
「「イエーイ!」」
三回目のハイタッチをする二人。
「仲がいいなぁ」
「つーか、そもそもの相性がいいんだよこの二人! 性格とかさ!」
「なるほどね……」
「じゃ、反省会!」
「ですね!」
そうして、三度目の反省会が始まる。
「反省会はー……デボン強すぎ! 以上!」
「いや短っ!? おれは?」
「ライトは『操炎』の使い方が上手くなってたよ! 熱さは?」
「克服したっす!」
「うん、いいね」
ライトもしっかり戦えるようになってきてるんだな。
「デボン、今度は手抜きして戦って?」
「いやですよ。本気でぶつかりあうのが、勝負というものでしょう?」
「くっ……! 色気づきやがって……!」
「フレイル、言葉遣い!」
「はいはい、これでいいかしら?」
「はぁ……」
フレイルはちゃんとお嫁さんにいけるのだろうか……
まあ、許婚のぼくがいるけど。
「それより、やっぱデボン強いよね! 最強コンビのあたしらを、一人で圧倒するなんてさ!」
「いや、おれおれ! おれもいたじゃんか!」
「ねぇ、いつかタイマンしない?」
「嫌です。ライトさんと一緒じゃないと嫌です」
「なんだ? 惚れたか?」
「いや違いますよ!? コンビでやるなら楽しいなぁ……って思っただけで!」
「いやー、照れちゃうなー!」
「違いますからね!?」
浮かれるライトと動揺するデボンさん。
「でも、たしかにコンビで戦うのっていいかも。自分の弱点を補えるし」
「そうだね。また今度やろう!」
「え? 四回目は?」
「『光のあたし』は一日一回が限度。さっき最後って言ったっしょ? それよりデボン、部屋行こ?」
「はい!」
「カイム、おれたちも!」
「うん!」
こうして、デボンさんの強さと、ライトとのコンビネーションが息ぴったりで、ぼくたちの未熟さを痛感した。
それと、お互いの連携が大事になるから、タッグバトルも悪くないと思った。
そんなことを考えつつも、フレイルの部屋にみんなで向かうのだった。




