第十四話 勝負と可能性
「はい、それでは今日も『魔法学』をやっていきます」
「はぁ……また『魔法学』か……」
「あれ? フレイル、最初は楽しそうにしてたのに……」
「だって、ライヒトとカイムの戦いの日から、毎日のように『魔法学』入ってるし!」
「でも、ここ『魔導学校』だから」
「それは、そうなんだけど……」
なーんか納得いかないんだよなぁ。
あたしは実戦がしたいのに!!
「……というわけで、今日はここまでにします」
「「「ありがとうございました!」」」
ふぅ、やっと授業が終わった。
そして、昼休みに入る。
「今日もごはんが美味しいなぁ」
「カイム! 見て見て! 『操炎』!」
ふとカイムの席を見ると、ライヒトのやつが火遊びしてた。
「おー、ライトも慣れてきたね!」
「そりゃあ、戦闘の師匠のおかげっす! なんつって!」
「火遊びすんな、金髪!」
「相変わらず当たりつえ~!」
「『有物質光技法』! 手裏剣! ふっ!」
「ちょっ!?」
「ライト、危ない!」
カイムがライヒトに覆い被さり、ライヒトに光の手裏剣をかわされる。
「……チッ、外したか」
ま、ただの八つ当たりだからどっちでもよかったけど。
「何するんだよ、フレイル! ライトが重傷になるかもしれなかったんだよ!?」
「うるさい! あたしは最近イライラしてるの! マジパンダが構ってくれないし、ライヒトとばっかり仲良くなるし!」
「わかった。なら、久しぶりにやる?」
「いいわよ? クソオヤジの前に、カイムをぶっ飛ばす!」
あーもう! 何なんだよ、カイムも周りも!!
「ちょっと、二人とも! 落ち着きなって! デボンさんもなんとか……」
「これは面白くなってきましたね。友情に嫉妬する恋慕の気持ち。そのグラデーションが生み出す芸術的で美しくも儚い感情は、まさに『勇者の娘』だからこそ生み出せる最高のスパイスに……」
「ちょっと黙って! ファン一号!!」
「……あ、すみません! 無意識のうちに実況していました」
「デボンさーん! カイムたち止めなくていいの!?」
「はい。だってわたし、あの二人が本気で喧嘩したところは見たことがないので!」
「それはそうだけど……!」
「『魔力』……」
「『魔の力』……」
「「『解放』!」」
教室中が紫色のオーラに包まれる。
そして、教室の後ろ側でやっているので、自然とクラスメイトが黒板側に机をズラす。
カイムは教室の扉側、あたしは窓側に立ち、お互いに向き合った。
「なになに?」
「おい! 誰か言いふらせ! 面白くなってきたぞ!」
「ちょっと何あれ!? あの教室だけ紫色になってる!」
廊下からもギャラリーの声が聞こえる。
けど、あたしはそんなことどうでもいい。
「ギャラリーがうるさいけど、昼休みだから存分にやる!」
「もう、仕方ないな! ぼくもフレイルに合わせてあげる!!」
「うん! 『有物質光技法』! 光のあたし! 二人!!」
一瞬教室が白く光り、みんなが目をこすってしばらくすると、ようやく光のあたしを認識したようだ。
「これで三人分!」
「なんか、ざわざわしてるね……」
「どうでもいい! 『有物質光技法』! 光の剣! 二刀流バージョン!!」
「ふっ……これは厄介だな!」
「なに笑ってんのよ!! 刀投げ!!」
「光の剣」をぶん投げるあたし。
「くっ……! 『微弱紫電』!!」
「は?」
しかしその剣は、紫色の小さな稲妻に打ち消された。
「ゴロゴロって音もしなかった……!」
「これは、『流動紫電』の応用なんだ! そして、ぼくは剣を抜くよ!」
カイムが刀を抜いてる間に、あたしは三人で突っ込む。
「右のあたしは背後に回って! 左のあたしは一緒に攻めよう!」
そう命令すると、
あたしと光のあたしはカイムを囲う配置で、
カイムに対し剣を構える。
「前にあたし二人、後ろにも一人! ピンチなんじゃない?」
「こうなったら……『紫電』! そして、『紫電纏い』!!」
「来たか!! それを待ってたわ! 絶対に対抗してみせる!!」
「やってみなよ! みんなは離れててね!! そして、いま本体のフレイルは……右前のフレイル!!」
カイムの狙いはいい。
あたし本体を狙ってくるって点は!
でもね、
「後ろのあたし! 場所替え!!」
あたしには位置を替えることができる!!
これで前二人は光のあたし、カイムの後ろには本体のあたし!
あとは集中攻撃を……
「まだまだだねフレイル! 剣を『振り回せば』、全員分攻撃できる!!」
「そうか! 回転斬りか!」
「はあああ!!」
「マジカルソード」で攻撃される。
そして、光のあたしにも帯電はするようだ。
なら、当たらなければいい!
あたしはしゃがんで、カイムの回転斬りをかわす。
「くっ! 避けられた!!」
「魔王さまが言ってた! 『勝ちのやり方がわかってるやつは、それ以外を狙わない』! つまり、カイムは『紫電纏い』に気が行き過ぎてる!!」
要するに、カイムは「マジカルソード」に意識が向いてて、「勇者の剣」をただ持っているだけと言っても過言じゃないはず!
だから、いまのカイムには四本の剣を、受けることはできない!
「あっ、そうか! しまった!!」
「斬りかかれ!! 光のあたし二人!!」
カイムの首に「光の剣」が二本、腰のあたりに「光の剣」を二本クロスさせて、カイムをいつでも三等分できる状態になる。
「どうする? カイム」
「ま、参りました! 今回もぼくの負け!!」
「よし、消えろ! 光のあたしたち!!」
そう言うと、光のあたし二人は、消滅する。
「そして、これであたしの二勝二敗一分けだね!」
「うん。あのさ、位置替えは強すぎない?」
「ならあんたも、『紫電』使うの禁止ね?」
「わかったよ、これ以上は何も言わないから。だって、真剣勝負だもんね!」
「そういうこと。じゃ、ごはん再開!」
そんな会話をしていると、教室の前の方と廊下のギャラリーたちが全員拍手していた。
「すごかったぞー!」
「フレイルさんすげぇつえぇ!!」
「回転斬りかっこよかったぞー!!」
「「「フレイルさーん! かっこよかったでーす!!」」」
「うん、どーもありがとー!」
……って、だから、なんであたしが黄色い声援浴びてんのよ!
「魔王城のときよりすごかったな! ね、デボンさん?」
「はい! 分身と位置替えの使い方が上手くなっていて、最後は武器で終わらせたのがよかったです!」
そういえばデボンって、洞察力があるよなぁ。
カイムほどじゃないだろうけど。
「みんなにぎやかだね。フレイル」
「あんなの無視無視! あたし、カイムの弁当に集中したいから」
「そっか……」
複雑そうな顔をするカイム。
そして、お弁当を食べ終わる頃には、ギャラリーもいなくなっていた。
「はぁ、美味しかった!」
「うん!」
よし、この流れに乗じて……!
「手ぇ繋いでいい?」
「だ、ダメ!」
「なんでよ?」
「恥ずかしいから! ダメ!」
「ライヒトとは繋いでなかった?」
「ライトとは握手だし! フレイルは特別なの! わかった!?」
「あたしが、特別……」
……なんか、すっごく嬉しい!!
「うん。フレイルは特別だよ。なんたって、ぼくのライバルだし!」
「じゃあ、それ以外は?」
「え? 尊敬してる大事な人……! じゃ、ダメかな?」
尊敬は余計だけど、大事な人か……
「ダメじゃない!」
「うん! じゃあ、さっきの反省会しよっか!」
「反省会?」
「何それ? おれも混ぜて!」
「じゃあ、わたしも」
「うっわ、お邪魔ファンコンビがやってきた……!」
「邪魔してすみません……!」
「いやまあ、別にいいんだけどね。友達だし」
「はい! あ、そうだ。カイムくん、ライトさん。フレイルさんも」
「「「なに?」」」
デボンはメガネを光らせながら言った。
「分担して、いまの戦い方を分析しませんか? 女子は女子! 男子は男子で! そのあと発表! みたいな」
「面白そうだな! 要するに、必殺技を考えたり?」
「そうそう、そんな感じです!」
「カイム、なんか始まったよ?」
「フレイル、こういうときは、悪ノリするべきだよ」
「そうだね! じゃあ、分かれよう!」
「はい!」
「おう!」
こうして、デボンと作戦会議?する。
「フレイルさんって『有物質』……なんでしたっけ?」
「『有物質光技法』だよね? それがどうかした?」
「それ、盾にもなりませんか? 『光の剣』と『光の盾』! みたいな!」
「おっ、面白そうじゃん!」
「あと、お父さんから何か教わっていませんか?」
「えーと、クソオヤジは……『光とは、視覚に一番最初に入る輝きのことなり』とかなんとか」
「それって、光を使えば、いつかはサブリミナルも可能になりそうですね!」
「サブリミナル?」
「脳に作用する技術みたいなもので、もしかしたら、カイムくんもフレイルさんに告白したくなるかもしれません!」
「何その素敵な技術!! クソオヤジにも聞いてみるわ!」
「はい!」
なるほどね。いままでは光は「ものを作るための存在」だと思っていたけど、「光そのもの」に着眼すればいいのかも!
サブリミナル?ってのは、よくわかんないけど。
「はい、発表!」
「じゃあおれらからね! カイム!」
「はい! 『紫電一閃』! 『紫電流し』! 『紫電ソード』! 以上!」
「『紫電』ばっかじゃん!」
「いやー、紫色の雷は男心をくすぐるんだよねー! な、カイム!」
「うん!」
「『紫電一閃』は魔王さまがやってたからいいけど、『紫電流し』と『紫電ソード』って何よ?」
てか、なんで「紫電」に固執してんの?
「暗闇魔法」が泣いてるぞ!
「『紫電流し』は相手に触れて『紫電』を流すの!」
「それ『流動紫電』と被ってない?」
「うっ……ま、まあそれは置いといて」
「置くな」
「『紫電ソード』! これは『有物質光技法』をフレイルとか師匠に教わって、『紫電』でもできるようにするんだ!」
「ビリビリしそう。つーかさ、『光』はただの『光』だからいいけど、『紫電』は『雷』じゃん。持てないでしょ!」
「ううっ……」
「フレイル! カイムが図星でまいってるぞ!」
「いや、図星ならよくない?」
と、ここで、デボンが名案を出す。
「なら、『紫電纏い』はどうですか?」
「え? それならやったことあるじゃん。ね? カイム」
「うん」
「そうじゃなくて、フレイルさんは『高速移動』してましたよね?」
「うん……。光を纏って、光に近い速度を出すの。光と違って重さがあるから、『光速』は無理だけど……あっ、そういうことか!」
「はい。名付けるとすれば、『紫電移動』でしょうか。『紫電』の応用としては、ありきたりですが」
なるほどね。
それならカイムに教えられなくもないかも。
「さっすがデボンさん!」
「デボンさん、ありがとう。これでぼくも強くなれるかも!」
「はい! それで、こっちは『光の盾』と『サブリミナル』です!」
「『光の剣』の対になる『光の盾』ってこと?」
「はい。お二人は攻めっ気ばかりなので、守りの技があってもいいと」
「だな! そっか。カイムだけじゃなくて、フレイルも強くなるのか!」
「お互いに頑張ろう、フレイル!」
「わかった! カイムもね!」
「うん!」
そして、次の話題に移る。
「お次は『サブリミナル』です!」
「「「……何それ?」」」
デボン以外の三人が声を揃える。
「簡単に言うと、『脳に作用させる一瞬の情報』を繰り返し見せることで、無意識のうちに見た現象を誘発する技術です。たしかそんな感じでした!」
「こわっ!」
「すごいね!」
「こっわ! デボン、よく思いついたわね……」
「ダメですか?」
「いいんじゃね? な、カイム!」
「う、うん……。でも、あまり戦闘には使えないね」
「いいのよ、それで。カイムを悶々させることもできるしね!」
「あ、そうか! 『無意識に』だもんなぁ」
なんか、デボンのおかげで世界が広がったなぁ。
「じゃあ、また放課後ね。そろそろ予鈴鳴るから」
「はい!」
「おう!」
「うん」
こうして、あたしたちは少しだけ強くなる可能性を見つけた気がする。
それから、サブリミナルを会得できれば敵の技を誘発できそうだし、「光の盾」は目から鱗だったなぁ。
それと、何気なく学園生活に慣れてきているあたしがいる。
そんなことを考えながら、今日もカイムをチラッと眺めながらも、授業を受けるのだった。




