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第十二話 魔勇コンビ?

今日から二話連載にします




 魔界に行ってお泊まり会も終わり、休み明けの学校だ。


「いやー、楽しかったね。魔王城!」

「うん。久しぶりに帰れてよかったよ」

「でも、カイムはよかったの? 魔界じゃなくて、こっちに住むことにして」

「うん。フレイルの『ワープの魔法』ですぐ遊びに行けるし、師匠を見張らないといけないから……」

「そうだね!」


 カイムは相変わらず真っ直ぐだ。

 そういうところは、やっぱり魔王さまに似ている。

 そして、あたしはカイムのそんなところが……


「おっす! カイム! フレイル! 行こーぜ!」

「お、おはようございます。カイムくん、フレイルさん」


 そんなことを考えていると、ライヒトとデボンが挨拶してくる。


「うん、おはよう!」

「はー、いまいい雰囲気だったのに!」

「そうなの? そいつは悪いことをしたな! でも、おれはカイムの親友だし、別に良くね?」

「うっざ。クソオヤジに姿が似てるから余計ムカつく!」

「だから、理不尽すぎるから! その理由!」

「それよりライヒトくん。はやく行こう?」

「おう!」


 こうして、カイムはライヒトと一緒に登校する。


「はぁ……」

「ど、どんまいです……」

「同情するなら時間くれ。カイムとイチャイチャできる時間を!」

「いや、それはいつもしてませんか?」

「それでもいいけど足りないんだよ! あたしはもっとイチャイチャしたい!!」

「はぁ……それより、フレイルさん」

「なに?」


 あー、そういやデボンって、カイムが好きなんだっけ?


「わたし、カイムくんが好きです!」

「おう、いいよ。やってやろうじゃん! ライバル発言として受け入れて……」

「でも、フレイルさんも好きです!」

「えっ? そっち系なの? いや、魔族だと当たり前らしいけど……」

「いや、違いますよ!? 要するに……わたし、お二人のファンになっちゃいました!」

「あぁ、なんだ。そういう意味か」


 よかった、ただのファンか。

 いや、よかったのか?


「だから、応援してます!」

「うん、ありがとね。で、何してくれるの?」

「……と、言いますと?」

「ファンなら背中を押してみなさいよ! ほら!」

「それたぶん、ファンの人が堂々とやることじゃないと思います! 先行きますね!」

「待てや!」


 こうして、あたしはデボンを追いかけながら登校する。

 途中でカイムたちを追い抜いたけど、教室まで走った。



「はぁ……疲れた」

「大丈夫? フレイル」

「うん……カイムが、膝枕してくれたら……治まるかも。なーんて……」

「じゃあ、するね」

「えっ!?」

「寝転がって」

「……うん」


 こうして、あたしはカイムの膝に頭を乗せる。


「あー、極楽」

「フレイル、気持ちよく寝ちゃってる系? カイム、おれにもやってよ! 親友でしょ?」

「いや、やらないからね!?」

「ライヒトは失せろ」

「だから、当たりが強すぎだってば!」

「いいですね。普段は攻めてる人が甘えて、奥手の人がそれを許す。それはつまり、恋人同士でも難しいことなのに、イチャイチャできる友達以上恋人未満だからこそできる所業だと、わたしは思います。しかも……」

「おいファン一号! あたしはいま、カイムの膝の温もりを感じてんの! 気が散るから少し黙れ!」

「あ、すみません。つい興奮してしまいました!」


 まったく、人の恋路を邪魔すんなっての。

 てか、クラスメイトにめっちゃ見られてる気がする。

 別にいいけど。


「デボンさんがこんなに話すだなんて……意外だな! じゃあおれファン二号ね! ところで、なんのファン?」

「カイムくんとフレイルさんの、二人のファンです!」

「あー! そういうことね! たしかに仲良いし、実際にファンクラブを作っちゃう? そしたら、会長はデボンさんね!」

「いいですね。真面目に検討するのもありかと」


 なんか勝手に話が進んでるし……

 しかも二人だけで。


「あー、周りがうるさい……」

「いいんじゃない? それよりフレイル、落ち着いた?」

「うーん、放課後までよろしく」

「……それは勘弁して? 実は膝がすごい痛いから。師匠も足腰は、あんまり鍛えてくれなかったしさ……」

「はいはい」


 仕方ないので、頭を上げて椅子に座り直す。


「……ふぅ、リフレッシュした!」

「いつもご苦労様」

「それ、こっちのセリフね」


 うん。やっぱり、カイムとの距離感はこのくらいがいいかな。


「じゃあ、カイム! えーと、会長! なんて略せばいいでしょうか!?」

「そうですね。じゃあ、魔勇まゆうコンビで!」

「了解しました、デボンさん! ……じゃなくて会長!」

「グダグダじゃん……」

「ま、悪ノリに付き合ってあげるのも親友だからこそだし……」

「……そだね」


 はぁ……カイムは優しいなぁ。


「魔勇コンビの『魔』担当のカイムくん! で、合ってますか? 会長!」

「はい。魔王の息子なので!」

「その『魔』だったの!? てか、あたしは『勇者』って言われるのが嫌いなんですけど?」


 なんだこの変人コンビは……? 調子狂うなぁ……。


「じゃあカイム! さっきの膝枕の感想は?」

「いい質問ですね、副会長さん!」

「おれが副会長なの!? いや、別にいいけど!」

「グダグダか?」

「えーと、膝が痛くなった……かな」


 あたしはカイムの発言に、少しムカっとした。


「は? ほんとにそれだけ?」

「なんでフレイルも絡んでくるの!?」

「カイムくん、もっとあるんじゃないんでしょうか?」

「デボンさんの言うとおりだ! もっと本音をさらけ出してみなよ! ほれほれ!」

「よし、いいぞファン共!」


 あたしもカイムの本音が知りたいから、好都合だ。

 そう考えていると、デボンが質問してくる。


「まあ、カイムくんに質問するのはこれくらいにして……。次に、魔勇コンビの『勇』担当のフレイルさん! 膝枕の感想は?」

「あのさ、そうやって質問するの、目立つからやめてくれないかしら」

「おおっ、したたかな感想だ!」

「ライヒト黙って」

「ひどい!」


 そんな会話をしていると、デボンが改めて質問してきた。


「じゃあフレイルさん、カイムくんの膝枕の感想は? これはファンとしてではなく、友達として尋ねているので」

「えーと、あったかくて、頑丈で、強さを感じた。あと魔族の匂いがしたね! 久しぶりに魔王軍のみんなの匂いがして、ちょっと懐かしくなった!」

「なるほど、メモメモ……」   

「いやなんのメモだよ」


 あたしがツッコミを入れると、カイムも不満を暴露する。


「というか、二人とも悪ノリが過ぎるからね!? やめないと、ライヒトくんのあだ名をクラスメイト全員に定着させるよ!?」

「それはマジでやめて!?」


 あ、さすがのライヒトも、ライヒト呼びの定着は嫌なのか……。


「では、次の休み時間にまた会いましょう!」

「だな! じゃあな、カイム! フレイルも!」

「二度と来んな! もしファンとして来たら、会話してやらないから!」

「わかりました。悪ノリが過ぎました……」

「……デボンは素直だね。そういうところはいいと思う」

「だから、こっそりとやります!」

「って、懲りてないんかい! まあ、いいけど」

「いいの!? フレイルは、陰であんなことされて平気なの?」

「うん。だって、あたしたちを応援してるんだし、別に良くない?」

「……そうだね。ぼくも潔癖すぎたかも」


 よし、なんとか納得したか。


「じゃあ、いまから目を合わせない?」

「嫌だ! それは付き合ってからやることだぁ!」

「まったく潔癖直ってないじゃん!」

「わかったよ! この続きは昼休みにしない!?」

「よし、わかった。約束守ってよね」

「うん!」


 チッ……

 なんで目を合わせないんだよ! このマジパンダが!

 心の中で毒づくあたし。



 そして昼休みがやってくる。


「あー、カイムの作ってくれた弁当は美味しいなぁ」

「それ、ほんとに思ってる?」

「うん! アイムさんの料理と同じくらい美味しいよ?」

「それならよかった、けど……」


 カイムがそう言いながら目線を下に向けたので、あたしもつられて下を向く。

 すると、あたしの机の前にデボン、カイムの机の前にはライヒトが……

 隠れてるつもりなのかはわからないけど、隠れていた。


「「何やってんの?」」

「ごはんを誘おうと思ったら食べ始めたから……見てました」

「同じく。カイム、飯食おーぜ! ……って話しかけようとしたら、まさか二人とも弁当とは……」

「いや、普通に机くっつけて話そうよ。言っておくけど、あんたらみんなに超見られてたからね?」

「ほんとですか!? 恥ずかしい……」

「いや、恥ずかしがるの遅すぎるから」

「おれは立ちながらでいいや! 菓子パンだし!」

「ならわたしもパンなので……」


 はぁ……あたしの助言、意味ないじゃん。

 ……ま、いいけどさ。


「それで、デボンは『目標』とかできた?」

「はい! 『魔勇コンビファンクラブ』の結成を……」

「それはよそでやって。ライヒトは『目標』とかあるの?」

「『勇者』になる! そのために……」

「「「そのために?」」」


 あたしとカイムとデボンが口を揃えた。

 そしてライヒトが言う。


「カイムの弟子になる!」

「はぁ? なんでカイム?」

「強いからだよん! 弟子にしてくださいよん!」

「その喋り方うぜぇからやめろ」

「フレイルはおれに冷たいな……」

「別にいいけど、普通に絡んでね?」

「うん、わかった! よろしくしく! フレイルが冷たくてしくしく……」

「おい金髪、あんま調子乗んなよ?」

「こっわ! カイム、助けて!」


 ライヒトはカイムに掴まって身を隠す。

 するとカイムは、ついにあたしと目を合わせた。


「フレイル、乱暴な言葉は……」

「なに? 聞こえない」


 じっ……と目を合わせるあたし。


「乱暴な……こと……ああっ! ダメだ! 目を合わせられない!」

「おいこらマジパンダ! 逃げてんじゃないわよ!」

「暴力反対!」

「その背中の剣を、前に一般人に向けたやつは誰だ!? 言ってみな!」

「ぼくです! だから、殴るのはやめて!」

「はいはい、わかったわよ。殴らない殴らない」

「よかった」


 そんなに怖がられると、こっちまで申し訳なくなるじゃん。

 だから、あたしはカイムの手を取った。


「え? 何する気?」


 そして、手の甲にキスをしてあげた。

 そしたら、カイムが口を開く。


「ぎゃああああ! 洗わなきゃああ!!」

「ちょっとカイム! そこは普通、喜ぶところでしょうが! 潔癖症っぽいところなんて見せたことないくせに! 待てや!」


 水で洗い流そうとするカイムを追いかけるあたし。


「……ところで、手の甲にキスの意味って? デボンさん知ってる?」

「ふわあ……! 素敵な場面に遭遇しちゃった!」

「はぁ、ダメだこりゃ」


 こうして、あたしはカイムにキスした。といっても、手の甲にだけど。

 それでも、カイムとの距離が縮まればいいなと思いながら、今日も学園生活を満喫するのだった。

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