表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シグナリア  作者: もへもへーぬ
第1部ー紋章の継承者ー
9/19

第9章ー変装ー

朝。


まだ空気が少し冷たい時間帯に、京慈は中庭に出ていた。


軽く体を動かすつもりだった。


「お、いたいた」


背後から声。


振り返ると、らきが手を振っている。


「京慈、今日1日付き合ってよ」


「え、今日ですか?」


「今日。特に予定ないでしょ?」


即答だった。


「…ないですけど…分かりました」


---


王都の通りを歩く。


「もしかして、任務ですか?」


「んー、ちょっと違うかな」


らきは軽く肩をすくめる。


「九識への依頼|。それも――あたしへの」


少しだけ口元が上がる。


「ご指名ってやつ」


「……なるほど」


京慈は小さく頷く。


「内容はどんなものなんですか?」


京慈は興味本位でらきに聞くと、真面目な顔つきになり、


「最近、この辺で子どもたちが行方不明になってるんだ。1人2人じゃない。10、20人くらい。暗数もあるだろうからもっといるんじゃないかな。それの調査。」


「危険性はあるんですか」


「あるかもね。でも戦うとは限らない」


その言葉の意味は、まだ分からない。


---


路地裏。


人目の少ない場所で、らきが立ち止まる。


「ストップ。こっち来て。」


らきは路地裏の入り口のような部分で壁にもたれかかっている男を指さすと、


「アイツ。アイツが今回のキーマン。いわゆる情報屋。あたしはちょっと行ってくるから、京慈はここで見てて」


そう言って、布のようなものを顔に当てる。


数秒。


そこにいたのは、まるで別人だった。


立ち方も、視線も、空気も変わっている。


「……ほんとに別人になりますね」


「でしょ?」


声すら違う。


「これがあたし流の仕事やり方」


---


変装したらきは対象の男に近づく。


「久しぶりだな」


自然な声。


男が振り向く。


一瞬の警戒。


だがすぐに崩れる。


「……ああ、お前か」


(完全に信じてる……)


京慈は距離を取りながら観察する。


らきは男と肩を並べ、笑いながら歩く。


完全に知り合いの距離だ。


---


会話の流れで、男が路地へと入る。


誘導されているなんて夢にも思わないだろう。


らきは何も言わず、自然に進んでいく。


---


気が付けば男は袋小路状態。


挟まれていると悟った男の空気が変わる。


「お前…アイツじゃねぇのか!俺に何の用だ」


低い声。


らきは笑ったまま。


「ちょっと確認したいことがあってね。」


男の手がとっさにナイフに伸びる。


京慈が踏み込もうとした瞬間――


「来なくていいよ!」


短い声。


京慈の足が止まる。


---


男がナイフを片手に踏み込む。


だが。


「遅いよ」


次の瞬間、らきの姿が消える。


いつの間にか男の背後に回り。


「はい、終わり」


喉元に刃。らきは背後に回る間にナイフも男から取り上げていた。


男は数秒で完全に制圧された。


---


男は情報をすぐに吐いた。


「子どもは少なくとも30人はいる。場所は港付近の貨物倉庫。目的は売買だ。」


「それだけ吐いてくれれば十分かな。よし、こいつは騎士団に任せて、港の貨物倉庫に行くよ」


「はい」


---


貨物倉庫前。


京慈は扉の前で止まる。


(情報通り子供がいる。銃を持った奴ら…奴らが首謀者か。)


その瞬間、迷いは消えた。


「俺が先に行きます」


「いいよ。あたしは少し準備があるから、後から行く。」


軽い返事。


---


扉を蹴破る。


「誰だ!」


中の男たちが一斉に反応する。


京慈は迷わず踏み込む。


一人目を叩き伏せる。


二人目の攻撃をいなす。


2人を瞬間的に制圧するが、敵の数が多い。


(一気に押し切れない…)


しかも。


(子どもたちが…人質がいる。これ以上怖い目に合わすわけにはいかない)


強く出られない。


---


「取り囲め!」


敵が構える。


京慈は包囲される。


(まずい――)


その時。


「はい、残念。あたしたちの勝ちだね」


らきの声が聞こえたと同時に一瞬だけ、視界が揺れた気がした。


---


「なっ……!?」


敵の一人が崩れる。


気づけば、別の位置。


また一人。


音もなく倒れる。


---


京慈は反応する。


だが、違和感。


(……動きが変だ)


さっきまで敵だと思っていた男の一人。


その動きが、どこか硬い。


ぎこちない。


---


「大丈夫。そいつ、触ってみ」


どこからか、らきの声がする。


京慈は反射的に腕を掴む。


――軽い。


不自然に。


「……え?」


押す。


倒れる。


音が鈍い。


中身が空のような感触。


「マネキン。」


背後から声。


「いつの間にか入れ替えといたよ」


---


視界を見渡す。


半分以上。


立っている“敵”が、動いていない。


いや、最初から動いていなかった。


(気づかなかった……?)


---


「集中してると、見えなくなるでしょ」


らきの声。


その間にも。


「はい、次」


本物の敵が、確実に減っていく。


---


京慈は残った敵に集中する。


今度は迷わない。


一気に踏み込む。


最後の一人を叩き伏せる。


---


静寂。


気が付いたら終わっていた。


---


「おつかれさん。」


らきがひょいと出てくる。


何事もなかったように。


「……いつからですか」


「んー、途中から」


軽い。


「最初に何人か減らして、マネキンに入れ替える。あとは順番に入れ替え。気絶させて、変装道具使って仲間がいるように錯覚させる。その間に、気絶させた敵を拘束。これの繰り返し。」


簡単に言う。


全然簡単じゃない。


---


子供たちは無事だった。騒ぎを聞きつけた自警団が駆け付け、子どもたちを保護し、拘束されてたり、伸びている男たちも同時に発見され、身柄を拘束された。


外に出ると、ようやく息が抜ける。


---


帰り道。


「さっき、よく突っ込んだよね」


「……はい」


「悪くないよ」


すぐに言う。


「でも、それだけだと足りない」


---


京慈は少し考える。


「……夢中になって見えてない部分が多いです」


「そういうこと」


らきは笑う。


「全部見ようとしない方がいいよ」


---


屋敷が見えてくる。


(……勝つだけじゃない)


(終わらせる方法もある)


---


京慈の中で、戦い方の輪郭が少しだけ広がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ