第7章ー境界の任務ー
「魔物の討伐任務?」
「そうだ。」
朝食を終えたばかりの京慈は、偶然カナムと鉢合わせ任務の話を持ち掛けられた。
その依頼は、本来ギルドに降りるはずのもの。
だが降りる前に、カナムが止めた。
「この案件は九識で引き受ける」
それだけで決まった。
依頼内容は曖昧だった。
準災害級から中型級魔物の討伐。
指定がされていないため段階が広く、通常なら複数パーティーが動く規模だ。
「お前にはちょうどいい」
カナムはそう言った。
「……俺が、ですか」
京慈は思わず聞き返す。
「準災害級の可能性もある。念のためにこいつを同行させる。」
同行者が一人追加された。
現れたのは、りゅーいちだった。
「よろしくな」
「よろしくお願いします」
京慈は深く頭を下げる。
2人は目撃現場に向かうと、現場は王都郊外の森だった。
空気は重く、静かだった。
だが他の森とは異なり“静かすぎる”。
「確かにいるな」
りゅーいちが呟く。
姿を現したのは中型魔物。
人型に近いが、明らかに異質だった。
「行きます」
京慈は前に出る。
「おう」
りゅーいちは後方に下がる。
戦闘は短く、だが濃かった。
京慈は正面から斬り込む。
反応はある。
だが手応えもある。
(いける)
そう思えた。
一閃。
魔物が崩れる。
「……倒した」
京慈は息を吐く。
その瞬間だった。
森の奥から“圧”が落ちる。
空気が変わる。
「…何か…来る」
京慈の声が低くなる。
現れたのは、異様だった。
中型ではない。
だが完全な災害級でもない。
準災害級個体。
「……まずい」
京慈は後ずさる。
(これは勝てない)
本能が告げる。
逃げるべきだ。
そう判断できた。
だが、
「……放っておけない…」
京慈は一歩前に出る。
(誰かがここに来たら被害が出る)
(それは、ダメだ)
剣を握る。
戦闘開始。
だが違った。
さっきの魔物とは格が違う。
一撃が重く、動きが速い。
京慈は押される。
(無理だ……!)
そして――
「っ……!」
身体が反応する。
硬化。
腕が石のように変質する。
攻撃を受け止める。
「……っ、これが……」
だが完全ではない。
防御は成立しても、押し負けている。
京慈は理解する。
(時間がない)
その時だった。
「よし、今日のところは合格だ」
軽い声。
りゅーいちが前に出る。
空気が変わる。
一歩。
それだけで戦場が揺れる。
「よく逃げずに戦ったな。」
次の瞬間。
りゅーいちの刀が振られる。
それは“斬撃”ではなかった。
戦場の支配そのものを切り替える一閃。
準災害級魔物の動きが止まる。
斬撃により、切られた部分を再構築しようとする。
だが間に合わない。
「こういうのはな…」
りゅーいちは言う。
「時間で殴るんだよ」
鋭い一閃が魔物を襲う。
その瞬間、魔物の身体は崩壊していく。
そして、訪れる静寂。
京慈はその場に立ち尽くす。
自分じゃ勝てない。そう思った魔物をりゅーいちはあっけなく討伐してしまった。
これが力の差、踏んだ場数と経験の差。
京慈はひどく痛感した。
「……ありがとうございました、りゅーいちさん」
「いいって。京慈も冒険者になって一年足らずなのによく頑張ってるよ。」
軽い返事。
そして、九識家へと帰還。
京慈は身体を休めるように言われ、自室に戻った。りゅーいちはカナムへ報告すべく、当主の間に向かった。
「どうだった。」
カナムの声は淡々としていた。
「中級の魔物数体、準災害級一体を確認、討伐した。今のアイツは中級1体なら勝てる実力だ。中級複数体以上が相手なら、多分ダメだ。だが、誰にも真似できない勇気を持っている。」
りゅーいちは現場の報告を済ます。
「硬化の紋章で間違いないな」
カナムは冷静に聞く。
「ああ。間違いない。しっかり紋章が発現していた。」
りゅーいちが答える。
「ただ、まだ完全な制御はできていない。」
カナムは少しだけ目を細める。
「そうか。了解した。ご苦労りゅーいち。」
りゅーいちはそう言われると当主の間から退出した。
「……あいつに頼むか」
カナムはボソッと言いどこかに電話をかけ始めた。




