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シグナリア  作者: もへもへーぬ
第1部ー紋章の継承者ー
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第49章ー空白ー

更生施設の外に出ると夜風が静かに吹いていた。


地下での空気が重すぎたせいか外の冷たさが妙に現実的だった。


京慈とめいはしばらく無言で歩いていた。


どちらも口を開かない。


モードの最後に発したあの言葉が頭から離れない。


九識の因縁。


11代目の暗殺。


空白の数年間。


そして。


“近い血縁”。


京慈は無意識に拳を握る。


めいが横目で見る。


「……大丈夫?」


京慈は少し間を空け苦笑した。


「大丈夫に見えるか?」


「全然」


即答だった。


少しだけ空気が緩む。


だが。


その瞬間。


京慈が足を止めた。


「……え?」


施設正面。


そこに人影が並んでいた。


りゅーいち、アスノ、そら、あきと、らき、ぽた、りすず、かぁり。

そしてアヤ。その中心にカナム。


全員いた。


京慈が引く。


「なんで全員いるんだよ……」


「心配したからに決まってるでしょ!!」


りすずが怒鳴る。


「端末の位置情報切った瞬間確信したからね!?絶対なんかしてるって!!」


「ごめん……」


珍しく素直だった。


ぽたが駆け寄る。


「怪我ない!?」


「大丈夫か!?」


「死ぬほど怒られると思った……」


めいが苦笑する。


そらが呆れた顔をする。


「当たり前だろ……」


らきは安心したように息を吐いていた。


アヤは静かに2人を見る。


そして。


「……モードは?」


京慈が少し黙る。


「死んだ」


短く答えた。


アヤは目を閉じ小さく息を吐く。


「そう…」


「報告は私がやっとく」


「君たちは帰って休んで」


優しい声。


だが、その直後だった。


「京慈、めい」


低い声。


空気が変わる。


カナムだった。


表情は厳しい。普段よりも遥かに。


京慈は視線を向ける。


カナムは真っ直ぐ見ていた。


「ヤツから何を聞いた」


「……」


「何を言われた」


静か。


だが、圧があった。


兄妹たちも空気を察して黙る。


京慈は少しだけ目を逸らした。


隣のめいも僅かに緊張している。


京慈は答えた。


「……別に何も」


カナムの目が細くなる。


「本当だな?」


「ただ昔話聞いただけです」


めいも合わせる。


「モードの体調もかなり悪かったし」


数秒の沈黙で重い空気が流れる。


カナムは2人を見つめていた。


まるで嘘を見抜こうとするように。


だが。


「……そうか」


それ以上は聞かなかった。


ただ表情だけは変わらなかった。


――――――


九識家に戻ったころは深夜だった。


屋敷の自室でカナムは静かに椅子へ座っていた。


暗い部屋。


机の上だけが小さく照らされている。


その机上には大量の書類と数枚の写真立て。


カナムはその内の写真立て一枚を手に取った。


写っていたのは古い家族写真。


父と母。


幼い頃のカナム。


そして。


もう一人。


黒髪の少女。


年齢は当時のカナムと近い。


少女は笑っていた。


家族のように。


カナムは無言で見つめる。


静かに。


長く。


そして。


写真の裏へ指を滑らせる。


そこには薄く文字が書かれていた。


だがカナムはそれを見つめたまま何も言わない。


ただ普段の彼からは想像もできないほど苦しそうな目をしていた。

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