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シグナリア  作者: もへもへーぬ
第1部ー紋章の継承者ー
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第47章ー老いー

深夜の九識家は静まり返っていた。


虫の音だけが微かに聞こえる。


その屋敷の廊下を2つの影が静かに進んでいた。


京慈とめい。


「……ほんとに行くの?」


めいが小声で聞く。


京慈は前を向いたまま答える。


「今しかない気がする」


「昼間じゃ絶対止められる」


それは間違いなかった。


特にカナムは確実に許可しない。


だから2人は黙って抜け出した。


玄関ではなく裏庭側。


らきの変装道具をこっそり借り監視を誤魔化す。


めいが小さく笑う。


「バレたら怒られそう」


「絶対怒られるよ」


即答だった。


だが、それでも行かなければならない。


京慈には確かめたいことがあった。


――――――


数時間後。


王国外縁部。


セブンスター財団管轄の特別更生施設。


巨大な白い建物が夜闇に浮かんでいた。


「……でっか」


京慈が呟く。


めいは周囲を確認する。


「警備も多いね」


当然だった。


モードは危険人物。


しかも、紋章研究の第一人者。


何をするかわからない。


京慈が壁際へしゃがむ。


「りすずさんの端末、まだ繋がるか」


「うん」


めいが小型端末を操作する。


事前にりすずから“借りた”。


正確には半ば押し切った。


『バレても知らねーかんな』


と言われたがその言葉通りかなり危ない橋だった。


端末に簡易マップが浮かぶ。


「地下三階の……収容区画の一番奥」


京慈が息を吐く。


「行くぞ」


2人は警備の隙を縫い施設内へ侵入した。


途中。


巡回警備に監視カメラ、電子ロック。


だがめいが意外と器用だった。


「開いた」


「なんでそんな出来るんだよ……」


「九識家で教わった!」


「聞かない方がよさそうだな……」


小声で話しながら2人は奥へ進む。


次第に空気が変わる。


冷たくて重い。


地下三階の最深部。


そこには巨大な隔離区画が存在していた。


幾重ものロックに分厚い防壁。


その中心の一つだけ照明の落ちた部屋がある。


京慈の喉が鳴る。


「あそこか……」


めいが小さく頷く。


京慈は扉へ近づき中を見る。


そして、固まった。


「……え?」


そこにいたのはモードだった。


だが、違う別人のようだった。


白髪に痩せた身体、皺だらけの皮膚で曲がった背中、呼吸も浅い。


まるで、本当に百年以上生きた老人。


「な……」


京慈が言葉を失う。


数日前に芳骨島で見た姿とはあまりにも違う。


あの異常な生命力と狂気。


その面影がほとんど消えていた。


モードは椅子に座ったままゆっくり顔を上げる。


濁った目をしていた


だが京慈を見ると小さく笑った。


「……よう」


「来ると思ってたぜ」


京慈はただ驚愕することしかできなかった。

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