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シグナリア  作者: もへもへーぬ
第1部ー紋章の継承者ー
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第46章ー残された火種ー

ヘリコプターのローター音が夜空へ響いていた。


芳骨島を離れ機体は九識家へ向かっている。


機内は静かだった。


誰もが疲弊していた。


りゅーいちは壁にもたれ目を閉じている。


ぽたは眠りかけており、そらはぼーっと天井を見ていた。


かぁりだけは何かをメモしている。


「何書いてるんだ?」


あきとが聞く。


「紋章停止薬の改良案」


「お前ほんと怖ぇな……」


そのやり取りに少しだけ笑いが起きた。


それだけで空気が軽くなる。


窓際ではめいが静かに外を見ていた。


その隣にはカナム。


珍しく目を閉じている。


めいが小さく全員に聞いた。


「…もしかして、カナムさん…寝てる?」


「いや、起きてるが?」


普通に返ってきた。


「寝ろよ…兄貴が一番疲れてるだろ…」


りゅーいちが呆れたように言う。


カナムは少しだけ笑った。


「そういう訳にもいかないんでな」


その光景を見ながら京慈は小さく息を吐く。


戦いは終わった。


だが、終わっていない。


そんな感覚だけが胸に残っていた。


――――――


数日後。


九識家の大広間にアヤが訪れていた。


机には資料が並ぶ。


全員の表情は真剣だった。


「モードの取り調べ結果が出た」


空気が変わる。


アヤは淡々と話し始める。


「まず、紋章適合者はまだ存在してる」


京慈の眉が動く。


「ただし、正確な人数は不明」


「居場所も把握できてない」


アヤが資料を机へ置く。


「芳骨島にいた適合者以外の人間はほとんど無関係」


「監禁されてた被害者だった。治療目的だったっぽいね。」


「今は財団で保護してるからそこは安心して。」


兄妹たちが静かに聞いている。


アヤは続けた。


「これが本題かな、モードの研究データから見ても、適合実験は各地で行われていた可能性が高い」


空気が重くなる。


「つまり、これから先も紋章適合者は現れる」


誰も口を開かない。


その中で、カナムが静かに言う。


「…我々の目的は変わらない」


全員が視線を向ける。


「社会を裏から守り続ける」


「紋章適合者が危険なら排除する。」


短い。


だが、それが現実だった。


アヤも頷く。


「財団と九識家の協力関係は継続。引き続き共同で動く」


その言葉で会議は終わった。


兄妹たちが散っていく。


だが、京慈だけは残った。


視線は机に置かれた資料へ向いている。


モード。


その名前。


そして。


最後に言っていた言葉。


――お前の親は。


京慈の拳が僅かに握られる。


その時。


「……気になるの?」


声がして振り返る。


そこにはめいが立っていた。


京慈は少し目を逸らす。


「……別に」


「嘘」


即答だった。


京慈が苦笑する。


「お前、最近遠慮なくなったよな」


「京慈相手ならもとからないけどね」


めいが隣へ座る。


少し沈黙。


そして。


京慈がぽつりと呟いた。


「モードが言ってたんだ」


「俺の親について」


めいは黙って聞く。


「カナムさんは否定してた」


「でも、一部だけ、反応がおかしかった」


京慈は思い出していた。


あの瞬間。


カナムの表情。


完全否定ではなかった。


「だから聞きたい」


「俺は何なんだって」


めいは少しだけ考え静かに言う。


「……怖い?」


京慈は笑った。


自嘲気味に。


「めちゃくちゃ怖ぇよ」


本音だった。


もし自分の出生がモードや紋章適合者に関わっていたら。


もし九識家に拾われた理由が別にあったのだとしたら。


考えるほど胸が重くなる。


その時。


めいが静かに言った。


「でも」


「一人で行くつもりじゃないよね?」


京慈が目を向ける。


めいは真っ直ぐ見ていた。


「私も行くよ」


「聞きに行くなら、一緒に行く」


京慈は少し驚き。


そして小さく笑った。


「……ありがとな」


九識家の夜は静かだった。


だが火種はまだ消えていない。


物語は次の戦いへ進み始めていた。

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