第45章ー閃光ー
核が砕け崩壊した零玖号の鎧。
だがモードは止まらなかった。
「……は、はは……」
黒い鎧が脈打つ。
壊れたはずの核へ無理矢理紋章が集まり始める。
「まだ……終われねぇんだよ……!!」
暴走した紋章を融合し適合させようとする。
本来あり得ない速度で周囲の紋章反応を引き寄せていく。
だがもう制御されていない。
零玖号の鎧が歪に変形していく。
腕の形が崩れ、顔が裂ける。
背中から意味不明な紋章が浮かび上がる。
「ガァァァァァァァ!!」
モード自身も苦しみ始めていた。
身体が耐えきれていない。
融合しすぎた影響か、適応が暴走している。
京慈が息を呑む。
「なんだよ……これ……」
兄妹たちも動けない。
限界だった。
りゅーいちは壁に寄りかかり、あきとは息を切らし、ぽたは座り込んでいる。
アスノの弓を持つ手も震えていた。
戦えるのは恐らくカナムだけ。
そのカナムでさえ僅かに呼吸が乱れていた。
モードが壊れたように笑う。
「まだ……」
「まだ俺は――」
その瞬間。
一閃。
何かが光った。
誰も見えなかった。
次の瞬間。
パキッ――
零玖号の鎧に無数の亀裂が走る。
「……え?」
京慈が目を見開く。
直後。
ドゴォォォォォォォン!!!!
鎧が完全崩壊した。
粉々に砕け散る。
モードの身体が吹き飛び床へ転がった。
静寂。
全員が理解できない。
そして瓦礫の向こうに1人の女が立っていた。
アヤ。
長い髪を払いながら静かに言う。
「その趣味の悪い鎧は完全に砕いた」
京慈が固まる。
「……今、何したんですか?」
その場にいた全員が呆然としていた。
「見えなかったんだけど」
アヤは平然としている。
「超高速で鎧の急所を叩き壊しただけ」
「だけって……」
あきとが引いていた。
りすずの通信が入る。
『……人間技?』
珍しく本気で困惑していた。
アヤは肩を竦める。
「脆くなってたから簡単だったよ」
カナムだけが少し笑っていた。
そして。
京慈へ小さく耳打ちする。
「だから怖いって言ったろ」
どこか嬉しそうだった。
京慈は意味がわからずただ困惑する。
その間にも。
アヤは普通に話していた。
だが一瞬。
カナムへ視線を送る。
アイコンタクト。
カナムが理解する。
次の瞬間。
糸が静かに伸び、モードの四肢を拘束する。
完全拘束。
モードは既に気絶しかけていた。
アヤはそれを確認すると兄妹たちへ向き直る。
「お疲れ様」
「監禁されてた人たちと、紋章適合者、それからモードの部下は財団で引き取るから残りの仕事は任せて」
「君たちは休んでね」
優しい声。
だが、その直後カナムを見る。
「……わかった?」
少しだけ圧が強い。
カナムは小さくため息を吐いた。
「はいはい」
珍しく肩の力が抜けている。
そして。
「お前たち帰るぞ」
その一言で全員が動き始めた。
長かった戦いがようやく終わる。
最深部を後にし兄妹たちは地上へ戻る。
その先にはりすずとめいの待つヘリコプターがあった。




