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シグナリア  作者: もへもへーぬ
第1部ー紋章の継承者ー
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第39章ー最深部ー

芳骨島地下施設最深部。


張り詰めた空気の中。


モードだけが妙に楽しそうに笑っていた。


「いやぁ」


「九識兄妹勢揃いじゃねぇか」


視線が九識兄妹を順番に舐めるように動く。


そして、カナムで止まった。


「相変わらず怖ぇ顔してんな12代目」


カナムは無言。


モードは肩を竦める。


「そんな睨むなって」


「今日は昔話でもしようぜ?」


京慈が一歩前へ出る。


「ふざけるな」


モードは笑った。


「ふざけちゃいねぇよ」


「お前が一番知りたい話だ」


その瞬間。


空気が少しだけ変わる。


モードは京慈を見る。


「お前の親は――」


「黙れ」


カナムの声。


低く鋭い。


だがモードは止まらない。


「九識と関係がある」


京慈の目が見開かれる。


兄妹たちの空気も変わった。


モードはさらに続ける。


「しかも浅くねぇ、かなり深い。下手すりゃ――」


「その辺にしておいてもらおうか」


カナムが割って入る。


静かな声。


だが、圧が異常だった。


モードは笑う。


「お、話の否定しねぇのか?」


カナムは目を細める。


「お前の話には事実も混ざっている」


「だが、大半は憶測にすぎない」


京慈が振り返る。


「カナムさん……」


カナムは少しだけ黙る。


そして。


「…私も確証は得ていない」


そう答えた。


モードが吹き出す。


「あっはは!!」


「やっぱ調べてたか!!」


「お前頭もいいし、勘もいいもんなぁ!!」


その瞬間。


兄妹たちの視線がカナムへ集まる。


だがカナムは答えない。


代わりにモードへ向け糸を伸ばした。


「そろそろおしゃべりは終わりにしようか」


ヒュン――!!


目にも留まらぬ速度。


一瞬でモードの全身へ糸が巻き付く。


拘束。


完全捕縛。


だがモードは笑っていた。


「そうそう」


「そう来ると思ってた」


カナムの眉が僅かに動く。


「……何?」


モードは拘束されたままゆっくり顔を上げる。


「終わりはお前たちさ」


その瞬間。


ゴゴゴゴゴ……


地響き。


床が揺れ、培養槽が震える。


京慈が周囲を見る。


「なんだ……?」


りすずの声が通信へ飛び込んだ。


『みんな!!』


『後ろ!!』


全員が振り返る。


そして、息を呑んだ。


最深部奥の巨大な壁。


その壁が内側から押し潰されていた。


ドン。


ドン。


ドン。


一歩ごとに揺れる。


そして壁が砕けた。


轟音が鳴り響き、瓦礫や粉塵が舞う。


その奥から現れた存在に誰も言葉を失った。


巨大。


三メートルを超える肉体に異常な筋肉。


そして、全身に浮かぶ無数の紋章。


しかも一つ一つの紋章が今までの適合者とは比較にならない密度を放っていた。


「……っ」


京慈の喉が鳴る。


本能が叫ぶ。


危険。


今までの敵とは違う。


別格。


モードが笑う。


「これが俺の最高傑作」


「“複数紋章適合体零玖号”」


「他の複数適合体たちは失敗した」


「だがこいつは辿り着いた」


化け物が目を開く。


その瞬間、空気が重くなる。


圧力と殺気、威圧感。


兄妹たちですら自然と構えを取っていた。


モードが笑う。


「さぁ零玖号」


「化け物退治の時間だ」


次の瞬間。


零号が咆哮を上げた。


ドゴォォォォォッ!!!!


空間そのものが揺れた。


カナムが即座に命じる。


「散開!!」


九識兄妹が一斉に動き出す。


芳骨島最深部。


決戦が始まった。

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