第38章ー鬼ごっこー
「右通路に入る」
『そのまま直進で問題ない』
「了解!」
京慈は迷うことなく走る。
既に迷宮内部へ入ってから十分以上が経過していた。
だがまだモードは捕まらない。
通路は変わり続ける。
壁が動き、床が回転する。
普通ならとっくに迷っていた。
だが。
『三秒後、左壁移動』
『止まらないで走り抜けて』
りすずの解析が全てを上回っていた。
『前方熱源探知機あり』
『連携してる自動砲台は四機』
『右上に死角あり、そこに身を隠せ』
京慈が跳ぶ。
直後。
ダダダダダッ!!
機銃掃射。
弾丸が背後を削る。
「っぶねぇ!!」
『そのまま前転して』
『床が崩落する』
京慈は反射的に転がる。
次の瞬間。
後方の床が崩壊した。
床の見えない奈落。
京慈が汗を流す。
「りすずさんの解析なかったら死んでたぞ……」
通信越し。
少し間。
『…だろうな』
だがどこか嬉しそうだった。
京慈は再び走る。
『あと少しだ』
『最深部反応確認』
『生命反応、一』
モード。
京慈の目が鋭くなる。
「捕まえる」
『うん』
りすずの返答も短い。
そして、最後の扉が見えた。
巨大で重厚。
研究施設というより王族の墓所のような扉。
『そこだ』
『気をつけてくれ』
京慈が頷く。
深呼吸。
そして扉を蹴破った。
ドゴォッ!!
重い音が響く。
中は異様に広かった。
巨大空間は円形で無数の培養槽や機械が置かれ、資料が散乱していた。
そして中央で椅子に座る男。
モード。
「……よう」
笑っていた。
まるで来るのを待っていたように。
京慈が構える。
「追い詰めたぞ。まもなくみんな来る。お前の計画も終わりだ」
モードは肩を竦める。
「終わりねぇ」
「お前ら九識はいつもそう言う」
京慈の眉が動く。
「……どういう意味だ」
モードは答えない。
代わりに京慈を見る。
観察するように。
そして、ふっと笑った。
「やっぱ似てるな」
京慈の空気が変わる。
「……誰にだ」
モードは立ち上がる。
ゆっくり白衣を揺らしながら。
「お前、自分の親知らねぇんだろ?」
京慈の目が見開かれる。
空気が凍った。
「……なんで、それを」
モードは笑う。
「知ってるさ」
「俺は長ぇ間生きてるからな」
一歩、また一歩どんどん京慈へ近づく。
「九識の因縁や闇の部分」
「そして、カナムが何を隠しているか」
「全部じゃねぇが、ある程度はな」
京慈が息を呑む。
カナムが…隠していること。
その言葉に嫌な予感が走る。
「……何を知ってる」
モードはまるで楽しむように笑った。
「お前さぁ」
「なんで九識に拾われたと思う?」
「偶然、九識家相伝の紋章の一種である硬化の紋章を発現したから?」
「それとも、紋章が発現したのに孤児だったから同情されたからか?」
「そんな綺麗な話じゃ――」
その瞬間。
ドゴォッ!!
扉が吹き飛んだ。
「京慈ィ!!」
りゅーいちの声。
続けて、そら、あきと、らき、ぽた、かぁり、アスノ。
そして最後にカナム。
九識兄妹が一斉に最深部へ現れる。
モードが目を細めた。
「……集合するのは俺の想定よりも早ぇな」
京慈が後ろを見る。
みんな傷だらけだった。
だが立っている。
カナムは静かに言う。
「続きは私も聞かせてもらおう」
その瞬間。
最深部の空気が、張り詰めた。




