表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シグナリア  作者: もへもへーぬ
第1部ー紋章の継承者ー
PR
37/54

第36章ー闇ー

京慈の足音が遠ざかっていく。


地下研究区画資料室跡。


そこにはカナムと異形の化け物だけが残されていた。


「――――ッ!!」


化け物が咆哮を上げる。


拘束していた糸を力任せに引き千切ろうとしていた。


ギギギギッ――!!


床が砕け、壁が軋む。


尋常ではない膂力。


だがカナムは微動だにしない。


右手を僅かに動かす。


次の瞬間。


「縫牢」


空間へ広がった糸が一斉に化け物へ突き刺さった。


ガギィン!!


金属音。


糸は肉を貫通し床と天井へ固定される。


まるで巨大な杭打ちだった。


「ガァァァァッ!!」


化け物が暴れる。


筋肉が膨張する。


だが切れない。


カナムは静かに見下ろす。


「無駄だ」


化け物の身体中の紋章が発光した。


赤。


青。


紫。


次の瞬間。


轟炎が立ち上り、爆炎がカナムへ一直線に放たれる。


だがカナムは避けない。


左手を軽く払う。


「織壁」


無数の糸が空中で編み込まれていく。


薄いがほぼ見えない。


爆炎はその瞬間、真っ二つに裂けた。


轟音が響き、熱風と爆発が起き、地下空間が揺れる。


それでも。


カナムは一歩も動いていなかった。


「攻撃が粗いな…紋章不適合か」


次の瞬間。


化け物が床を砕きながら突撃。


拳を振り下ろす。


ドゴォッ!!


だが当たらない。


カナムは最小限の動きで回避する。


同時に右手が僅かに動いた。


「断界」


ズバァッ!!


糸が鋭く走る。


化け物の右腕が肩口から切断された。


切断された面から黒い液体が噴き出す。


「ッ――――!!」


だが次の瞬間。


肉が蠢き、骨が伸びる。


切断された部分は徐々に再生していき、元に戻る。


カナムの目が細くなる。


「……再生能力か」


化け物が再び加速した。


今度は紋章の力を混ぜ始める。


炎。


衝撃波。


爆発。


乱雑な連撃。


地下施設が崩れ始める。


だがカナムはまるで舞うように躱していた。


空間中に張られた糸。


その全てが敵の動きを捉えている。


「左」


拳を躱す。


「遅い」


蹴りを流す。


「雑だな。力だけでは私どころか、兄妹たちでも躱せるぞ」


衝撃波を切断した。


完全に格が違った。


カナムは静かに前へ出る。


「終わらせようか」


右手を軽く握る。


「千穿」


空間中の糸が一斉に化け物へ襲いかかった。


数百、数千から成る、鋭利に編み上げた糸が豪雨のように降り注ぐ。


ズガガガガガッ!!


化け物の全身が糸で貫かれていく。


肉が裂け、骨が砕ける。


壁へ縫い付けられる。


「ガァァァァァァァッ!!!」


化け物は絶叫する。


その時、異変が起きた。


ビクンッ!!


化け物の身体が痙攣する。


カナムが僅かに眉を動かした。


次の瞬間。


化け物の紋章が一斉に暴走し始める。


赤。


青。


緑。


紫。


黄色。


色が混ざる。


肉体が膨張する。


骨が飛び出る。


皮膚が裂ける。


「…不適合による暴走…それも複数紋章で同時発現か」


カナムが呟く。


複数紋章による負荷は想像を絶する。


化け物の身体は耐えきれなかった。


肉体が崩壊していく。


そして暴走。


化け物の周囲へ黒いエネルギーが漏れ始める。


床が溶け、空間が歪む。


危険。


このままでは地下施設、最悪の場合島全土が吹き飛ぶ。


カナムは小さく息を吐いた。


「本来なら使うつもりはなかったんだがな」


その瞬間、カナムの左目が光る。


漆黒の紋章が現れる。


空気が変わる。


圧力、温度、音ですら次第に変わっていく。


全てが沈んだ。


暴走している化け物ですら、動きを止める。


カナムの左目に浮かぶ漆黒の紋章。


「――獄王の紋章」


低い声。


静かな宣言。


「獄王の紋章は闇を統べる力」


ドロリ――


闇が溢れる。


液体のような闇。


床から広がる漆黒。


化け物が咆哮を上げる。


逃げようとする。


だが、遅い。


闇が化け物の身体をどんどん呑み込んでいく。


ズブズブと底なし沼のように。


「暗闇の中で眠っていろ」


最後に闇が閉じた。


静寂。


そこにはもう化け物の姿はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ