第34章ー炎焔ー
先ほどまで平和だった平原は爆炎と黒煙に包まれ、焼け焦げた大地と化した。
バルクは口元の血を拭いながら、りゅーいちを睨んでいた。
(さっきまでとは違う…空気が変わった。)
バルクの本能が警鐘を鳴らす。
危険。
バルクは反射的に右手を振り上げた。
「――吹き飛べッ!!」
ドォォォォン!!!
りゅーいちの周囲が一斉爆破される。
地面や岩が吹き飛び、瓦礫がりゅーいちに襲い掛かる。
全方向同時爆破。
りゅーいちに逃げ場はない。
爆風で大量の土砂が舞う。
だが、その直後。
キンッ――
金属音が鳴る。
バルクが目を見開くと。
爆破で飛び散った瓦礫、土砂、岩片などそれらが次々と斬り落とされていた。
「……は?」
爆炎の中。
斬撃だけが走る。
りゅーいちが見えない。
土煙が視界を埋める。
バルクは舌打ちした。
「チッ……!」
ならば全部吹き飛ばすまで。
「逃がすかよ!!」
ドォン!!
ドォォン!!
ドゴォォン!!
連続爆破により、地面が抉れる。
爆炎が平原をさらに飲み込む。
土煙と熱風により視界はほぼゼロになる。
それでもバルクは止めない。
「死ね!!」
爆破。
爆破。
爆破。
十数発。
連鎖させていく。
周囲一帯が完全に焼け野原になる。
爆破が終わり、静寂が訪れる。
バルクが肩で息をする。
「……ハァ……」
気配がない。
りゅーいちは爆発もしくは焼けた。
間違いなくヤツは死んだ。
そう確信した。
その瞬間背後から肺を焼くような熱気が感じる。
「――っ!?」
バルクが振り向く。
そこにりゅーいちが立っていた。
しかもりゅーいちは無傷で刀を肩へ担ぎ、静かに立っていた。
バルクの目が見開かれる。
「なんで……」
声が震える。
「どうやってあの爆破を――」
りゅーいちは静かに言った。
「簡単な答えだ」
その瞬間。
りゅーいちの両目に赤色の紋章が浮かぶ。
熱と圧で空気が震える。
「炎焔の紋章」
「俺の紋章は火と熱を司る能力」
りゅーいちの周囲に赤熱した熱気が渦巻く。
地面が焦げ、空気が揺らぐ。
「お前の爆破の熱は…」
刀を構える。
「俺の熱に負けた」
バルクの顔が歪む。
全て理解した。
爆炎の中でりゅーいちは自分より高温を纏い熱を支配していた。
だから爆風も、熱波も致命傷にならなかった。
バルクが歯を食いしばる。
「っ……まだ!!」
最後の力を振り絞る。
爆破を連鎖させる。
連続起爆。
周囲全部を巻き込む。
「全部吹き飛べぇぇぇ!!」
ドォォォォォン!!!
だが、りゅーいちは止まらない。
爆炎の中を歩く。
避け、斬る。
熱を裂くように。
一直線。
バルクが目を見開く。
「なんで……!」
りゅーいちが踏み込む。
熱気が刀へ収束する。
赤熱により空気が悲鳴を上げる。
「奥義――」
一閃。
「炎獄・焔断」
赤い斬撃が走った。
爆炎ごと、一直線で世界を焼き切るように。
静寂。
次の瞬間。
ドサッ。
バルクが膝をついた。
武器も。
力も。
完全に尽きていた。
りゅーいちは静かに刀を振る。
熱が消える。
バルクは苦笑した。
「……反則だろ、それ」
りゅーいちは短く返す。
「お前も十分派手だったさ」




