第32章ーズルして勝つー
病棟フロア。
そらとらきは吹き飛ばされ、床を滑っていた。
ペパーとスペア。
どうしようもないくらい強い。
2人の連携は完成されていた。
見せた技は通じない。
感覚はズレる。
しかも、スペアの複製によって、こちらの戦い方まで読まれていく。
最悪の組み合わせ。
らきが小さく舌打ちした。
(このままじゃ負ける)
その時、らきがそらへ近づく。
そして小さく耳打ちした。
そらが目を丸くする。
「……は?」
怪訝そうな顔。
「いや、それ……」
最後まで言う前。
ペパーが踏み込む。
「まだ会話できる余裕がありましたか」
悔しそうな声。
”余裕がある”そう判断された。
次の瞬間、斬撃。
スペアも同時に突撃。
「考える時間与えるほど甘くないよー」
そらとらきは咄嗟に後退。
そして、離れた位置へ着地する。
その瞬間2人同時に踏み込んだ。
一直線に向かい真正面で向き合う。
スペアが笑う。
「やっと来たな」
ペパーも迎撃姿勢を取る。
「愚直ですね」
激突――した。
ペパーがそらを床へ叩きつける。
スペアもらきを蹴り飛ばす。
「終わ――」
違和感を感じる。
感触が軽い。
次の瞬間、そらとらきの身体が機械へ変わった。
「……は?」
ペパーが初めて困惑する。
スペアも目を細めた。
「なんだこれ」
直後、少し離れた場所でそらとらきが立っていた。
「っ!」
ペパーが即座に攻撃。
だが、切り裂かれた二人は再び機械へ変わる。
スペアが舌打ちした。
「またかよ」
周囲を見る。
見つける。
攻撃。
壊す。
機械。
また別方向。
繰り返し。
何度も何度も。
その度に敵の体力だけが削られていく。
ペパーが眉を寄せる。
「認識阻害……?」
スペアも息を吐く。
「いや違うな……」
その瞬間、ガシャン!!
2人の身体へ金属ベルトが巻き付いた。
「っ!?」
腕、脚、胴すべてを拘束し完全固定した。
スペアが振り向く。
そこに、らきが立っていた。
両目には緑色の紋章が浮かんでいる。
「これがあたしの偽装の紋章。」
「対象を別のものへ偽装する能力」
らきが笑う。
「人でも、物でも、機械でも」
周囲には大量の壊れた機械。
「あれ全部、あたしたちに見せてただけ」
ペパーの顔が歪む。
「……っ」
らきは肩をすくめた。
「真正面から戦ってあたしたちが勝てる見込みはない。」
「だから真正面以外で戦えばいいかなって」
スペアが苦笑する。
「汚ねぇなぁ」
すると、らきが首を傾げた。
「汚い?」
笑う。
「真正面から戦わなきゃいけないなんてルールはないよ?」
スペアが言い返す。
「じゃあこの機械はどうした」
「あー」
らきが後ろを見る。
その瞬間、拘束具の先にある機械群の影からそらが現れた。
両目には水色の紋章が浮かんでいる。
「俺の創造の紋章の力だよ。」
「物質変換、機械生成、空間制御を行う能力」
そらが笑う。
「壊されたら直してただけ」
周囲の機械が動く。
修復、再構築の無限ループ。
「偽装と創造」
そらが肩を回す。
「実は最高に相性いいんだよね、俺たち」
ペパーが歯を食いしばる。
「最初から……」
「うん」
らきが頷く。
「まともに戦う気はなかった」
スペアが笑った。
「性格悪ぃ〜……」
そらが拘束具へ手を当てる。
「とりあえず、放っておくと危険そうだから少し眠ってもらうよ」
バチバチッ!!
高電圧が金属ベルトに流れ、ペパーとスペアは感電する。
「がっ……!」
「っ……!」
2人の身体が震える。
そのまま意識が落ちた。
そらが大きく息を吐く。
「……疲れた」
らきも座り込む。
「普通にやったら無理だったねぇ」
そして2人は顔を見合わせ、小さく笑った。
勝利だった。




